ニュースリリース

デロイト トーマツ、世界20か国の障がい等の当事者を対象とする調査結果の日本版を発表

日本では職場に配慮を要請したことがある人が23%。うち、75%が要請を拒否された経験がある。トップコミットメント、風土醸成に加えアクセシビリティの向上が、選ばれる職場の重要指標

2025年3月27日

デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一)は、デロイトが日本を含む世界20か国*1の様々な組織に所属する1万人の障がい・慢性疾患・神経多様性のある方(以下、「当事者」)を対象として実施した世界調査のレポート「Disability Inclusion @ Work 2024: A Global Outlook」の日本版を発表します。

今回が初めての調査実施であり、2024年1月~4月に実施されました。本調査を通じて、職場における障がい等の開示や配慮の要請状況と、職場での経験に対する理解を深め、企業が意味ある持続的な変化に役立てることを目的としています。

日本版レポートでは、調査対象のうち日本で働く500人の回答から示された傾向やグローバル全体の結果との比較をまとめています。日本では企業に対して、障がい者の法定雇用率*2に加え、質的な面でも能力の有効な発揮のための合理的配慮に関する措置が義務化されています。しかし、調査結果からは、職場に配慮を要請したことがある当事者が23%にとどまるうえ、要請を一つでも拒否された当事者は75%にのぼること、また、社内行事などのアクセシビリティの低さに課題があることなどが明らかになりました。

詳細につきましては下記リンク先よりレポートをご確認ください。

日本版レポートはこちら、グローバルレポートはこちら

*1:調査対象国:アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、インド、日本、ケニア、マレーシア、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、アラブ首長国連邦 (UAE)、英国、米国
(回答者には、デロイトで勤務しているメンバーは含まれていません。)

*2:民間企業の障がい者の法定雇用率は、2024年4月に2.5%に、2026年7月には2.7%に引き上げられ、対象事業主の範囲も拡大予定

 

主な調査結果

職場に配慮を要請したことがある当事者は23%にとどまり、うち75%が要請した配慮を拒否された経験を持つ

全回答者の88%が、職場において自身の障がい等を開示していますが、現在の職場で配慮を要請したことがある人は、全回答者の25%以下にとどまっています(日本:23%)。配慮を要請しない理由について日本では、「配慮不要と思うため」(40%)という回答に続き、「扱いにくい従業員だと思われることを心配したため」、「必要な配慮をしてくれると思えないため」(22%)という回答が同率で多く、配慮を要請した結果、不利益を被ることや要請を受け入れてもらえないことを懸念している状況がうかがえます。

職場に配慮を要請した当事者のうち、少なくとも1つの配慮について拒否された経験がある回答者は、日本では75%にのぼりました(グローバル:74%)(図1)。職場から伝えられた理由では、「実現が非常に難しいと判断されたため」や「実現するならば他の従業員にも同じ配慮をする必要があるため」の割合が、日本ではグローバルよりも高いことが明らかになりました。

図1:現在の職場で配慮を要請したことがある割合/少なくとも1つの配慮について拒否された割合

 

日本は在宅勤務の実施が認められる傾向にあるが、職場や仕事関連の行事におけるアクセシビリティが低い

当事者が職場に要請したことがある配慮として最も多いのは「必要時の在宅勤務」でした(グローバル:67%、日本:68%)。常時または部分的に在宅勤務の実施を認められていると回答した当事者の割合は、日本がグローバルを上回りました(グローバル:61%、日本:69%)(図2)。一方で、機会の喪失やキャリアへの影響を考慮して在宅勤務ができるのに選択をしない当事者がいることも示唆され(グローバル:6%)、在宅勤務とオフィス勤務の従業員が公平にキャリアの機会を得られるようなポリシーの策定も求められます。

また、利用できるトイレ設備の不足や議事進行に休憩が設けられていないこと、介助者やサービスアニマルが参加できないなどアクセシビリティが低いために、職場内外の行事や交流の場に参加できていない当事者の割合について、日本は全体的にグローバルを上回りました(図3)。

在宅勤務制度がある程度整っている一方で、アクセシビリティが低いために、行事などのビジネス機会への参加が制限されている状況が明らかになっています。

図2:在宅勤務が認められている当事者の割合

図3:職場や仕事関連の行事におけるアクセシビリティの状況

 

トップコミットメントや風土醸成に加えアクセシビリティの向上が、選ばれる職場の重要指標

障がい者インクルージョンを大きく前進させる上で職場が実施できる優先事項として、日本では「職場での物理的なアクセシビリティを向上させる」、「障がい者インクルージョンを取締役会での優先事項にする」という回答が、いずれも22%で最も多い結果となりました(図4)。調査結果全体の分析から、リーダーのコミットメント、スキルや強みに合った役割付与、インクルーシブな文化を含む7つの要素が、当事者が他人に企業を推薦する際の指標になることも示されています。

また、全回答者の26%(日本:25%)が、過去12カ月間に職場でマイクロアグレッション*3を経験しています。物理的なアクセシビリティの向上とともに、そのようなインクルーシブでない行動も課題であり、障がい者インクルージョンを取締役会レベルの戦略的優先事項として経営アジェンダに加え、インクルーシブな仕組みや風土醸成を推進していくことの重要性が明らかになっています。

*3:差別とまではいかないにしても、無意識なバイアスなどによって、無自覚に相手を傷つける日常的な言動

図4:障がい者インクルージョンを大きく前進させる上で、勤務先の職場が実施できる優先事項

本調査結果について

本調査では、対応への期待感の低さや不利益への懸念が職場への配慮要請をとどまらせる要因となっていること、職場に配慮を要請した当事者の多くが1つ以上の配慮について拒否された経験があること、アクセシビリティの低さや当事者に対するインクルーシブでない行動に課題があることなどが明らかになりました。

在宅勤務が認められている一方で、職場行事における設備、休憩や介助者・サービスアニマルの参加のしづらさなどの物理的なアクセシビリティの低さが示唆され、アクセシビリティの向上や、インクルーシブでない行動の改善が求められています。ソフトとハードの両面で個々の特性に応じた必要で公平な配慮を行い、行事参加などの機会を平等に提供していくことで、職場の対応への期待感や信頼感が高まり、当事者が必要な配慮を安心して要請できる状態になることが重要です。

日本では、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、障がいのある方の雇用(法定雇用率)に加え、能力の有効な発揮を目的とした合理的配慮に関する措置が義務化されています。しかしながら法定雇用率達成企業は46.0%(令和6年厚生労働省調べ、前年比4.1ポイント低下)と均等な雇用の機会の確保に向けても課題がある状況です。そのような中、2024年4月には障害者差別解消法の改正に伴い事業主に、従業員に対してだけではなく、サービスの提供においても合理的配慮の提供が義務化されるなど、インクルージョンに関する変革が求められています。

均等な雇用機会の提供とインクルーシブな職場の実現に向けて、組織の経営アジェンダとして、戦略的に障がい者インクルージョンに取り組んでいくことが期待されます。

 

デロイト トーマツ グループのDEIに関する取り組み

デロイト トーマツ グループでは、Diversity, Equity & Inclusion(DEI)を重要経営戦略の一つとして位置付け、激変する市場環境を柔軟に乗り切り、クライアントに価値を提供し続けるための重要なカギであると捉えています。また、私たちは、【ちがいに「気づく」、つよみを「築く」 ~一人ひとりが活躍する会社から、一人ひとりが活躍する社会を~】というDEIビジョンを掲げながら、社会全体のインクルージョン強化に向けても様々な取り組みを行っています。
デロイト トーマツ グループのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

 

デロイト トーマツ グループのDiverse Abilities(障がい)に関する取り組み

デロイト トーマツ グループでは、障がい(Disability)ではなく、能力や思考の多様性(Diverse Ability)にフォーカスしており、様々な業務において、それぞれがプロフェッショナルとして活躍しています。
デロイト トーマツ グループのDiverse Abilities

<報道機関の方からのお問い合わせ先>

デロイト トーマツ グループ 広報担当 岡根谷、菊池
Tel: 03-6213-3210 Email: press-release@tohmatsu.co.jp

デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ グループ合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約30都市に約2万人の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト、(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

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