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第40回 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)での審議の概要

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2024年10月3日に第40回サステナビリティ基準委員会を開催し、温室効果ガス排出に関する開示について審議を行いました。9月から本格的に公開草案へのコメントの再審議が始まっており、再審議の内容について今後速報ベースで概要をお伝えしていきます。

2024年10月7日

2024年10月3日に第40回サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という)が開催され、以下の7つの論点について審議されました。

【第40回SSBJで審議された事項】

(1) スコープ1及びスコープ2温室効果ガス排出に関する開示(審議事項 A2-1)

(2) 温室効果ガスの種類別の開示(審議事項A2-2)

(3) 排出係数に対して寄せられたコメント(審議事項A2-3)

(4) スコープ3温室効果ガス排出に関する開示(審議事項A2-4)

(5) スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出の絶対総量の合計値の開示(審議事項A2-5)

(6) 表示単位及び端数処理(審議事項A1-2)

(7) 内部炭素価格(審議事項A2-6)

なお、温室効果ガス排出の測定に当たり、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)(GHGプロトコル(2004年))とは異なる方法を選択した場合の取扱い(※1)及び測定アプローチに関する論点については、別途検討することが予定されています。

(※1)異なる方法として、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(温対法)により測定した温室効果ガス排出量を報告することを選択した場合の取扱いを含みます。
 

上記事項は、2024年3月29日にSSBJより公表されたサステナビリティ開示基準(以下「SSBJ基準」という)の公開草案(※2)に寄せられたコメント(コメント期限2024年7月31日)について、SSBJ事務局が分析の上、コメントへの対応につき個別に提案を行ったものです。

(※2)2024年3月29日に公表された3つの公開草案

  • サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」(以下「適用基準案」という)
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般基準(案)」(以下「一般基準案」という)
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」(以下「気候基準案」という)

(1) スコープ1及びスコープ2温室効果ガス排出に関する開示(審議事項 A2-1)

本公開草案に寄せられたコメントのうち、スコープ1及びスコープ2温室効果ガス排出に関する開示に関する事項(気候基準案第49項、56項、57項、BC127 項~BC132項)について、事務局より以下の提案がされました。

【事務局提案】

① スコープ1及びスコープ2温室効果ガス排出の絶対総量の開示をそれぞれ求める。(本公開草案から変更なし)

② スコープ2温室効果ガス排出の開示について、次の定めを置く。

  • スコープ2温室効果ガス排出については、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示しなければならない。(本公開草案から変更なし)
  • スコープ2温室効果ガス排出について、利用者の理解のために必要な契約証書を有している場合、上記に加え、少なくとも次のいずれかの事項を開示しなければならない。(本公開草案から変更あり 下線部を追加)
    ア. 当該契約証書に関する情報
    イ. マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量。この場合においても、温室効果ガス排出の測定方法に関する開示を行わなければならない。

③ 企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、「契約証書」に関する情報について、企業において開示内容を判断することになることを結論の背景において明らかにする。(本公開草案から変更あり)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

なお、②の気候基準案第57項の修正(②の●の2つ目)については、複数の委員から事務局提案の文章では、基準の趣旨が正しく伝わらないのではないかとの懸念等が示されため、記載を再検討することになりました。

また、温室効果ガス排出の測定方法に関する開示については、今後国際的な開示実務の進展を踏まえて、補足文書又は解説記事において当該測定方法の開示において開示する情報の例を提供することが提案されました。

(2) 温室効果ガスの種類別の開示(審議事項A2-2)

【事務局提案】

本公開草案に寄せられたコメントのうち、温室効果ガスの種類別の開示について、特段の定めを置かないことが事務局より提案されました。(本公開草案から変更なし) 

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

(3) 排出係数に対して寄せられたコメント(審議事項A2-3)

本公開草案に寄せられたコメントのうち、温室効果ガス排出を測定するにあたり、見積りの方法による場合(気候基準案第69項)について、事務局より以下の提案がされました。

【事務局提案】

① 温室効果ガス排出の測定に用いる排出係数に関して、次の定めを置く。

  • 温室効果ガス排出を測定するにあたり、見積りの方法による場合、温室効果ガス排出を測定する基礎として、企業の活動を最も表現する活動量と、当該活動量に対応する排出係数を使用しなければならない。(本公開草案から変更なし)

② 当委員会が公表するSSBJ基準において、「マーケット基準の排出係数を用いることが難しい場合は、ロケーション基準の排出係数を用いることができる」との定めは置かない。(本公開草案から変更なし)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

また、上記②の代わりに、補足文書又は解説記事において、排出係数を用いるうえで参考となる情報を提供することが提案されました。
 

(4) スコープ3温室効果ガス排出に関する開示(審議事項A2-4)

本公開草案に寄せられたコメントのうち、スコープ3温室効果ガス排出に関する事項(気候基準第49項、第58項、BC144項)について、事務局より以下の提案がされました。なお、ファイナンスド・エミッションに関しては、別途検討を行うことが予定されています。

【事務局提案】

① スコープ3温室効果ガス排出の絶対総量の開示を求める。(本公開草案から変更なし)

② スコープ3温室効果ガス排出については、「温室効果ガスプロトコルのコーポレート・バリューチェーン(スコープ3)基準(2011年)」以下(「スコープ3基準」という)に記述されている「スコープ3カテゴリー」に従い、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示しなければならないとする。(本公開草案から変更なし)

③ スコープ3温室効果ガス排出の絶対総量の開示について、重要性に関する特段の定めを置かない。(本公開草案から変更なし)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

また、スコープ3温室効果ガス排出に関して寄せられたガイダンスに対する要望については、優先順位等を含め、別途検討することが提案されました。

(5) スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出の絶対総量の合計値の開示(審議事項A2-5)

【事務局提案】

本公開草案に寄せられたコメントのうち、スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出の絶対総量の合計値の開示(気候基準案第49項、BC100項、BC101項)を求めないことが事務局より提案されました。(本公開草案から変更あり)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

(6) 表示単位及び端数処理(審議事項A1-2)

本公開草案に寄せられたコメントのうち、表示単位及び端数処理に関する事項(適用基準案第11項、第12項、気候基準案第50項、BC105項、BC106項)について、事務局より以下の提案がされました。

【事務局提案】

① 表示単位及び端数処理に関する定めについては、次のようにする。

  • サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、当該数値の表示に用いる単位(CO2相当のメートル・トン(mt(e))、グラム(g)ジュール(J)等)を開示しなければならない。(本公開草案から変更なし)
  • SSBJ基準において別段の定めがある場合を除き、サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、情報を理解しやすくするため、重要性がある情報を省略したり、不明瞭にしたりすることにならない限り、千、百万、十億等の単位を用いて表示することができる。この場合、どの単位を用いるか明示しなければならない。(本公開草案から変更なし)
  • 温室効果ガス排出量は、CO2相当のメートル・トン(mt(e))により表示しなければならない。ただし、その開示するスコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出量のそれぞれの絶対総量が大きい場合、千メートル・トン(キロ・トン(kt(e)))又は十億メートル・トン(ギガ・トン(Gt(e)))のいずれかの単位を用いて表示することができる。この選択を行う場合、それぞれの温室効果ガス排出量について、同じ単位を用いて表示しなければならない。(本公開草案から変更なし)

② 温室効果ガス排出の端数処理に関する記述(気候基準案BC105項及びBC106項)については、SSBJ基準の最終化にあたり、本公開草案における当該記述を削除し、補足文書又は解説記事において当該記述を提供する。(本公開草案から変更あり)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持され、本公開草案の最終版に反映される予定です。

(7) 内部炭素価格(審議事項A2-6)

本公開草案に寄せられたコメントのうち内部炭素価格の開示(気候基準案第46項(6)、第84項、BC182項、BC183項)ついて、事務局より以下の提案がされました。

【事務局提案】

① 産業横断的指標等に関連して、内部炭素価格に関する情報を開示しなければならない。

  • 内部炭素価格を意思決定に用いている場合、次の事項に関する情報
    ア. 内部炭素価格の適用方法(例えば、投資判断、移転価格及びシナリオ分析)
    イ. 温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格(温室効果ガス排出のメートル・トン当たりの価格で表す)
  • 内部炭素価格を意思決定に用いていない場合、その旨
    (本公開草案から変更なし)

② 本公開草案において提案していた、同じ目的において複数の内部炭素価格を意思決定に用いている場合及び複数の目的で内部炭素価格を意思決定に用いている場合の取扱いについては、本公開草案から削除する。(本公開草案から変更あり)

【審議結果】

検討の結果、事務局の提案が基本的に支持されたものの、複数の委員から内部炭素価格の開示が求められる状況や商業上の機密事項との関係について意見があり、追加検討が行われる予定です。

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