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航空機メーカーの概要と各社の既存・未来の機材

航空会社の経営において重要な資産である航空機について、民間航空機メーカーや各航空会社が保有する航空機材の現況と今後の展望を考察します。筆者: 有限責任監査法人トーマツ 航空運輸事業ユニット 村山大樹

はじめに

昨今、国内航空業界においては、訪日外国人数の増加や燃油価格の下落を背景として、LCC(Low Cost Carrier)の業績は拡大基調にあり、FSC(Full Service Carrier)の業績も堅調に推移しています。国際的な航空業界に目を向けると、欧州においては、テロ事件や経済不安などの影響により航空需要の成長に鈍化がみられるものの、アジアにおいては経済成長を背景として今後も航空需要の増加が予想されます。このような現況から、航空機材は既存の更新需要に加え、新規参入航空会社や路線数の増加による需要増加が見込まれるため、航空機メーカーのマーケット規模は今後も拡大すると考えられます。
なお、本文中の意見に関わる部分は筆者の私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。

航空機メーカーの市場シェア概況

現在、主要ジェット輸送機(一般に座席数が100席以上のジェット機であり、短距離である地域間航空路線での使用を想定して開発された座席数50~100程度のリージョナルジェット機とは区分される)の市場シェアは、アメリカ大手航空機メーカーであるボーイング社とフランスに本拠地を置くエアバス社が90%超を占めており、激しい市場シェア争いを繰り広げています。

2015年の受注数は、更新機材受注が落ち着いたことや新興国の景気減速などの影響からか、2014年に比して減少したものの、2015年末において2社の受注残数合計は12,000機超存在し、両社は年間生産数の増加に努めています。大手航空機メーカー2社のシェアが高い要因は、航空機市場全体において主要ジェット輸送機の需要が占める割合が大きいため、ボーイング社、エアバス社ともに主要ジェット輸送機の製造に注力していることや、航空会社にとって現行機と異なるメーカーの機体導入はパイロット育成に時間とコストを要すること、リージョナルジェット機と比較して主要ジェット輸送機は高い開発コストを要するという参入障壁があることなどが挙げられます。一方で、リージョナルジェット機の市場シェアは混戦状態となっています。

ボンバルディア社(カナダ)やエンブラエル社(ブラジル)は、1990年代よりリージョナルジェット機を生産しており、市場シェアを競っておりましたが、2015年現在はエンブラエル社が受注において一歩抜け出す状況となっています。また近年では、スホーイ社(ロシア)やCOMAC(中国)などが新規参入しており、日本からも三菱航空機が参入し約半世紀ぶりの国産機開発に挑戦しています。リージョナルジェット機市場への新規参入が相次いだ要因としては、巨大メーカーであるボーイング社やエアバス社がリージョナルジェット開発に注力していないことや、後述の通りリージョナルジェット機の需要が今後伸びていくものと考えられていることが挙げられます。

図1:受注数の推移(主要ジェット輸送機)

出所:一般財団法人日本航空機開発協会Webサイト内航空機関連データ:
「第Ⅱ章 民間航空機材の推移と現状 1.主要ジェット輸送機 (1)主要ジェット輸送機の受注機数の推移」 
http://www.jadc.jp/files/topics/39_ext_01_0.pdf
を基に筆者が作成。

図2:受注残数の推移(主要ジェット輸送機)

出所:一般財団法人日本航空機開発協会Webサイト内航空機関連データ:
「第Ⅱ章 民間航空機材の推移と現状 1.主要ジェット輸送機 (3)主要ジェット輸送機の受注残の推移」
 http://www.jadc.jp/files/topics/39_ext_01_0.pdf
を基に筆者が作成。受注残数=受注確定数のうち未納入のもの

図3:受注数の推移(リージョナルジェット機)

出所:一般財団法人日本航空機開発協会Webサイト内航空機関連データ:
「第Ⅱ章 民間航空機材の推移と現状 2.リージョナルジェット機 (1)リージョナルジェット機の受注機数の推移」
http://www.jadc.jp/files/topics/39_ext_01_0.pdf
を基に筆者が作成。

機材サイズ別の需要分析と今後の展望

現在、世界で運航されている機体は2015年末時点で約21,000機となっています。航空機は整備や各パーツの交換を行えば半永久的に飛行可能といわれていますが、年数経過に伴い整備コストがかさんでいくため、使用頻度や飛行距離により影響を受けるものの、平均20年程度が経済的な運航可能年数といわれています。路線数の増加や既存路線の便数増加により、2035年末には世界で約38,000機の運航が見込まれ、現在運航されている機体の代替や新規路線増加により、約33,000機の新規需要があると予測されています。

2015年及び2035年ともに、主要ジェット輸送機のうち120席~229席の中型機の需要が全体の6割を占めています。これは、航空運送事業においてロードファクター(有償座席利用率)を高めることが利益確保の重要な要素であり、各航空会社の運航路線数が多い主要空港と地方空港間の運送において、中型機が顧客需要量に適した機体サイズのためです。また、リージョナルジェット機は、中型機が着陸できない短い滑走路でも着陸可能なため、着陸料の安い小規模な空港でも運航可能であり、燃費などのコスト面においても中型機より優れ、ターボプロップ機(プロペラ機)と比較しても遜色がなく、搭乗客への騒音が少ないというメリットがあることから、今後小規模な空港間輸送において、リージョナルジェット機の運航が増加していくものと考えられます。

図4:サイズ別ジェット旅客機の運航機数

出所:一般財団法人日本航空機開発協会(JADC)Webサイト内航空機関連データ:
「第Ⅲ章 需要予測」
http://www.jadc.jp/files/topics/85_ext_01_0.pdf
を基に筆者が作成。

現行の機材と未来の機材

現行の航空機市場において需要の高い中型機の中でも、ボーイング社のB737シリーズとエアバス社のA320シリーズは他を圧倒する納入実績を誇り、2015年末においてB737シリーズは累計納入数約8,800機(※1)、A320シリーズは約4,100機(※1)とどちらもボーイング社、エアバス社の累計納入数の4割超を占めるベストセラー機になっています。
(※1 出所:一般財団法人日本航空機開発協会Webサイト内航空機関連データ:「第Ⅱ章 民間航空機材の推移と現状 1.主要ジェット輸送機 (2)主要ジェット輸送機の納入機数の推移」 http://www.jadc.jp/files/topics/39_ext_01_0.pdf )

両シリーズがベストセラーとなった要因としては、座席数が130~229席と主要空港と地方空港間の運送における顧客需要量に適したサイズであることや、機体の公表価格が約100億円(エンジン価格を除く)と大型機の約半額程度であること、また、従前の機体よりも低燃費でありコスト面で優れていることなどが考えられます。また、LCCは同型機種を多数導入することで、機体故障時の代替を容易にし、整備コストを削減する戦略をとっていることも要因として挙げられます。

航空機の開発においては、航空会社が航空機メーカーに予め発注を行うことで莫大な開発費用の回収リスクを低減するとともに、発注した航空会社のニーズに合わせた機体を開発するローンチカスタマーの形態をとるのが一般的です。現在、各航空会社のニーズとしては低燃費化が挙げられ、ボーイング社、エアバス社をはじめとした航空機メーカーは、炭素素材の活用による機体の軽量化や機体形状の改良などにより、そのニーズを実現する新機体開発に取り組んでいます。例えばエアバスにおいては、燃油タンク容量を大きくし空力を改善することにより航続可能距離を伸ばした、A350-900の派生機材であるA350-900ULR(ウルトラ・ロング・レンジ)を、シンガポール航空をローンチカスタマーとして開発しています。また、日本においては約半世紀ぶりの国産機となる三菱リージョナルジェットが、2018年の納入を目指して現在飛行試験を行っており、同機体はギヤード・ターボファンエンジンを採用し、主翼やフラップの形状を改良することにより、低燃費化・低騒音化を実現しております。

その他、実現可能性が未知数ではあるものの、超音速機やソーラー機の開発実験を行っている企業もあり、未来の航空機市場へ期待が大いに寄せられるところでしょう。

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