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2022年度「国内消費者意識・購買行動調査」

消費者の意識・ニーズを捉え、ポストコロナ禍の消費意欲回復に備える

この2年以上にわたる新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)による制約は、小売・流通・旅行・飲食といったコンシューマー業界の現場を大きく混乱させた。では、その「混乱」は実態としてどのような「変化」をもたらし、ポストコロナ禍において消費者の行動はどこに向いているのだろうか。この問いに答え、国内消費者の価値観・マインド、購買行動の決定要因等を把握するため、2022年4月に、全国で20歳~79歳の男女5,000人を対象に、WEBアンケート「国内消費者意識・購買行動調査」を実施した。本稿ではその調査結果の一部を紹介、考察する。

日常的な消費行動は概ね回復基調にあり、体験型消費は今後の回復が見込まれる

今回調査対象としたカテゴリのうち、「食料品」「日用品」「フードデリバリー」では、昨年と比較して「購入金額が増えた/大幅に増えた」とする層が「減った/大幅に減った」とする層を大きく上回る結果となった。「金額が増えた」理由としては「在宅の機会が増えた」を挙げる回答が過半数近くに達した。対照的に「レストラン」カテゴリでは「減った/大幅に減った」とする層の割合が大きくなっており、日常生活における消費割合のソト⇒ウチの変化が起きていることは明らかである。

「衣料品」カテゴリでも「購入金額が減った/大幅に減った」と回答した割合が多くを占めている。「金額が減った」理由は特徴的な傾向を示しており、「人に会うことが減った」が過半数近くに達し、続く回答は「ほしくなくなった」であった。パンデミックを経て、消費動向だけではなく消費者の志向や考え方も変化していることを受け、コンシューマー企業は、コロナ以前とは異なる新しい消費者像を設定する必要があるだろう。

一方、体験型消費である「旅行」カテゴリの傾向はどうだろうか。「減った/大幅に減った」層の割合が大きいのは先述の「レストラン」カテゴリと同様であるが、その理由の最上位に挙げられたのが「コロナ禍でサービスの選択肢が減ったから」であることは興味深い結果である(「増やしたいが、感染不安の方が大きい」とする回答割合より上位である)。需要量の低下に伴い供給量を下げるのは正しい企業行動であるが、今後の本格的な需要喚起に向けては供給量の回復・拡大が重要なファクターになると見られる。(図1)

図1:業種別 昨年と比較した購入金額の変化
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加えて、「今後、消費額を増やしたいもの」として「旅行」「レストラン」カテゴリがいずれの年代でも上位回答となっており、今後の需要回復が強く見込まれる結果となっている。

この傾向は回答者の年代に比例して高くなる傾向を示しており、「旅行」「レストラン」については活発なシニアをターゲットにしたマーケティング・商品造成が需要回復の起点に成り得るだろう。対照的に若年層はこれらの意向は高くなく、「衣料品」「日用品」といったカテゴリでは年代の傾向が逆転する結果となっている(図2)

図2:今後消費額を増やしたいもの
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日常的な消費は店舗利用意向が強く、購買・情報収集共にデジタルシフトは進んでいない

店舗が再開した現在において、「店舗で購入する」との回答は、「食料品」カテゴリで9割超、「日用品」カテゴリで8割、「衣料品」カテゴリで6割超という結果となった。特に「食料品」カテゴリでは現在・昨年共に「店舗で購入する」とした回答が9割近くに達しており、日常的な消費は、コロナ禍でECという購買チャネルの普及が拡大したものの、店舗利用意向が強いことが窺える。(図3)

図3:商品購入時のチャネル
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また、上記の3カテゴリ(食料品・日用品・衣料品)で「店舗を利用する理由」については、「実物を手に取って確認したいから」がいずれも最上位となっており、店頭チャネルのニーズを裏付ける結果となった。他方、同じカテゴリで「ネットショッピングを利用する理由」では「価格が安いから」「ポイントが貯まるから」といった経済的メリットを挙げる回答が上位となっていたのも特徴的である。他のカテゴリ(レストラン・旅行・ラグジュアリー・ギフト)でも一定数が回答しており、オンライン利用において経済的メリットが、消費者の中で重要視されている。

購買にあたっての情報源に関する設問では、どのカテゴリにおいても「テレビ」「店頭のディスプレイ」が上位となっている一方、SNSを含むオンライン上の情報ソースの割合は高くなく、消費者全体の動きはまだまだ保守的である。但し、購買活動の主軸がECに移行した消費者に限って見ると、オンラインの利用が従来型メディアを上回っており、今後の消費者の意向・動向の変化を見据えつつ、デジタルマーケティングへの取り組みも急ぐべきである。

なお、ネットショッピングそのものへの安全性については7割強が何らかの不安を覚えていると回答している。購入履歴に基づくレコメンド機能に対しては「個人情報の取得に対して不安を覚える」との回答が35%に達しており、消費者側の潜在的な不安感は大きいのが実情と言える。

サステナビリティは消費行動を変えるまでのファクターには至っていないものの、自社顧客層との重なりは意識するべき

国内外含め、コンシューマー企業はサステナビリティ(持続可能性)への取り組みを進めているが、国内消費者の興味関心は高いとは言えない。今回の調査では未だ全体の約6割が「サステナビリティに関心が無い・分からない・聞いたことが無い」と回答しており(図4)、商品購入に際して「いつも環境負荷の少ない商品を選んでいる」としたのは全体の僅か5%に過ぎない。

但し、より細分化してこのテーマへの感度が高い層を探った結果、「ファミリー」「女性」「高所得者」といった幾つかの特徴が認められ、サステナビリティの重要性や自社の取り組みの訴求が重要になるだろう。

図4:サステナビリティ(持続可能性)への興味関心
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決済・ポイント/ロイヤリティプログラムと購買行動の関係は特に若年層に顕著な特徴が見られた

仲介機能である「決済」、顧客との関係構築における「ロイヤリティプログラム」については、世代・性別ごとに特徴的な傾向が見られた。

まず「決済」においては、「普段使用する支払方法」に「QRコード決済」を選択する割合が男女ともに若年層(20-30代)で最も高い結果となった。一定のリテラシーを要するQRコード決済はデジタルネイティブとも呼ばれる「Z世代」から普及が始まっていると言えるだろう。またこの年代層は「予定していた支払方法が使えなかった場合」に、「購入を見合わせる」「店舗へのロイヤリティが下がる」と回答した割合が最も高かった点も注目すべきである。

「ポイント・ロイヤリティプログラムが利用店舗やサービスの選択に影響を及ぼすか」という設問に対する肯定的な回答が最も多かった層は40-50代の男性で、次点が20-30代の男性であった。日常的な消費シーンをターゲットに設計されるポイント・ロイヤリティロプログラムが多いと想定される中、男性・勤労世代がポイントに対して最もセンシティブであるという結果となった。

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