調査レポート

Smart Building Study(日本語版)

Focus on the Facts

スマートビルについて、さまざまな立場のステークホルダーが皆それぞれ独自の意見を持っており、共通の業界標準(定義)がない。そこで、何をもって「スマートビル」とするのか、という問いに答えるため、この分野のエキスパートの協力を得て、スマートビルに関する実証データを収集することによって、スマートビルの定義について合意を形成し、性能検証を行った。

日本語版発行に寄せて

本レポートは、スマートビルのコンセプトや機能に関するDeloitte Germanyの不動産チームによる調査・検証結果をまとめたものであり、以下の二つの内容で構成される。

①車の自律走行における段階モデルを参考にしたスマートビルの定義

②スマートビルの性能検証

いずれも簡易的なモデル定義及び性能検証ではあるが、日本国内市場においても共通する点が多く、示唆があると考える。

 

➀車の自律走行における段階モデルを参考にしたスマートビルの定義

本レポートでは、冒頭に何をもって「スマートビル」とするのかについて、さまざまな立場のステークホルダーや産業を超えた共通認識(定義)がないことを課題として挙げている。

国内においては、IPAのデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)スマートビルプロジェクトがスマートビルガイドラインを策定したり、スマートビル事業を専門とする企業が登場したり、と官民両方の動きからスマートビルとは何か?が少しずつ形になりつつある。

しかし、Germany同様に、ステークホルダーを超えた共通言語となるにはまだまだ課題を有する状況にある。Deloitte Germanyの仮説ではあるが、本レポートの5段階モデル(P10)も参考にお役立ていただきたい。

 

➁スマートビルの性能検証

本本レポートでは、上記5段階モデルにおけるスマートビル(レベル1~3)と、従来型ビル(レベル0)のベンチマーク比較を行うことでスマートビルの性能検証を行っている。

国内においては “スマートビル化の投資対効果”が重要な論点になることが多いが、スマートビル化の有効性を検証できるほどのサンプル事例が存在しておらず、その有用性を証明できずに暗礁に乗り上げるプロジェクトが少なくない。

これはGermanyにおいても同様の状況にあり、本レポートではサンプル数が少ない中でも、定量・定性的事実に基づく性能の検証に挑戦している。国内のスマートビルプロジェクト検討時の示唆としてお役立ていただきたい。

また、ユーザー(テナント、ビル管理者)とプロバイダー(デベロッパー、ビルオーナー、投資家)との間でスマートビルの効果に対する認識や期待に差異がある点も国内と共通する部分であり、示唆になると考える。

 

庄﨑 政則
パートナー
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

小笠原 峻志
シニアマネジャー
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

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