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ナレッジ
グローバルにおける日本のフィンテック
世界が注目するフィンテック。取り巻く環境は世界でどう異なるのか。日本のフィンテックが置かれる状況や課題、可能性について考察する。
■ グローバルにおけるフィンテック投資状況
ベンチャーキャピタルのフィンテック投資は中国とアメリカに集中しており、次いでイギリスといった順になる。このように投資額差があるのは、B2Cビジネスの規模と課題、金融センターの位置づけという要因が大きい。
例えば、13億人の人口を有する中国や、3億人もの広い資産階層をもつアメリカでは、B2Cビジネスの領域も広く市場規模が大きい。しかしながら金融面での課題があるため、ベンチャーキャピタルの投資先として候補に挙がりやすい。またニューヨークや香港・シンガポールといった世界的な金融センターの存在も投資環境面での強みとなる。
一方、日本には人口1億3,000万人の良好なB2C市場環境があるものの、ATMや全銀システムといった金融インフラが盤石であり、ベンチャーキャピタルはすぐにリターンが期待できない。よって投資が集まりにくく、新しい金融ビジネスの動きも遅い傾向がある。
■ グローバルにおける東京のフィンテックハブとしての魅力度と機能性
東京は「フィンテックハブとしての魅力度」は世界的に中位だが、世界的な金融センターの中では低位に位置する。他の金融センターに比して規制の免許が取得しにくいといった不透明さと、イノベーションの発生のしにくさが原因となっている。
「フィンテックハブの機能性」としては政府支援が充実しているといえる。しかしイノベーション文化や消費者のフィンテック需要といった面で他国に劣後しており、すぐに魅力的なフィンテックハブになることは難しいだろう。受け入れる社会側や消費者側の意識を変える必要があり、啓蒙が重要といえる。
■ 米銀フィンテックの洗練度
先進的な米銀は自社でシステムエンジニアを多くかかえ独自でフィンテックを開発・導入しており、日本の金融機関と比べてはるかに速いスピードで成果をあげている。
米銀の「フィンテックの洗練度」を、データ活用、顧客リーチ、フィンテックを支える基盤という観点でみると、例えばJPモルガンは、データ活用ではIntuitとの提携でAPIを活用した外部からのデータアクセスを開始した。顧客リーチではオンライン融資OnDeckとの提携によりスピード審査を実現している。フィンテックを支える基盤としては、ブロックチェーンプラットフォームQuorumを自社開発し4万人ものシステムエンジニアが同社を支えている。
またゴールドマンサックスは、データ活用の取り組みとしてAI活用による人員削減を行い、株式の現物取引トレーダーを600人から2人にまで減らしたほか、データ解析ソフトウェアKenshoの社内活用をすすめている。顧客リーチでは1ドルから預金可能なネット銀行GS_Bankを設立。その他、暗号化メッセージサービス企業に出資し市場関係者間でのチャットサービスを業務活用している。システムエンジニアは全社員の3分の1にあたる9,000人を占め、自社内にブロックチェーン開発機能も保有しており、この手厚い体制が同社のフィンテック基盤を支えているといえる。
これに対して、日本の金融機関によるフィンテックの取り組みは実証段階にとどまり実行段階へはあまり進んでいない。これは、米銀が社内エンジニアによる自社開発が可能な一方で、日本では金融システムが勘定系中心の中央集権的な構成であり、かつ、システムの停止時間も非常に限定的で常に高いシステム品質が求められる状況のため、結果としてIT費用に占める新規開発の割合は低く、新たな取り組みを進めるにはハードルが高い。
■ 日米のシステムへの考え方の差異
日本ではシステム品質に対して要求レベルが高いため、堅牢な城壁・城郭を持ったシステムを構築しておりフィンテックのような新しい取り組みへの対応度(スピードやコスト)は低いと考えられる。この状況が行き過ぎるとイノベーションを阻害する可能性がある。
■ ブロックチェーンへの取り組み状況
欧米では公共部門や非金融業での活用が進み、金融業も巻き込んだエコシステム形成の環境が醸成されつつある。一方、日本では金融では活発な取り組みが進んでいるものの公共部門や非金融業での事例は少ない。ブロックチェーンほどエコシステム形成に向くシステムはないため、この傾向により、日本では将来的にエコシステムの取り組みが遅れてしまう可能性がある。
■ APIに関する世界の法整備状況
ヨーロッパでは決済の中間的業者に対する法整備が進行しており「個人データやその活用の主導権は個人に属するべき」との考え方が強い。
日本においても銀行法改正によりAPIを活用した金融サービスが導入しやすくなっているが、データを活用したサービスが消費者に浸透していなため、まずは社会としてデータを活用していく意義の啓蒙が必要である。APIでデータをさまざまな企業で活用できるようになり企業側でエコシステムが形成され、そのデータを利用して顧客へのサービス提供が可能なエコシステムが重要となる。
■ 仮想通貨の規制導入に向けた日本の資金決済法改正
日本では資金決済法等が改正され、世界で初めて仮想通貨の法的位置づけが明確化された。仮想通貨交換業者に対する対応が制定されたことで、顧客保護等の仕組みの整備が進み、仮想通貨取引を促進している。また海外ではデジタル通貨を決済に使用している例は少なく、電子マネーは日本特有の取り組みである。更なる発展を遂げれば仮想通貨を用いた資金調達ICO (Initial Coin Offering) の健全な拡大が見込める。
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