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長期低金利後の生保リスク管理の展望

生命保険会社の保険負債と資産運用における金利リスクの削減

生命保険会社は、長期間の金利低下局面の後、急速な金利上昇という新たな局面を迎え、どのように適用していくかが問われています。生命保険会社の財務を考えるとき、バランスシート上の保険負債と運用資産のバランスによってそのリスクを捉えることができます。市場環境が大きく変わる中で、生命保険会社がどのようにその資産と負債のポートフォリオを変化させ、環境変化に対応しようとしてきたか、その変遷をたどります。

長期低金利後の生保リスク管理の展望

生命保険会社の保険負債と資産運用における金利リスクの削減

生命保険会社が置かれている金利環境は金利上昇局面に入り、一つの転期を迎えていると言えます(下図参照)。日本の生命保険の販売において個人年金や養老保険などの貯蓄性商品の割合は比較的小さく、死亡保障や疾病入院保障を軸に置いた保障性商品が中心となってきました。また、市場金利の上昇も欧米のように急速ではありません。そういった意味では、欧米ほどの金利上昇による金利リスク、解約リスク、流動性リスクの増加を感じないマーケットであるのかもしれません。しかしながら、消費者の貯蓄商品に対する認識の変化や海外の高い金利に対する期待は、少なからず生命保険にも影響を与えるものと考えられます。

日本の生命保険市場では外資系や大手保険会社は貯蓄系商品を販売の主軸とする子会社を中心に貯蓄型商品の販売が拡大しています。特に2022年は海外の高い金利による運用を目指した外貨建ての一時払商品が生命保険各社の保険料収入を大きく押し上げました。同時に為替リスクを避ける消費者について円建ての貯蓄性商品の需要が喚起され、2023年には大手保険会社の一部で一時払終身保険の予定利率引上げが行われました。

新契約の動向をみると利率変動型の商品の販売が拡大し、契約の途中で予定利率を変更するスキームを採用した一時払の終身保険や介護保険が発売されています。契約の途中で予定利率を変える商品は消費者に将来の金利上昇時の対応を示すとともに、将来の金利の変動リスクも勘案した形となります。

日本の生命保険会社は、予定利率の引き下げと資産側のデュレーションを長くすることで金利リスクを削減してきました。金利上昇局面に入ると、予定利率の引上げをどういったタイミングでどの程度行うかという経営判断を求められるようになってきます。また、より高い利回りを求めて資産ポートフォリオの見直しも進むと考えられます。金利リスクを抑制するのに加えて、金利上昇から波及する解約リスク、流動性リスクをコントロールするという難しいかじ取りが生命保険会社に求められます。生命保険会社の資産運用、販売する保険商品についてさらなる工夫が求められる時代が訪れています。

 

≪30年国債利回りの推移≫

 

(データソース)investing.com。日ごと終値の月平均値の推移

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