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保険業界における破壊的イノベーション再考
保険業界における破壊的イノベーションはどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。本稿では、保険事業の運営におけるコスト構造に着目し、昨今の市場動向を踏まえ、保険業界に破壊的イノベーションが起こるシナリオについて考察します。
10年ほど前からテクノロジーの進化が保険業界に破壊的イノベーションをもたらすという論調が高まり、多くのプレイヤーがテクノロジーを梃にイノベーションをしかけてきた。しかし現状、破壊的と言えるほどの変革がおきているかと言われると、世界を見渡してもそうはなっていない。ディスラプターと取り沙汰されてきたプレイヤーたちも、既存のプレイヤーとの調和のとれたポジションに落ち着いているように見える。
しかし、決して保険業界が破壊的と表現されるような変革と無縁であるわけではない。今日の保険業界の状況をみると、保険会社各社は提供価値を「事前の予防」「事後の回復・復旧」に拡張し、従来の金銭的な発生コストの補填のみならず様々なサービスを提供しようとするなど、持続的イノベーションといわれる付加価値の拡大にまい進しようとしているように見える。この競争が過熱し、顧客が求めるレベルを超えて過剰となった場合、保険本来のコアとなる価値をよりシンプルにより低価格で提供することで、主要顧客の市場を席捲する「破壊的イノベーション」が起こる可能性も広がっていくであろう。
「保険業界における破壊的イノベーション再考」では、保険事業の運営における3つのコスト(マーケティング・ディストリビューションコスト、オペレーションコスト、キャピタルコスト)に着目し、これらのコストが切り下げるメカニズムを考察し、昨今の市場動向を踏まえながら、保険業界に破壊的イノベーションが起こるシナリオについて考察し、保険会社が取るべき対応について解説する。