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自動運転車による事故とその責任
米国における事故事例を中心に
自動運転の普及によって、移動課題の解決と交通事故の削減効果が期待されています。今後運転者なしの自動運転が普及していくならば、責任を問う運転者がいなくなり、事故の責任の所在を他に求めることになると考えられます。自動運転のレベルが上がり運行供用者または運転者の運転への関与度合いが減少するにつれて、運行供用者または運転者のミス以外の原因による事故が増える可能性があります。
自動運転車による事故とその責任 - 米国における事故事例を中心に
自動運転による先進モビリティサービスの実現・普及によって、移動課題の解決と交通事故の削減効果が期待されています。本レポートでは、これまでに日本と米国で行われた研究に基づき、自動運転による事故の削減見込みについてまとめています。自動運転システムの導入により、相手を早期に検知し対処することから事故の回避が可能となると考えられています。また、自動運転システムが運転操作を行う場合、速度制限など交通規則を遵守することによって事故に至る可能性が低くなると考えられています。
現状では、自動運転システムはそのレベルに応じて人間の介入を必要とします。また、当面は自動運転車と従来型の自動車が併存する過渡期が続きます。本レポートでは、米国において自動運転車が自動運転システム起動中に起こした事故を取り上げます。自動運転システムが発展段階にある現状において起こった事故の要因を詳細に分析したレポートから、開発段階における自動運転システムの限界や、自動化による運転者の警戒心の低下、車両オペレータを監視する必要性、運行会社の安全管理態勢整備の重要性等の課題が浮かび上がります。
最後に、今後運転者なしの自動運転が普及していくならば、責任を問う運転者がいなくなり、事故の責任の所在を他に求めることになると考えられます。日本では、レベル0~4までの自動車が混在する過渡期の損害賠償責任について、自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任は変わらないとされています。日本ではレベル4の自動運転車の運行について許可制を導入し、運行主体である自治体や事業者の義務が明確にされています。自動運転に関する責任については、デジタル庁のサブワーキンググループにて検討が続けられており、運行供用者の免責要件のひとつとなる『構造上の欠陥等』の有無に関する考え方や、製造物責任法上の『欠陥』の捉え方について議論が続けられています。