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よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズ(2)第2回 財務報告の目的と有用な財務情報の質的特性

(月刊誌『会計情報』2018年9月号)

よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズでは、概念フレームワークの内容及び今回の改訂における主要な変更点について、IASBで客員研究員として概念フレームワークプロジェクトの最終段階に実際にかかわった筆者がわかりやすく解説します。

著者: 公認会計士 藤原 由紀

1.はじめに

国際会計基準審議会(IASB)は、2018年3月29日に「財務報告に関する概念フレームワーク」の改訂版を公表した。よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズでは、概念フレームワークの内容及び今回の改訂における主要な変更点について、IASBで客員研究員として概念フレームワークプロジェクトの最終段階に実際にかかわった筆者がわかりやすく解説する。
シリーズ第2回目の今回は、2018年版フレームワークの第2章「有用な財務情報の質的特性」及び第3章「財務諸表と報告企業」の内容について説明する。このうち「有用な財務情報の質的特性」は、もともと2010年の概念フレームワーク改訂で公表されたものであり、当初IASBは今回の改訂でこの章を改訂することを予定していなかった。しかしながら、プロジェクトの過程で寄せられたコメントを考慮し、最終的に慎重性、測定の不確実性及び実質優先に関する明確化を図ることとしたものである。「財務諸表及び報告企業」は2010年版フレームワークに含まれておらず、今回の改訂で新たに付け加えられた章である。

2.基本的な質的特性

シリーズ第1回で見たように、財務報告の目的は利用者が企業への資源の提供に関する意思決定を行う際に有用な財務情報を提供することである。それでは、どのような財務情報が有用な情報であるといえるのだろうか。
概念フレームワークは「質的特性」という用語を用いてこの点を説明している。財務情報が有用であるためには、「目的適合性」と「忠実な表現」という2つの質的特性の双方を有していなければならない(これらの質的特性は「基本的な質的特性」と呼ばれる)。いずれも非常に重要な概念であるため、以下で順に詳しく見ていこう。 

 

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