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IASB、特約条項付の負債の分類に関するIAS第1号の修正を公表する

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2023年1月号

注:本資料はDeloitteの IFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

本iGAAP in Focusは、2022年10月に国際会計基準審議会(IASB)によって公表された「特約条項付の非流動負債」というタイトルのIAS第1号 「財務諸表の表示」の修正(2022年修正)について解説するものである。

  • IASBは、企業が報告期間以前に遵守しなければならない特約条項のみが、対応する負債の流動又は非流動への分類に影響を与えるべきであることを規定するよう、IAS第1号を修正する。
  • 企業は、特約条項付の非流動負債が12か月以内に支払いを要することとなるリスクを財務諸表の利用者が理解することを可能にする情報を開示することが要求される。
  • 本修正は、(IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」を適用して)遡及的に適用し、2024年1月1日以後開始する事業年度に発効する。早期適用は認められる。
  • 本修正は、2020年1月に公表された「負債の流動又は非流動への分類」というタイトルのIAS第1号の修正(2020年修正)の発効日を、2024年1月1日以後開始する事業年度に1年延期する。
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背景

2020年、IASBは「負債の流動又は非流動への分類」というタイトルのIAS第1号の修正を公表した。 2020年修正では、特に、IASBは、負債の流動又は非流動への分類が報告期間の末日に存在する権利に基づくことを明確化した。

2020年修正は、負債の決済を延期する権利が、報告期間後12か月以内に特定の条件(本修正では「特約条項(コベナンツ)」と呼ばれる)を遵守することが条件である場合に、当該権利があるかどうかを企業がどのように評価するかを規定した。利害関係者はその後、そのような特約条項への2020年修正の適用の結果について懸念を示した。IASBは、当該利害関係者の懸念に対処することを決定した。

 

2022年修正

2022年修正は、企業が報告期間以前に遵守しなければならない特約条項のみが、負債の決済を報告日後少なくとも12か月にわたり延期する企業の権利に影響する(したがって、負債の流動又は非流動への分類の評価において検討しなければならない)ことを規定する。そのような特約条項の遵守が報告日より後にのみ評価される場合(例えば、報告日後にのみ遵守について評価される、報告日における企業の財政状態に基づく特約条項)であっても、当該特約条項は、当該権利が報告期間の末日に存在するかどうかに影響する。

IASBは、企業が報告日より後にのみ特約条項を遵守しなければならない場合、決済を延期する権利に影響しないことも規定している。しかし、企業の負債の決済を延期する権利が、報告期間後「12か月以内」に企業が特約条項を遵守することが条件である場合、企業は、負債が12か月以内に支払いを要することとなるリスクを財務諸表の利用者が理解することを可能にする情報を開示する。これには、(特約条項の内容及び企業が遵守することが要求される時期を含む)特約条項に関する情報、関連する負債の帳簿価額、及び特約条項の遵守が困難となる可能性があることを示唆する事実と状況(もしあれば)が含まれることとなる。

見解

2022年修正に先立つ公開草案でIASBは、財政状態計算書において特約条項付の非流動負債を区分して表示することを要求することを提案した。本提案の主要な理由は、財務諸表利用者が、負債が12 か月以内に返済を要するものとなる可能性があるという示唆がなく非流動に分類されることによって誤解することを避けるためであった。

しかし、公開草案に対するフィードバックは、財政状態計算書における当該負債の区分表示に代えて、非流動負債の条件が注記で説明される場合、財務諸表の利用者は誤解することはないことを示唆していた。したがって、IASBはこの提案を最終化しないことを決定した。

 

2020年修正

リマインダーとして、直近の修正に影響されない2020年修正で導入された主要な変更点には、以下が含まれる。

  • IAS第1号69項及び73項に、負債が非流動に分類されるためには、「報告期間の末日」に決済を延期する企業の権利が存在しなければならないという明確化が追加された。
  • IASBは、負債が非流動となるかの評価は、企業が負債を決済する権利を有するかどうかが要求され、企業が当該権利を実行するかどうかは要求されないことを規定した。IAS第1号73項の企業の見込みへの参照は削除され、分類は経営者の意図又は見込みにより影響されないことを明示的に記述する新しい項が追加された。
  • 「無条件」の用語をIAS第1号69項から削除し、決済を延期する権利が特約条項を遵守することを条件としている場合に、当該条件が報告期間の末日で満たされている場合、たとえ融資者が後日まで遵守状況を検証しない場合であっても、当該権利が存在することを明確化する新しい項を追加した。
  • 「決済」の用語の定義が追加され、「負債を流動又は非流動に分類する目的上、決済とは、相手方への移転であって負債の消滅を生じさせるものを指す。」ことが記述された。その移転は、現金、財及びサービス又は企業自身の資本性金融商品である可能性がある。
  • 相手方の転換オプションが流動又は非流動の分類に影響する場合の状況が、明確化された。

 

経過措置及び発効日

2022年修正は、2024年1月1日以後開始する事業年度に、IAS第8号に従って遡及的に適用される。2022年修正の早期適用は認められる。企業が2022年修正を早期適用する場合、2020年修正を早期適用することも要求される。

同時に、IASBは、2020年修正の発効日を2024年1月1日に合わせている。2022年修正公表後に2020年修正を適用する企業は、当該年度に2022年修正も適用することが要求される。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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