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金融庁:有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度)

月刊誌『会計情報』2024年5月号

『会計情報』編集部

金融庁は、2024年3月29日に、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度)」を公表した。

 

1. 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)について

(1)令和5年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等

令和5年度の有価証券報告書レビューでは、令和5年1月に施行された企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(サステナビリティ、人的資本・多様性及びコーポレート・ガバナンスに関する開示についての改正)(*1)を対象に法令改正関係審査を実施するとともに、サステナビリティに関する企業の取組の開示を重点テーマとした審査(以下「重点テーマ審査」)も実施し、重点テーマ審査の対象会社には、重点テーマ以外の有価証券報告書の記載項目(政策保有株式に関する開示等)についても適宜審査が実施され、主に以下のような複数の審査対象会社に共通した課題が識別された。

  • サステナビリティに関する考え方及び取組
    • サステナビリティ関連のガバナンスに関する記載がない又は不明瞭である。
    • サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価及び管理するための過程の記載がない又は不明瞭である。
    • 戦略並びに指標及び目標のうち、重要なものについて記載がない。
    • サステナビリティ関連のリスク及び機会の記載がない又は不明瞭なため、サステナビリティに関する戦略並びに指標及び目標に関する記載が不明瞭である。
    • 人的資本に関する方針、指標、目標及び実績のいずれかの記載がない又は不明瞭である。
  • 従業員の状況
    • 女性管理職比率を女性活躍推進法の管理職の定義に従って算定・開示していない。
  • コーポレート・ガバナンスの状況等
    • 取締役会、会社が任意に設置する指名・報酬委員会、監査役会等の開催頻度、具体的な検討内容、出席状況等の記載がない。
    • 内部監査が取締役会に直接報告を行う仕組みの有無に関する記載がない。
    • 政策保有株式縮減の方針を示しつつ、売却可能時期等について発行者と合意をしていない状態で純投資目的の株式に変更を行っており、又は、発行者から売却の合意を得た上で純投資目的の株式に区分変更したものの、実際には長期間売却に取り組む予定はなく、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっている。

 

これらの課題の詳細を含む、令和5年度の有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等の詳細が公表されており(詳細はhttps://www.fsa.go.jp/news/r5/sonota/20240329-9/01.pdf参照)、令和6年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際して留意することとされている。

(*1)サステナビリティに関する企業の取組(ガバナンス、リスク管理、戦略及び指標及び目標)の開示、人的資本・多様性(女性管理職比率、男性の育児休業取得率及び男女間賃金格差)に関する開示及びコーポレート・ガバナンス(取締役会等の活動状況、内部監査の実効性及び政策保有株式の発行者との業務提携等の概要)に関する開示についての改正

(2)サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集

今後の提出会社による自主的な改善に資するよう、サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例が取りまとめられ(開示例集はhttps://www.fsa.go.jp/news/r5/sonota/20240329-9/02.pdf参照)、昨今サステナビリティに関する開示について投資家の関心が高まってきていることから、活用することが推奨されている。また、この開示例集には、政策保有株式関連の開示についても、投資者の関心が高いことや、昨今の企業による政策保有株式関連の開示の動向等を踏まえ、今後の提出会社による自主的な改善のために参考となる開示例(スタートアップ企業への投資に関する事例)が掲載されているため、参考にすることが推奨されている。

 

2. 有価証券報告書レビューの実施について

令和6年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書のレビューについては、以下の内容で実施される。なお、過去の有価証券報告書レビューにおいて、フォローアップが必要と認められた会社についても、別途審査が実施される。

(1)法令改正関係審査

近年のサステナビリティに関する企業の取組みの開示及びコーポレートガバナンスに関する開示についての改正並びに令和5年度の審査において識別された課題の状況等を踏まえ、令和6年度においても、以下の有価証券報告書の開示項目を対象に審査が実施される。

  • 令和5年1月に施行された企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令及び識別された課題に関連する開示項目(「従業員の状況」における女性管理職比率並びに「コーポレート・ガバナンスの状況等」における取締役会・監査役会等の活動状況及び政策保有株式に関連した開示を含む。)
(2)重点テーマ審査

令和5年度の審査において識別された課題の状況等を踏まえ、令和6年度においても、以下を重点テーマとして審査を実施される。

〔重点テーマ〕サステナビリティに関する企業の取組の開示(*2)

(*2)令和5年1月に施行された企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令の適用にともない、有価証券報告書において開示される「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関する記載内容について自主的な改善に資するよう審査される。

(3)情報等活用審査

上記に該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案した審査が行われる。

(参考)開示義務違反等に関する金融庁の情報受付窓口(ディスクロージャー・ホットライン

詳細については以下のウェブページを参照いただきたい。

有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度):金融庁(fsa.go.jp)

以上

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