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国の会計と関連制度(11回目)~国の公共調達の概要(その3)公共調達のチェックや適正化への取組の概要~

月刊誌『会計情報』2024年5月号

公認会計士 長村 彌角

国の公共調達では、限られた財源の中で政策効果を最大化させるために、政策の遂行に必要な財・サービスの調達は費用対効果の優れたものにする必要がある。同時に、調達手続きの効率化や公平性、透明性の確保が不可欠である。財務省では、2006年8月に「公共調達の適正化について」(財計第2017号財務大臣通知。以下、財務省通知という。)を発出し、随意契約の一般競争入札への移行や契約に係る情報の公表等の措置、内部監査の充実などを講ずることとし、翌年には、公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議において、入札契約の過程に第三者の意見を反映させる仕組みを導入することとした。

本稿では、公共調達の公平性や透明性、効率性、競争性などをチェック(ガバナンス)する機関や体制、適正化への取組に関し、全省庁横断的に実施されるものとして会計検査院、行政改革推進会議、公正取引委員会について、府省庁単位で実施されるものとして契約監視委員会等、行政事業レビュー、内部監査(会計監査)について、触れていく。

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1. 全府省庁横断的に実施されるチェック(ガバナンス)

(1)会計検査院による検査

会計検査院は、国の収入支出の決算を検査し、その検査結果報告は内閣に送付され、内閣から国会に提出される。また、会計検査院は常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図り、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を実施する。

(憲法)

第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

② 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

 

(会計検査院法)

第二十条 会計検査院は、日本国憲法第九十条の規定により国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行う。

② 会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。

③ 会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行うものとする。

 

① 会計検査院の検査方針

会計検査院では、毎年10月から翌年9月まで(例えば、2022年10月から2023年9月)を検査実施期間とし、その間の会計検査の基本方針を直前の9月(例えば、2022年9月)に定めている。

「令和5年次会計検査の基本方針」では、社会経済の動向等を踏まえて、国民の期待に応え、厳正かつ公正な職務の遂行、検査業務の質の維持・向上に努めることを念頭に方針が定められている。その概要は次のとおりである(この方針のなかに、入札・契約の競争性や透明性に留意した会計検査を実施することも含まれている)。

(重点的な検査対象)

社会保障

教育及び科学技術

公共事業

防衛

農林水産業

環境及びエネルギー

経済協力

中小企業

デジタル

 

これらに加え、新型コロナウイルス感染症対策に関する各種施策、その他の分野の施策についても、各事業等の進捗状況に応じ適時適切に検査を行う。

ア) 多角的な観点からの検査

  • 決算の表示が予算執行等の財務の状況を正確に表現しているか(正確性)
  • 会計経理が予算、法律、政令等に従って適正に処理されているか(合規性)
  • 事務・事業の遂行及び予算の執行がより少ない費用で実施できないか(経済性)
  • 同じ費用でより大きな成果が得られないか、あるいは費用との対比で最大限の成果を得ているか(効率性)
  • 事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているか(有効性)
  • その他会計検査上必要な観点

正確性及び合規性の観点からは、一部の府省等において不正不当な事態が見受けられたことも踏まえ、特に基本的な会計経理について重点的に検査を行う。また、入札・契約の競争性及び透明性についても十分に留意する

特に有効性の観点では、事務・事業や予算執行の効果について積極的に取り上げ、検査対象機関が自ら行う政策評価や政府が行う各種の取組等の状況についても留意して検査を行う。国等が保有している資産、補助金等によって造成された基金等の状況についても留意して検査を行う。

このほか、行財政の透明性、説明責任の向上や事業運営の改善に資するなどのために、国の財政状況、財政健全化に向けた取組、特別会計や独立行政法人等の財務状況について、国や法人の決算等に基づき分析を行うなどして検査の充実を図る。その際、企業会計の慣行を参考として作成される特別会計財務書類等の公会計に関する情報の活用にも留意する。

(内部統制の状況に対応した取組)

検査対象機関における内部監査、内部牽制等の内部統制の状況は、会計経理の適正性の確保等に影響を与えることから、その実効性に十分留意し、必要に応じて内部統制の改善を求めるなど適切な取組を行う。

② 検査結果の公表

会計検査院の検査では、個別の検査対象の検査結果を次の区分により公表している。

検査結果は、「令和4年度決算検査報告」の場合、2023年11月7日に内閣総理大臣に送付している。

意見区分

内容

不当事項

検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項

意見を表示し又は処置を要求した事項

会計検査院法第34条又は第36条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項

本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項

意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

「会計検査院法第34条又は第36条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項」について、当局において講じた処置又は講じた処置の状況

不当事項に係る是正措置の検査の結果

既往の検査報告に掲記した不当事項に関して、当局において執られた是正措置の状況についての検査の結果

 

会計検査院の検査報告データベースでは、例えば「公共調達」をキーワードで検索すると、次のような個別事案含め29件がある。

年度

件名

平成29年度

データ入力業務等の請負等業務について、契約事務の適正な実施及び契約の適正な履行等が確保されるよう是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求したもの(厚生労働本省)

平成27年度

独立行政法人における民間委託の状況について(独立行政法人97法人)

平成25年度

地方機関の庁舎等における機械警備業務について、公正性、競争性及び透明性を確保するよう、都道府県単位等に集約して一括して契約したり、国庫債務負担行為を活用して複数年度契約を実施したりすることにより一般競争契約への移行を推進するよう改善させたもの(農林水産本省、115農政局等)

平成22年度

総合評価落札方式による一般競争入札の実施に当たり、具体的な仕様書を基にして予定価格を適正に算定するようマニュアルを改正することなどにより、契約事務を適切に行うよう改善させたもの(農林水産本省、4地方農政局)

平成20年度

アウトソーシング契約の実施に当たり、競争性及び透明性を確保するため一般競争契約への移行等を推進するとともに、標準資料や実例等の適用を十分考慮するなどして、予定価格の積算を経済的なものとするよう是正改善の処置を求めたもの(海上幕僚監部、11部隊等)

平成18年度

各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について(内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)、国会、裁判所、会計検査院)

 

会計検査院では、このように、検査対象とした個別の事業や契約への指摘に加え、各府省庁における国の施策の実施状況など包括的な検査と指摘も行っている。また、検査結果は必要により、国会及び内閣に報告される。個別の事業や契約への指摘は、指摘された事業や契約を超えて他の事業や契約においても参考にされる必要がある。

(2)行政改革推進会議による調達改善の推進

2013年1月29日行政改革推進本部決定として、行政改革に関する重要事項の調査審議等を進めることを目的に、「行政改革推進会議」が内閣府に設置された。行政改革推進会議では、公共調達のチェックに関し、以下の本部決定を通じて全府省庁が行う入札契約に対する自己評価などの点検をしている。

① 「調達改善の取組の推進について」(2013年4月5日 行政改革推進本部決定)1
(趣旨)

限られた財源で政策効果を最大限向上させるためには、政策の遂行に必要な財・サービスの調達を費用対効果の面から優れたものにする必要がある。各府省庁がPDCAにより透明性・外部性を確保しつつ、自律的かつ継続的に調達改善に取り組むとともに、行政改革推進会議がこれをチェックする枠組みを整備し、政府全体として調達改善を推進する。

(調達改善計画の策定)

各府省庁は、原則として毎年度開始までに当該年度の調達改善計画(次の内容を含む)を策定し公表する。

  • 重点的に調達改善に取り組む分野
  • 調達改善の取組内容
  • 調達改善の目標
  • 自己評価の実施方法
  • 調達改善の推進体制等
(調達改善計画の自己評価)

各府省庁は、上半期(4~9月)終了後及び年度終了後、速やかに、調達改善計画の実施状況について自己評価(次の内容を盛り込む)を実施し、結果を公表する。自己評価の結果は、その後の調達改善計画の実施や策定に反映させる。

  • 実施した取組内容及びその効果
  • 目標の達成状況
  • 実施において明らかになった課題
  • 今後の調達改善計画の実施や策定に反映すべき事項
(各府省庁における推進体制の整備)

各府省庁は、調達改善計画の策定や自己評価の実施等、調達改善を推進するための体制を整備する。調達改善計画の策定、自己評価の実施等の際には、調達改善に関する知見を有する外部有識者に意見を求める。

(行政改革推進会議の関与等)

行政改革推進会議は、各府省庁の自己評価結果を点検し、必要に応じ指摘・助言を行うとともに、各府省庁が有する調達改善のノウハウ等の共有化・標準化を図る。

② 「調達改善の取組の強化について(調達改善の取組指針の策定)」(2015年1月26日 行政改革推進本部決定)2

「調達改善の取組の推進について」を受け、各府省庁では調達改善計画を作成しPDCAにより改善の取組みは定着してきている一方で、各府省庁間での取組にはバラツキが見られる。このため、各府省庁が自らの調達改善の現状を的確に把握し、高次の段階に高めていくために参考となる指針を発出した。併せて、これまで事後的な点検・検証を中心としてきた行政改革推進本部事務局の関与も一歩進め、各府省庁への支援的役割を強化することとした。

「調達改善の取組の強化について(調達改善の取組指針の策定)」の概要は次のとおり。

(適正な随意契約の締結)
ア)適正な契約方式の適用

競争性や透明性の確保の観点から、競争性のない随意契約について、一般競争入札への移行や企画競争や公募といった、より競争性の高い随意契約方式への移行が進められてきた。競争性のない随意契約によらざるを得ないと考えられる場合、その理由等を明確にし、官房会計課等が審査し適正な契約方式の適用を行う必要がある。また、これらの取組の事例や審査結果等を組織的に情報共有することも重要である。

(より適正な価格での調達に向けた取組)

有利な価格による契約の締結は、常に留意されるべき原則である。このため、会計法令上、随意契約によろうとする場合についても予定価格を定め、判断の基準とすることとなっている。予定価格の算定は、市場価格、過去の類似の契約事例等の情報を可能な限り収集し、それらを踏まえて適切に設定するよう努める必要がある。さらに、価格の適否を効果的に判断するため、調達する財・サービスの価格の積算構造やそれぞれの要素の価格動向等の踏み込んだ情報も収集、検討を行っていくことが重要。これにより、品質を下げることなく、過剰な仕様や見積額を削減できることが期待される。

ア)少額随意契約の更なる改善

少額随意契約は、会計法令上、競争に付すことは可能であるが、契約金額が少額なため、契約事務の簡素化の観点から競争に付すまでもないものと意義づけられている。よって、事務の簡素化の観点はあるものの、可能な範囲で、調達の一括化3による競争入札への移行など、より競争性や透明性に配慮した取組を行うことが求められる。

(一者応札の解消に向けた取組)

一者応札とは、競争入札において一者しか応札がなく契約されることであり、結果として一者応札となったものすべてが問題ということではない。しかし、同種の入札に何度も同じ事業者が一者応札で受注を繰り返す場合には、調達価格の高止まりが強く懸念される。このため、他の事業者が応札しなかった理由含め、原因の把握と分析に努め、そのうえで、仕様の見直しや新規参入者への情報提供などの改善にも積極的に取り組み、競争参加者の増加を図る必要がある。

一方で、特殊な技術・品質が求められる調達等で、そもそも特定一者以外には履行し得ない場合には、むしろ、慎重な検討を踏まえ、公募等の手続を行った上で随意契約することにより、価格交渉4の余地を確保する方が合理的な場合もある。

ア)一者応札となった原因等の把握

市場の状況や事業者が応札しなかった理由等を調べ、事業者へのアンケートやヒアリング、外部有識者等からの知見も活用し、原因の把握と分析に努めることが必要である。標準的な、もしくは発展的な取組例としては、次がある。

イ)競争参加者増加のための取組

競争参加者を増加させるためには、一者応札となった要因や対象となる財・サービスの供給者の状況の調査等を踏まえ、競争参加資格や仕様、発注単位等の見直しやホームページ(地方支分部局等の調達情報のリンク含む)の活用、発注予定の事前公表といった参入事業者の準備期間の確保等にも配慮した情報提供が重要である。

(汎用的な物品・役務における共同調達等の有効活用)

汎用的な物品・役務の調達は、スケールメリットの活用や事務の省力化を図る観点から、複数省庁等による共同調達・一括調達(以下、共同調達等という。)の推進を図っている。共同調達等は、「一括調達の運用ルール」(2009年1月16日各府省等申合せ)に基づき実施され一定の成果をあげている。共同調達等の実施に向けては、対象とする物品・役務について、調達する官署の範囲、配送場所、取りまとめ官署の決定等の調整に手間と時間を要することもあるが、スケールメリットの活用により経済性の向上を目指し、対象品目等について計画的に検討していく必要がある。すでに共同調達等が実施されている場合も、競争性を高める等の改善点について検討していくことが重要である。

(調達及び契約手法の多様化)
ア)総合評価落札方式

総合評価落札方式を実施するに当たっては、内規の整備と遵守、落札者の選定基準や選定手続が公正に定められ実施されたことを示す透明性の高い開示の仕組みが必要である。また、経済性の観点や内容の重要性に応じ、評価方法の作成段階や落札者決定段階で外部有識者等の意見を取り入れ、客観性や透明性を向上させることも重要である。

イ)企画競争

企画競争は価格による競争の要素が含まれない随意契約であるため、企画競争を採用する場合には、真に適切かつやむを得ないと言えるか慎重な検討と審査が必要となる。また、価格の見積根拠等を精査し、適正な仕様及び価格での契約締結を図る等、経済性の確保に努める必要もある。加えて、品質や技術といった価格以外の要素だけが評価対象となることから、総合評価落札方式にも増して、特定の者が有利とならないよう競争性や透明性に留意した手続の実施も必要である。そのため、評価方法の作成や事業者選定のプロセスに、必要に応じて外部有識者等の意見を取り入れ、客観性や透明性の向上を図ることも重要である。

ウ)まとめ買い

防衛装備品等では、少量かつ長期間の整備となるために高価格となるものについて、単年度にまとめて調達しスケールメリットの活用や事務の効率化を図っているものがある。こうしたまとめ買いは、供給時期の柔軟度と将来の定量的な需要の確実性を見越して調達することで経費を削減するものであるが、時間の経過に伴う環境の変化により、結果的に実際の需要よりも多く調達してしまうといったことや、実際に使用する時には仕様等が陳腐化しているなど無駄が生じるおそれがあるため、許容される範囲や限度を慎重に見極め、その必要性やメリットとなる金額効果、将来の需要や財の特性についても十分な検証を踏まえたうえで実施する必要がある。

(人材育成、情報の共有等)

財政法令上、予算の執行は各省庁の長が行うが、実際の事務については所属の職員等に委任し、主に大臣官房会計課等が入札、公告、契約の締結等を担当している。そのため、調達に関係する職員により、国の会計制度や契約事務の研修の実施等によって、調達事務に必要な知識や能力を身に付ける必要がある。加えて、具体的な調達案件を通じ、調達ノウハウを蓄積し、調達に関する知識や能力の一層の向上にも取り組むことが重要である。組織的には、契約事務等に関する内規、チェックリスト等の適切な整備・共有化により、統制のとれた取組が行われる必要がある。調達改善の取組や個別案件に対する事後の検証を行い、必ずしも効果が現れなかったものについてもその原因を分析し、情報の共有を図ることで次の改善につなげていくといった体制を強化することも重要である。

(新規性、創意工夫のある効果的な取組)

特に新規性、創意工夫が認められる高度な取組として、次のような例がある。

  • 外部有識者等で構成される委員会において、随意契約や一者応札となっている案件に対する事前審査
  • 随意契約によらざるを得ない案件について、新規参入可能であるといった旨をホームページで常続的に公示
  • 価格交渉の事例や専門家の知見を蓄積し、部局内で情報共有
  • 少額な調達におけるインターネット取引の活用
  • 調達のため必要となる技術又は設備等を明示した上で参加者を公募するなどして、あらためて特定の者だけが事業を実施し得ることが確認された場合には、随意契約によることとし、価格の見積根拠等を精査
  • 評価項目における過去の受注実績や経験に対する過度な評価の見直し
  • 内部監査を活用した地方支分部局等の職員への調達改善に係る指導や情報交換
  • 外部有識者等の知見を活用した研修や事例集の作成
③ 行政改革推進会議による点検

各府省庁では、原則として毎年度の開始までに当該年度の調達改善計画を策定・公表し、上半期(4月から9月)終了後及び年度終了後には各年度の調達改善計画の年度末自己評価を実施、結果を公表している。行政改革推進会議は、各府省庁の自己評価結果の点検作業を実施し、必要に応じて指摘や助言を行うとともに、各府省庁が有する調達改善のノウハウ等の共有化や標準化を図っている。

なお、例年10月から年末にかけて開催される同会議において、その前年度の調達改善の取組に関する点検結果(案)について検討し、同会議の了解を得て公表5している。点検結果は、各年度、概ね次の構成である。

  • 対象となる年度の調達改善計画の実施状況
  • 調達改善の取組の具体的な実施状況
  • 有識者からの指摘事項
  • 今後の取組み
  • (別添)国の調達に係る契約金額、国の調達に係る契約種別、国の調達に係る応札状況、各府省庁における調達改善の主な取組

調達改善に関する行政改革推進会議の点検結果の概要や委員の意見等は、例えば以下のようなものがある。

回数(開催日)

点検結果の概要

1回

(平成25年(2013年)2月27日)

「無駄の撲滅の取組について-調達改善に向けた取組について-」について審議された。平成24年度から各府省において調達改善計画の取組みが開始されているが、次の点が当面の課題である。

  • 各府省の調達改善計画の策定による取組を定着させ、調達改善に関するPDCAを確立する。
  • 調達改善に関するノウハウ等の政府全体での共有化・標準化及び効果的活用。

2回

(平成25年(2013年)4月2日)

今後の調達改善の取組として、次の点が審議された。

  • 各府省等は、原則として毎年度開始までに調達改善計画を策定・公表する。
  • 各府省等は、上半期終了後及び年度終了後に、同計画実施状況について自己評価を実施し公表する。なお、自己評価を的確に実施するための体制を整備する。
  • 自己評価結果は、その後の同計画の実施や策定に反映させる。
  • 同計画の策定及び自己評価実施等においては、各府省等は外部有識者に意見を求める。
  • 行政改革推進会議は、各府省庁の自己評価結果の点検作業を実施し、必要に応じて指摘や助言を行うとともに、各府省庁が有する調達改善のノウハウ等の共有化や標準化を図る。
  • 調達改善計画には、次の点を盛り込む。
    -重点的に調達改善に取り組む分野
    -調達改善の取組内容
    -調達改善の目標
    -調達改善計画の自己評価
    -調達改善の推進体制

4回

(平成25年(2013年)8月6日)

  • 「平成24年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」を審議。
  • 調達改善の実施状況において、①情報システムの調達における取組、②専門的人材の確保に関する取組、③品質に配慮した調達に関する取組などが示された。

9回

(平成26年(2014年)1月20日)

  • 「平成25年度上半期調達改善の取組に関する点検結果」を審議。
  • 調達改善の実施状況において、①情報システムの調達における取組、②国庫債務負担行為の活用、③旅費業務の効率化、④クレジットカード決済の活用などが示された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -コスト分析をしないと業者に騙される可能性があるため、コスト分析やコストデータベース化に向けた取組みを進められれば良い。
    -総合評価方式については、透明性、明確化、モニタリングが十分ではないので、主管を少なくするためのルール策定や第三者関与などの体制を構築すべき。

10回

(平成26年(2014年)3月14日)

  • 「今後の調達改善の取組」が審議された。
  • これまでの各府省庁の調達改善計画に基づく実施状況を踏まえて、平成26年度調達改善計画の策定要領を改正した。
    -重点的に取り組む分野として、改善の余地のある分野やこれまでに取り組んでいない分野・手法を積極的に記載する。
    -調達改善の取組の観点として、競争性を高め、費用の節減や品質向上を図ること、職員のスキルアップを図ることが示された。

12回

(平成26年(2014年)8月8日)

  • 「平成25年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 調達改善の実施状況において、①情報システムの調達における取組、②総合評価落札方式に対する取組、③クレジットカード決済の活用、④外部専門家の活用、⑤職員のスキルアップ、⑥旅費などが示された。

15回

(平成27年(2015年)1月26日)

  • 「平成26年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 情報システムの調達に関して、多くの府省庁で、専門家であるCIO補佐官等の外部有識者からの助言を受け、仕様書の適正化や経費内容の精査が実施されていることが示された。
  • 調達改善の実施状況において、①総合評価落札方式に対する取組、②企画競争、③国庫債務負担行為の活用、④クレジットカード決済の活用、⑤人材育成などが示された。

16回

(平成27年(2015年)3月31日)

  • 「調達改善に係る優良取組事例の選定について(案)」が審議された。
  • 調達改善の取組強化のモチベーション向上、府省庁間におけるノウハウ等の共有化、標準化を促進するため、行政改革推進会議が各府省庁の優良取組事例を選定して積極的に評価する仕組みを開始することとした。

17回

(平成27年(2015年)6月18日)

  • 「平成26年度調達改善に係る優良取組事例の選定について(案)」が審議された。
  • 優良取組事例として、経済産業省(大臣官房会計課)の「一者応札解消のための多段階点検プロセスの導入」及び内閣官房・内閣府(大臣官房会計課)、経済産業省(大臣官房会計課)の「公募を実施した上での価格交渉の実施」が選定された。

18回

(平成27年(2015年)8月10日)

  • 「平成26年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 行政改革推進本部事務局は、各府省に対して、平成26年度調達改善計画年度末自己評価に当たり、定量的目標、定性的目標の双方の視点から、「A」「B」「C」の3段階評価を要請した。結果、各府省庁では当該評価基準での自己評価に加え目標の達成状況要因分析をしていた。
  • 重点的な取組として、最も多くは一者応札の改善である一方で、宇宙関係経費、警察装備、防衛装備、遺棄化学兵器処理関係経費など専門性が高い案件の効率的な調達や、情報システムの調達が挙げられていた。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -少額随意契約が可能な場合でも、競争可能なものは一部競争入札としたり、法令よりも少額随意契約の契約基準を下げて入札したりしている点にも注目すべき。
    -契約金額が削減されたように見えても、履行確認作業を外部に大量に委託しており、トータルでは契約金額が増加している場合もあるため、トータルコストの削減の視点が必要。
  • 総務省作成の「独法の調達に関する新たなルールについて」が別添された。

22回

(平成28年(2016年)3月29日)

  • 「平成27年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 地方支分部局等における取組として、特に北陸財務局では他府省庁の地方支分部局等との共同調達及び他の財務局との一括調達の取組が行われていることが示された。
  • 地方支分部局等の取組を加速させるため、平成27年度上半期から新たに本府省・地方別の自己評価を導入することとした。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -「価格交渉」には、①相手方が提出してきた価格の裏付けを取ること、②値引き交渉をすることの2つの意味があるが、①の徹底がまずは重要である。

24回

(平成28年(2016年)10月28日)

  • 「平成27年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 平成27年度に新たに公用車のガソリン調達について、財務省、経済産業省、農林水産省及び外務省のグループと、警察庁、国土交通省、総務省のグループにおいて共同調達が開始された。
  • 「28年度契約に向けた共同調達の取組について」が別添され、例えば次が示された。
    -共同調達推進のため、北陸3県所在の9省18官署(金沢国税局、金沢地方検察庁、北陸総合通信局等)との協議を新たに実施。
    -共同調達契約件数を15件に、参加官署を9省庁23官署にそれぞれ増大させることでスケールメリットを享受できる環境整備を進め、幹事官署を5省庁10官署に割振り、国全体での業務効率化を図る。
  • 「複数回1者応札及び随意契約は続いている案件に対する改善策(例)」が別添され、業務内容の開示、参加者要件の見直し、発注単位(内容、地域)の見直し、複数年度契約の検討と更新時の適切な対応、新規参入業者の調査の視点からの策が示された。

27回

(平成29年(2017年)3月28日)

  • 「平成28年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 平成28年度調達改善計画において、初めて共通して推進すべき取組(①一者応札の改善、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達の改善に係る取組)が設けられた。
  • 各府省庁は、「調達改善の取組強化について(調達改善の取組指針の策定)」(平成27年1月26日)を踏まえ、「重点的な取組」等の調達改善計画を策定した。
  • 平成28年度調達改善計画の策定から、取組の難易度について効果的取組をA+、発展的取組をA、標準的取組をBと表示することとなった。
  • 調達改善の実施状況において、①国庫債務負担行為の活用、②企画競争、③オフィス関連調達の合理化、④インターネット取引におけるクレジットカード決済の活用などが示された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -調達改善に関するマネジメント強化は、調達改善の「本丸」である。個別案件の審査・管理を含め、調達プロセス全体のマネジメント強化を行うことが重要。

28回

(平成29年(2017年)11月9日)

  • 「平成28年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 調達改善におけるマネジメント強化に関して、①調達改善に向けた審査・管理の充実の面から、例えば内部監査の際に個別契約に対して付された契約監視委員会等からの意見を職員に共有するなど、機会をとらえて調達改善に係るノウハウの向上が重要とされた。また、②調達改善に資する研修・情報共有の実施、人事評価への反映の面から、会計法令に関する研修に加え、調達改善に向けたより実践的で多様な内容の研修実施、府省庁内で個別審査に際し指摘された課題と効果のあった対策やベストプラクティスの共有徹底、調達改善の取組が不断に行われるよう適切な人事評価をする必要性などが示された。
  • 電力自由化への対応の優良事例(法務省)として、多くの電力事業者に競争入札に参加してもらうために、①各一般電気事業者管内単位での調達、②特別高圧、高圧電力契約と低圧電力契約の分割、③年間予定数量は100万kWh以上、④特別高圧・高圧電力施設の場合、契約電力が1,500kW以上、といった検討方針が別添として示された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -前例に乏しい新技術を活用する調達を行う際などには、専門家から費用対効果の高い調達方法に関する意見を徴することが有効。

31回

(平成30年(2018年)3月28日)

  • 「平成29年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 平成29年度調達改善計画における共通的な取組は、①一者応札の事前審査・事後審査の実施・強化、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 一者応札に関して、デジタル・ガバメント実行計画(平成30年1月16日eガバメント閣僚会議決定)では、サービス設計に当たって投資対効果が十分に行われるべきことなどが示されていることを挙げ、調達に関しても費用対効果の追求のため、CIO補佐官の役割発揮が求められる。
  • 調達改善におけるマネジメント強化に関して、大量生産品を調達する際には取引価格の比較にインターネットを利用し、市場価格よりも大幅に高額で調達しているケースが無いかなど価格チェック等による改善の取組が求められるとされた。
  • 今後もメルマガ活用やオフィス関連調達の合理化手法に関して、府省庁横断的な実践的ノウハウの共有を行うことの必要性が示された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -契約監視委員会等の審査の対象となっている個別案件に関して、調達改善計画においても目標とすることは有効である。
    -特に中小企業から、国の発注情報がわかりにくいとよく聞くため、受注者から見て必要な情報が得やすいかの改善余地がある。
    -海外事例で見られるように、例えば役所が仕様書を書くという発想から性能発注へ移行していくことが考えられる。

32回

(平成30年(2018年)11月7日)

  • 「平成29年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 一者応札が複数回継続する案件の解消に向けた事前・事後の審査体制は、平成29年度上半期までに全府省庁で整備された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -共同調達の新たな展開として、会計データと直結することを前提に、ネット上にマーケットプレイスを設置することが考えられる。

35回

(平成31年(2019年)3月29日)

  • 「平成30年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 平成30年度調達改善計画における共通的な取組は、①調達改善に向けた審査・管理の充実、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 電力の調達改善については、多くの事例で1割以上のコスト削減が見られ、ガス調達においても調達改善事例が見られつつあるとした。
  • 別添として、情報システム調達の改善(一者応札解消等)に成果のあった取組事例が示された。

36回

(令和元年(2019年)11月5日)

  • 「平成30年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 電力調達に関する取組について、建物を超えて電力需要をまとめて調達した事例、広域に存在する庁舎等をまとめて共同調達した事例や府省庁を超えて多数の庁舎等をまとめて共同調達した事例も見られた。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -各府省庁の取組にはバラツキも見られるが、事務局が行っている勉強会や各府省庁への講師派遣などは継続されるべきである。
    -一者応札が複数回継続する案件を契約監視委員会等で再審議する取組については、個別案件の審査・管理の充実が図られた例といえる。

39回

(令和2年(2020年)3月27日)

  • 「令和元年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 令和元年度調達改善計画における共通的な取組は、①調達改善に向けた審査・管理の充実、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 一部府省庁では、一者応札の個別案件ごとに要因分析を記載した一覧を作成するなどの取組が進んでいる。
  • 情報システムの調達改善に関して、個別の情報システムごとにセキュリティを確保しつつ、ベンダーロックインなどの課題や特性を踏まえて計画的に契約更新等の機会をとらえ対処していくことが必要である。
  • 令和元年度調達改善実務者向け勉強会「随意契約による場合の見積り根拠の精査」に対する意見が、別添として示された。

40回

(令和2年(2020年)11月6日)

  • 「令和元年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 情報システム整備に関連して、令和2年度から一部の府省庁で機動的かつ効果的、効率的に進めるために、契約締結前に複数事業者と提案内容について技術的対話を可能とする新たな調達、契約方法の試行運用が実施されている。
  • 持続可能な社会に向けた取組が求められるなか、一部の府省庁では、一定割合以上の再生可能エネルギー由来の電力供給を求める要件設定により、再生可能エネルギー比率の高い電力調達を実現している。
  • 事業者からの見積もりに基づき調達する場合に見積り根拠の精査が行われているが、ノウハウ蓄積程度にバラツキがあり、マニュアル化やデータベースによる管理・共有が必要である。
  • 受注可能な事業者の調査・情報発信の充実による一者応札解消事例が、別添で示された。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -事務局が主催する勉強会のテーマとして取り上げた「受注可能な事業者の調査」により、一者応札が改善した事例が増えていることを評価する。

43回

(令和3年(2021年)3月26日)

  • 「令和2年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 令和2年度調達改善計画における共通的な取組は、①調達改善に向けた審査・管理の充実、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 一部の府省庁では、再生可能エネルギー比率の高い電力調達を実現した取組が見られている。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、他府省庁においても、競争性確保やコスト抑制に十分留意した上で、同様の取組が求められる。
  • 令和2年度から試行運用された「情報システム調達における技術的対話」について、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の職員等を講師として招き、全府省庁の実務担当者を対象として勉強会を開催した。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -新型コロナウイルスの状況等を踏まえ、調達事務のオンライン化を各府省庁で更に推進していく必要がある。

45回

(令和3年(2021年)11月5日)

  • 「令和2年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 電力調達に関して、令和2年12月、行政改革推進本部事務局と環境省から各府省庁に対し、競争性の確保や低廉な電力価格の実現等に留意した上で、令和3年度分の電力は再生可能エネルギー比率30%以上を実施するよう要請された。これを受けて、電力調達を実施している全府省庁で調達手続が開始した。
  • 調達手続のオンライン化に向けた取組に関して、新型コロナウイルス感染症対応として書面・押印・対面の見直しが行われている。また、入札の実施、契約書の作成等については、電子調達システムによりオンライン化され、事業者への周知等に加えオンライン利用率の向上のための取組が行われている。令和2年度は全府省庁で電子調達システムが導入され、オンライン利用率の向上がみられた。令和2年12月には、全府省庁に共通して適用される会計手続における書面等の規定が改正され、見積書や請書等の徴取が電子メール等でも可能となった。
  • 再生可能エネルギー比率の高い電力調達に関する取組の強化として、環境省、防衛省などで既に取組を進めているほか、電力調達を実施している全府省庁において調達手続が開始されており、実施件数の増加が見込まれる。調達改善の観点からは、競争性確保やコスト抑制が重要であり、引き続き、環境省と連携し、ノウハウの共有化を行うことが必要である。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -デジタル庁設置により、民間ノウハウや人材活用が進み、情報システム調達の競争性や経済性の更なる向上が期待される。

48回

(令和4年(2022年)3月25日)

  • 「令和3年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 令和3年度調達改善計画における共通的な取組は、①調達改善に向けた審査・管理の充実、②地方支分部局等における取組の推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 一者応札案件について個別に要因分析した一覧を、事業者への情報提供等のため公表したり、入札監視委員会等の参考資料とする等の取組がある。
  • 調達事務に関しては、見積書や請求書等への押印を不要としたり、入札説明会をオンライン開催するなどの対応が見られる。また、原則電子契約とする旨を入札説明書へ記載する取組や契約件数が多い事業者に個別に電子調達システムの利用について声掛けする等の取組がある。
  • 行政改革推進本部事務局は、デジタル庁などの各府省庁と連携し、調達事務のデジタル化を推進していくにあたり有効なノウハウ収集や共有を図ることが必要である。
  • 行政改革推進本部事務局は、令和3年度下半期からは、地方を含む実務担当者を対象に、優良取組において実際に作成、活用している様式等の閲覧やダウンロードができる電子掲示板を開設している。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -再生可能エネルギー比率の高い電力調達は、「2050年カーボンニュートラル」実現に向け各府省庁の取組が進められるなかで、行政改革推進本部事務局では、競争性やコスト抑制等のノウハウ収集と共通を行うことが重要である。

50回

(令和4年(2022年)10月21日)

  • 「令和3年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 電力調達に関して、各府省庁では、早期の入札実施や幅広い声掛けの実施等により、競争性の確保に努め、700件で再生可能エネルギー比率30%以上の電力調達を実現し、電力調達全体の総予定使用電力量の約25%を再生可能エネルギー電力で調達した。
  • 令和2年12月に、法令により全府省庁に共通して適用される会計手続において書面等による手続の規定が改正され、多くの府省庁にて、押印を省略した見積書や請書等を電子メールにより徴取している。
  • 今後の取組として、「デジタル完結・自動化原則」6を踏まえて、調達事務手続をデジタルで完結させ、発注者及び受注者の負担軽減や事務の効率化を図ること、また、「オンライン利用率引上げの基本計画」7に基づき、デジタル庁を中心に、電子調達システムの利用率の向上を図ることが必要である。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -調達事務のデジタル化については、各府省庁において、年度ごとに電子調達システムの利用率の目標を定めるなどして、取組を更に進めていく必要がある。

52回

(令和5年(2023年)3月31日)

  • 「令和4年度上半期調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。
  • 令和3年度調達改善計画における共通的な取組は、①調達改善に向けた審査・管理の充実、②調達事務のデジタル化推進、③電力調達・ガス調達の改善、とされた。
  • 競争参加者増加取組に関して、事業者への情報発信を幅広く行うため、「調達ポータル」サイトを活用するなどの取組が見られる。また、支払いを履行後一括まとめてではなく、事務負担に配慮しながら分割して行うなど、新規事業者の参入可能性を高める取組も見られた。
  • 令和4年に入り国際的な原材料価格の上昇に加え、円安の影響などにより、エネルギー価格が高騰した。このため、一般競争入札を行っても応札者がいないことから、最終保障供給契約による随意契約となった事例や、一般競争入札によって契約したが契約途中で単価等の増額変更契約を余儀なくされた事例など、コスト削減よりも電力の安定受給を優先せざるを得なかった事例が複数見られた。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -自己評価において、具体的な事例の記載をしていない府省庁や前年度から同一の記載を続けている府省庁は、PDCAサイクルを効果的に回していくためにも、個別案件に基づき具体的に記載するなど、取組の進捗をわかりやすく記載することが重要である。

53回

(令和5年(2023年)10月27日)

「令和4年度調達改善の取組に関する点検結果(案)」が審議された。

  • 実践的ノウハウの共有に関して、行政改革推進本部事務局は研修動画等のコンテンツを充実させている。
  • ベンダーロックインを予防するための方策等について、行政改革推進本部事務局は、デジタル庁と適切に連携することが重要である。また、電子入札や電子契約と併せて、他のデジタル技術を活用した調達事務も視野に入れておくことが重要である。
  • 委員から、例えば次の意見が出された。
    -行政改革推進本部事務局は、既に定着し成熟しつつある取組は各府省庁で自律的に進めることとするなど既存の取組を整理し、推進するテーマを検討していくことが重要。

 

(3)公正取引委員会

公正取引委員会とは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、独占禁止法という。)、及びその補完法である下請代金支払遅延等防止法(いわゆる、下請法)を運用するために内閣総理大臣の所轄に属する行政委員会8であり、他から指揮監督を受けることなく独立して職務を行う。入札談合などの独占禁止法に違反すると疑われる事実が公正取引委員会に報告あった場合には、必要な調査をし(関係者に出頭を命じて審尋する、帳簿書類を提出させ検査する、立入検査をする等)、違反する事実があると思料するときは、職権で当該行為を排除するために必要な措置を命じることができる。また、課徴金を課したり、公正取引委員会の告発により法定刑を論じることとなる。

公正取引委員会は、独占禁止法の目的である、公共調達により行われる適正な競争を守ることで、日本経済の健全な発展を促進することに貢献している。

独占禁止法

(目的)

第1条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

第二十七条の二 公正取引委員会は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

一 私的独占の規制に関すること。

二 不当な取引制限の規制に関すること。

三 不公正な取引方法の規制に関すること。

四 独占的状態に係る規制に関すること。

五 所掌事務に係る国際協力に関すること。

六 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、公正取引委員会に属させられた事務

 

公正取引委員会は、1994年7月に、「公共的な入札に係る事業者及び事業団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(最終改正2020年12月)9を公表した。公正取引委員会の独占禁止法運用の経験に基づいて、入札に係る事業者等の主要な活動類型ごとに、「原則として違反となるもの」、「違反となるおそれがあるもの」、「原則として違反とならないもの」の参考例として、例えば次のような行為を示している。

原則として違反となるもの

入札に参加しようとする事業者が、当該入札について有する受注意欲、営業活動実績、対象物件に関連した受注実績等受注予定者の選定につながる情報について、それら事業者間で情報交換を行い、又はそれら事業者を構成員とする事業者団体が、かかる情報について、収集・提供し、若しくはそれら事業者間の情報交換を促進すること。

事業者が共同して又は事業者団体が、過去の入札における個々の事業者の指名回数、受注実績等に関する情報を、今後の入札の受注予定者選定の優先順位に係る目安となるような形で整理し、入札に参加しようとする事業者に提供すること。

受注予定者以外の入札参加者が、受注予定者等から入札価格に関する連絡・指示等を受けた上で、受注予定者が受注できるようにそれぞれの入札価格を設定すること。

事業者が共同して又は事業者団体が、受注予定者に他の入札参加者等に対して業務発注、金銭支払等の利益供与をさせること。

事業者が共同して又は事業者団体が、入札に参加を予定する事業者に対して、受注予定者の決定に参加するよう若しくは決定の内容に従うよう要請、強要等を行い、決定に参加・協力しない事業者に対して、取引拒絶、事業者間若しくは事業者団体の内部における差別的な取扱い等により入札への参加を妨害し、又は決定の内容に従わないで入札した事業者に対して、取引拒絶、事業者間若しくは事業者団体の内部における差別的な取扱い、金銭の支払等の不利益を課すこと。

事業者が共同して又は事業者団体が、入札に係る最低入札価格等を決定すること。

事業者が共同して又は事業者団体が、入札に係る受注の数量、割合等を決定すること。

 

違反となるおそれがあるもの

事業者間で又は事業者団体が、各事業者に対して、指名競争入札に係る指名を受けたことや入札への参加の予定について報告を求めること。

共同企業体により入札に参加しようとする事業者が、単体又は他の共同企業体により当該入札に参加しようとする事業者との間で、当該入札への参加のための共同企業体の結成に係る事業者の組合せに関して、情報交換を行い、又は事業者団体が、かかる情報交換を促進すること。

事業者団体が、構成事業者から、入札による受注に応じた特別会費、賦課金等を徴収すること。

入札の対象となる商品又は役務の価格水準や価格動向に関する情報について、発注者からその予定価格の積算に資するための情報提供の依頼を受ける等して、当該入札に参加しようとする事業者間で情報交換を行い、又は事業者団体が、それら事業者との間で情報を収集・提供し、若しくはそれら事業者間の情報交換を促進すること。

 

原則として違反とならないもの

事業者が、指名競争入札において、指名以前の段階で、制度上定められた発注者からの要請に応じて、他の事業者や事業者団体と連絡・調整等を行うことなく、自らの入札参加への意欲、技術情報(類似業務の実績、技術者の内容、当該発注業務の遂行計画等)等を発注者に対して説明すること。

指名競争入札において、指名を受けた事業者が、他の事業者や事業者団体と連絡・調整等を行うことやそれらから要請等を受けることなく、自己の事業経営上の判断により、入札を辞退すること。

事業者が共同して又は事業者団体が、発注者が公表した積算基準について調査すること(事業者間に積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)

中小企業者の団体が、構成事業者の入札一般に係る積算能力の向上に資するため、標準的な費用項目を掲げた積算方法を作成し、又は所要資材等の標準的な数量や作業量を示すこと(事業者間に積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)

事業者団体が、関連する官公需の全般的な動向の把握のために、構成事業者から官公需の受注実績に関して個別の受注に係る情報を含まない概括的な情報を任意に徴し、又は発注者が発注実績若しくは今後の発注予定に関して公表した情報を収集し、関連する官公需全般に係る受注実績又は今後の需要見通しについて個々の事業者に係る実績又は見通しを示すことなく概括的に取りまとめて公表すること。

事業者団体が、官公庁や民間の調査機関等が公表した入札に関する一般的な情報(発注者の入札に係る過去の実績又は今後の予定に関する情報、入札参加者の資格要件又は指名基準に関する情報、労務賃金、資材、原材料等に係る物価動向に関する客観的な調査結果情報等)を収集・提供すること。

事業者団体が、構成事業者から、財務指標、従業員数等経営状況に関する情報で通常秘密とされていない事項について、情報を任意に徴し、これに基づいて平均的な経営指標を作成し、提供すること。

入札に参加しようとする事業者を構成員とする中小企業者の団体が、構成事業者の情報収集能力の不足を補うため、当該入札に関する対象物件の内容、必要な技術力の程度等について発注者が公表した情報を収集・提供すること(受注予定者の決定につながるようなことを含まないものに限る。)。

中小企業者の団体が、入札に参加するための経常的な共同企業体としての資格申請を構成事業者が行おうとする場合に、その求めに応じて、共同企業体の構成員の組合せに係る過去の客観的な事実に関する情報を提供すること。

事業者が、入札に参加するための共同企業体の結成に際して、相手方となる可能性のある事業者との間で、個別に、相手方の選定のために必要な情報を徴し、又は共同企業体の結成に係る具体的な条件に関して、意見を交換し、これを設定すること(受注予定者の決定につながるようなことを含まないものに限る。)。

中小企業者の団体が、経常的な共同企業体の運営に関する一般的な指針(構成員の分担業務実施のための必要経費の分配方法、共通費用の分担方法等)を作成し、構成事業者に提供すること。

事業者が共同して又は事業者団体が、本指針の内容にのっとって、入札に係る事業者及び事業者団体の活動と独占禁止法との関係について、一般的な知識の普及活動を行うこと。

事業者が共同して又は事業者団体が、入札による契約について、その確実な履行、下請取引の適正化や操業の安全の確保の必要性に関する一般的な啓蒙を行い、又はそのために技術の動向や入札制度若しくは関係法令の内容について調査し、一般的な知識の普及活動を行うこと(特定の入札に係る情報交換、指導、要請等の活動につながることのないものに限る。)。

事業者が共同して又は事業者団体が、入札制度一般の内容や運用に関して、国、地方公共団体等に対して、要望又は意見の表明を行うこと。

事業者が、発注者に対して、特定の入札に関係なく、技術に関する情報の一般的な説明を行うこと。

 

公正取引委員会は、このような指針により入札談合といった独占禁止法等違反を分かり易く示すとともに、違反と疑わしい事実があった場合の申告10も受付けるなどにより、公共調達に係る事業者等の適正な活動に役立てている。

 

2. 府省庁単位で実施されるチェック(ガバナンス)

(1)契約監視委員会等

「随意契約の適正化の一層の推進について」(2007年11月2日付け公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議決定)において、随意契約の適正化推進に当たり、「随意契約見直し計画」の対象となっている契約について地方支分部局を含めた府省全体の状況を本府省において定期的に把握し、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(2001年3月9日閣議決定)」を踏まえ、各府省が発注する工事について進められている入札契約の過程に第三者の意見を反映させる仕組みを、工事以外の契約にも導入することとされた。

これにより、全府省庁に第三者機関としての契約監視委員会等が設置され、公共工事に限らず、物品・役務等を含む全ての入札契約・随意契約が審議の対象となった。さらに、本府省のみならず、相応の発注規模の地方支分部局にも原則として設置され、一者応札などは重点的に監視し、第三者機関の審議概要は公表されることとなった。

例えば、外務省の契約監視委員会11は、年に4回開催されているが、審議対象となった契約全件が次の6区分で、かつ、それぞれの区分で、件名、契約締結日、契約相手方の名称、契約相手方の住所、法人番号、応札者数、予定価格、契約金額、落札率、備考(契約種類、主管局課、その他)が公表されている。

一般競争方式(政府調達に関する協定適用対象)

企画競争に基づく随意契約方式

一般競争方式(政府調達に関する協定適用対象以外)

公募に基づく随意契約方式

指名競争方式

その他の随意契約方式

 

このような開示状況(内容)は、どの府省庁も大きな差はない。各府省庁の契約監視委員会等は、少額随意契約などを除いた範囲ではあるが、契約全体の概要、個別契約の審議を実施している。

なお、独立行政法人等については、各府省の独立行政法人評価委員会において、入札・契約に係る事務の適正執行について厳正に評価することとされた。現在のように各独立行政法人等に「契約監視委員会」が設置されたのは、2009年11月17日の閣議決定「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」において、競争性のない随意契約の更なる見直し徹底と、一般競争入札等においても真に競争性が確保されているかなどを監事・外部有識者により構成する契約監視委員会において点検・見直しする要請があって以降である。

(2)行政事業レビュー

行政事業レビューは、各府省庁に設置される「行政事業レビュー推進チーム」が実施に取組む。その統括責任者は官房長(官房長不設置の省庁では総括審議官同等クラス)、副統括責任者を会計課長とし、EBPM12の観点から関係者が連携できる体制を組むこととされている。また、外部有識者から、「同じ予算でより多くの成果を引き出す工夫は無いか」、「より少ない予算で同等以上の成果を引き出す工夫は無いか」、「そもそも国費投入の必要性はあるか」等の観点からの点検も受けている。

日本公認会計士協会の「公共調達の課題と方向性」では、行政事業レビューについて、公共調達の観点から、「行政事業レビューとは、各府省自らが自律的に、概算要求前の段階において、原則全ての事業について、予算が最終的にどこに渡り(支出先)、何に使われたか(使途)といった実態を把握し、これを国民に明らかにした上で、外部の視点も活用しながら、過程を公開しつつ事業内容の効果の点検を行い、その結果を予算の概算要求や執行等に反映させる取組」13と説明している。

「行政事業レビュー実施要領」14では、外部有識者に点検を受ける事業の選定には基準があるが、そのひとつに「入札等において一者応札・一者応募となった契約又は競争性のない随意契約に基づいて、前年度に、一社当たり10億円以上の支出を行った支出先(国庫債務負担行為等による場合は、契約総額が10億円以上となった契約先)を含む事業」ともある。

外部有識者も含めた点検が事業単位ではあるものの、このように、実質的に競争の働かなかった契約から事業を選定する視点には、個別契約単位へのチェックに加え、国としての公共調達に対する一定のチェック機能が働いていると考えられる。

① 行政事業レビューに使用されるシートに記載される情報

行政事業レビューでは、公共調達(入札や契約)に関連する次の情報が提示され、この情報を含めて点検される形で、公共調達に関するチェックがなされている。

(資金の流れ)

各府省庁から、どのような事業者にどの程度の資金が流れているかが記載されるが、その情報と合わせて、次の別を記載する。

  • 一般競争契約(最低価格)
  • 一般競争契約(総合評価)
  • 指名競争契約(最低価格)
  • 指名競争契約(総合評価)
  • 随意契約(企画競争)
  • 随意契約(公募)
  • 随意契約(少額)
  • 随意契約(不落・不調)
  • 随意契約(その他)
  • 補助金等交付(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項)
  • 運営費交付金交付(独立行政法人通則法第46条第1項)
  • 国庫債務負担行為等(令和2年度以前に国会の議決を受けた「財政法」第14条の2第3項に規定する継続費及び同法第15条第5項に規定する国庫債務負担行為に係る令和4年度予算における歳出化分)
(支出先上位10者リスト)

支出先1者に係る支出額の順に、必要事項が記載される。この必要事項には、上記(資金の流れ)に記載の契約形態に加えて、入札者数、落札率、一者応札・一者応募又は競争性のない随意契約となった理由及び改善策などが記載される。これと同様の情報は、国庫債務負担行為等による契約先上位10者リストにも記載される。

(3)内部監査(会計監査)

財務省通知では、公共調達の適正化に向けて、入札及び契約の適正化、再委託の適正化などに留意して、内部監査を実施することを指示している。また、財務省では、各府省等が内部監査として実施する会計監査の充実・強化を図るために、外部委託による民間専門家からの助言や各府省等の協力を仰ぎ、組織の在り方、トップのあるべき姿勢等、中長期的に目指すべき方向性も含めた一連の会計監査のモデルプランとして、「内部監査(会計監査)充実・強化のためのガイドライン」(平成27年4月 財務省主計局 財務省理財局)15(以下、ガイドラインという。)を定めている。

このガイドラインでは、会計監査を「会計監査機構16が、被監査部署の会計経理と予算執行について、遵守すべき会計法令等に基づき、適正性の確保がなされているか情報を収集して、会計経理の正確性及び合規性、予算執行の経済性及び効率性並びに有効性等の観点から評価を行い、もって、会計経理と予算執行の一層の適正化及び決算報告の信頼性の確保を図ることを目的として実施される内部監査」と定義している。個別の契約や内部統制面を含めたチェック態勢なども含めて、公共調達の公平性や透明性、合規性などの視点から内部監査(会計監査)が行われる。

① 根拠法令

各府省庁の組織令等を根拠としている。例えば、財務省においては以下である。

(財務省組織令)

第二節 内部部局 第三款 課の設置等 第一目 大臣官房

(会計課の所掌事務)

第十六条 会計課は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 財務省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関すること。

 

(財務省組織規則)

(監査室及び管理室並びに会計調査官、予算企画専門官及び契約専門官)

第四条 会計課に、監査室及び管理室並びに会計調査官、予算企画専門官及び契約専門官それぞれ一人を置く。

2 監査室は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 財務省の所掌に係る経費及び収入の決算並びに会計の監査に関すること。

二 国税収納金整理資金の管理に関すること。

3 監査室に、室長並びに上席会計監査官一人及び会計監査官二人を置く。

4 上席会計監査官は、命を受けて、財務省の所掌に係る会計の監査を実施し、及び会計監査官の行う事務を整理する。

5 会計監査官は、命を受けて、財務省の所掌に係る会計の監査を実施する。

 

② 独立性(第三者性)の担保について

一般に、内部監査を担当する部署及び所属職員は、他の部署等からの干渉や制約を受けることなく、公正不偏な態度で客観的に会計監査を実施することが求められる。内部監査を担当する会計監査機構は、各府省内において会計担当部門との兼務などにより独立的な立場が保持できない可能性がある。この点についてガイドラインでは、各組織の事務・事業に係る予算執行全体を客観的な視点から統括することができる立場にある者、すなわち、組織の長もしくは少なくとも会計担当課長より上位の職にある者を関与させるとともに、会計監査規程等を整備することなどの必要な策を講じることによって監査実施上の客観性を確保できるよう努めるよう要請している。

③ 会計監査機構

会計監査機構の全体概要については、会計検査院の平成13年度決算検査報告内「特定検査対象に関する検査状況」において「第16 国の機関が内部監査として実施する会計監査の状況について」17が報告され、触れられている。会計監査機構として単独型、補完型、分担型、複合型があることや、当時の監査担当職員数、監査マニュアルの設置状況などが調べられている。なお、以降、各省庁の内部監査体制について、横並びに調査した報告は、会計検査院検査報告データベースからは検索できなかった。

④ 内部監査結果

平成19年度決算検査報告(会計検査院)の「府省等が締結している随意契約に関する事項について」18では、内部監査の結果は多くの府省庁でイントラネット等に掲示され職員の閲覧ができる状況にあるとしている。しかしながら、各府省庁のホームページからは、一部の府省庁を除き、公共調達に関する内部監査体制や内部監査結果の検索はできない。なお、公表されている中から、厚生労働省と法務省の例を紹介する。

(厚生労働省)

厚生労働省では、公共調達審査会19が設置され、一般会計、労働保険特別会計労災勘定、労働保険特別会計雇用勘定、労働保険特別会計徴収勘定、年金特別会計業務勘定の別に、毎年度4回の審査会が開催され、個別の審議案件ごとに審議結果(所見)が公表されている。また、8つの地方厚生局、47の都道府県労働局においても同様に公共調達審査会が年数回開催され、その審議結果は各厚生局、労働局のホームページにおいて公表されている。

(法務省)

法務省では、2023年3月31日付けで、2022年度法務省会計監査の実施結果を公表している20。契約事務に関しては、次のような記載がある。

2.令和4年度の監査における重点項目

(1)契約事務

〇契約の適切性及び経済性・有効性等に関する監査契約を締結した案件について、契約の申請から支出の決定までの一連の処理を、契約手続全般の適切性のほか、契約内容の正確性、合規性及び経済性の観点からの監査

4.監査の実施結果

(1)契約事務

ア 監査手法

令和3年度及び令和4年度に締結した契約を対象として、任意に抽出した案件について、関係書類に基づき、担当者に対しヒアリングを行うなどして、監査を実施した。

イ 指導事項

監査の結果、多くの場合、会計法令に基づき適正に契約手続が行われている状況を確認したものの、関係書類の作成等が適切に行われていない事案も認められたため、該当庁に対して、主に以下の指導を行った。

  • 調達伺いが作成されていない、又は、調達伺いは作成されているが、その中で調達の目的、必要性等が記載されておらず、それらが不明確であったことから、今後は、調達伺いを作成し、調達の目的、必要性等を明確にすること。
  • 契約書の記載内容について、民法の一部を改正する法律等の施行に伴う変更が反映されていなかったことから、今後は、適正に記載すること。
  • 契約金額が60万円を超える少額随意契約案件について請書を徴取していなかったことから、今後は、必ず徴取すること。
  • 契約金額が200万円を超える契約について、検査調書が作成されていなかったことから、今後は、契約金額が200万円を超える契約に関しては、検査調書を作成すること。

 

また、監査対象庁名称も公表されており、大臣官房会計課実施分としては、法務本省に加え、法務局10庁、検察庁15庁、矯正官署39庁、更生保護官署16庁、入国管理官署5庁が、大臣官房施設課実施分としては、法務本省に加え、法務局9庁、検察庁12庁、矯正官署40庁、更生保護官署1庁、出入国在留管理官署5庁の名称が記載されている。なお、厚生労働省と異なり、調達に関して検討した案件名称や審議結果などの情報は確認できなかった。また、それぞれの地方官署単位での公共調達に関する会計監査の状況も法務省HPからは確認できなかった。

 

3. 最後に

国の公共調達に対するチェックは、府省庁(国)全体の視点からは会計検査院や行政改革推進会議などにより、各府省庁の視点からは内部監査や契約監視委員会などにより実施されている。会計検査院では、各府省庁の個別事業や個別契約に対する検査も実施されている。このようなチェックは、その内容や位置付けによっては、専門性や情報の非対称性などから、国民が直接関わることを代替する形で外部有識者などを関わらせることが重要である。併せて、結果を国民に開示することでチェックの相当性等の評価ができる。例えば内部監査(会計監査)は、こういう面で、より積極的に結果を、一定期間継続して公表すべきではないか。

以上

 

1 https://www.gyoukaku.go.jp/chotatsu/img/konkyo.pdf

2 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chotatu/pdf/kaizentorikumi_honbun.pdf

3 2009年1月「一括調達の運用ルール」(2009年1月16日各府省等申合せ)により、中央省庁等を7つの調達グループ(合同庁舎単位4グループ、複数府省共同単位2グループ及び府省単位1省)に分け、グループ単位を中心として一括調達を行うこととされている。

4 随意契約を締結する前に、価格の見積根拠等の精査を通じて、調達案件に適切な仕様及び価格となるようにする行為

5 https://www.gyoukaku.go.jp/singi/gskaigi/kaigi.html

6 書面、目視、常駐、実地参加等を義務付ける手続・業務について、デジタル処理での完結、機械での自動化を基本とし、行政内部も含めエンドツーエンドでのデジタル対応を実現すること。国・地方公共団体を挙げてデジタルシフトへの組織文化作りと具体的対応を進めること。

7 https://www.digital.go.jp/about/online-basic-plan/

8 監督官庁等から独立してその職権を行使することを法令により定められた機関

9 https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/kokyonyusatsu_images/kokyonyusatsu.pdf

10 https://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/shinkoku.html

11 https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/chotatsu/kki_giji/index.html

12 EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。 証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること。

13 日本公認会計士協会「公共調達の課題と方向性」(https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/0-14-0-2-20210325.pdf) 13ページ

14 https://www.gyoukaku.go.jp/review/img/R05jisshiyouryou0515.pdf

15 https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/guideline/guideline.pdf

16 各府省等の組織令等に基づいて会計監査を実施する組織

17 https://report.jbaudit.go.jp/org/h13/2001-h13-0756-0.htm

18 https://report.jbaudit.go.jp/org/h18/2006-h18-0733-0.htm

19 https://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/zuikeisinsa/koukyo_shinsa.html

20 本稿発行時には2022年度(令和4年度)の結果は法務省HPから削除され、2023年度(令和5年度)の結果に更新されている。2023年度(令和5年度)の結果は、次のアドレスにある。https://www.moj.go.jp/content/001416498.pdf

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