SAPトランスフォーメーションの価値を引き出すために経営幹部が実行すべき3つのステップ

はじめに

経営陣による戦略的なチェンジマネジメントによって、テクノロジー導入が、ビジネス変革へと変わる

デジタルトランスフォーメーション（DX）はこの10年間のバズワードとなっている。それは大規模なSAPトランスフォーメーションと組み合わせて使用されることが多い。広く使用されている用語だが、完全に理解されているとはいいがたい。でも安心していただきたい‐私たちは、ここでその定義を明確にしようとしているのではない。私たちはこの言葉の中でしばしば過小評価されている側面、つまり人材の側面を明らかにしたいと考えている。人材がデジタル変革から取り残されると、デジタル戦略とテクノロジー投資が整合していても、企業価値が9%も低下するリスクがあるからである。[1]

ERPの本格的な変革を経験したことがある人ならば、デジタル変革の複雑さとそのビジネスへの影響は説明するまでもないだろう。それは片手間で行われるものではなく、経営者が隅々まで意識を払った上で行われるべきものだ。デロイトでは、デジタルトランスフォーメーションにおける投資収益率を高めるためにトップクラスの企業が行っている、他の企業とは異なる取り組みについて調査した。本調査によると、「戦略とアクションの間のつながりが、企業がDXによって最大の価値を引き出す力を決定する要因である」[2]。 最も意味のある組み合わせは、デロイトがデジタルトリフェクタと呼んでいる３つの組み合わせである。すなわち「①明確なデジタル戦略の存在、②特定の技術投資が調整、設定されていること、そして③組織が動員され変化を管理する準備ができている」ことである[3]。

こでは、SAPトランスフォーメーションにおける経営陣の役割と、彼らが戦略的変革活動において物事を動かしリードする方法について説明する。『デロイト2023グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド』（Deloitte 2023 Global Human Capital Trends [4] ）の調査結果は、変革的なリーダーシップ・スキルがこれまで以上に重要であるにもかかわらず、それを身につけることがますます困難になっていることを示している。回答者の94%は、組織の成功にはリーダーシップ能力とその有用性が重要または非常に重要であると考えているが、破壊的でボーダーレスなこの世界でマネジメントをするために必要な能力を、組織のリーダーが現在持っていると考えているのはわずか23%だ。

我々が「テクノロジーを活用したビジネス変革」の中で最も大規模だと考えるSAPの導入は、テクノロジーそのものを超え、組織の戦略の実現を加速することを目指している。多くの場合、ビジネスモデル（新製品、新サービス、新市場）またはオペレーションおよびエンタープライズモデル（ITランドスケープの単純化、マスタデータのセットアップの合理化、プロセスの調和など）のいずれかの変革に関連している。それにもかかわらず、ビジネス変革と呼ばれるSAPの実装は、その価値を無駄にしてしまうことがしばしば見られる。更新・自動化されたプロセスを備えた新しいコアSAPを実装することで、魔法のようにビジネス変革の価値が湧き出てくると思ってしまうからだ。ビジネス変革は、プロジェクトの後半によく実施されるチェンジマネジメントによって解決されるのではなく、経営幹部の活動によってのみ解決される。

目次

はじめに

注目されるべき経営者の役割

人材面まで考慮したビジネスケースを作成する

経営幹部間のリーダーシップ連携

なぜ、HiS（ハイインパクトセッション）が有効なのか

変革型リーダーシップ と ラインリーダーシップを柔軟に使い分ける

リーダー同志の対話は、可能な限り密に

スタートの段階から人的要素を適切に取り入れる

デロイト・ヒューマン・キャピタルの窓口

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