調査レポート

間接機能比率および人材流動性の高まり、女性管理職比率の増加が明らかに

要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査2023・2024年版を発表

企業の要員・人件費の生産性向上機会の発見を目的として、アンケート調査を元に人事、財務・経理、情報システム(IT)といった間接機能、および一部のフロント・ミドル機能の生産性ベンチマーク調査を実施。本調査は、2012年より実施し、今回で6回目となる。

デロイト トーマツ グループは、「要員・人件費の生産性」という観点に着目し、アンケート調査をもとに企業の人事、経理・財務、情報システム(IT)といった間接機能の効率性を分析した調査レポートを発表します。

 

■間接機能比率は前回比で増加

今回の調査では、企業における間接機能比率が参加企業全体の中位値で11.3%となり、前回調査(2021・2022年度版)より0.8ポイント増加しました。また、25%tileと75%tileの幅は7.6% - 18.7%となっており、前回調査の7.2% - 16.2%よりも拡大しました。前回調査の際にも、間接機能比率が高まっている傾向がみられましたが、その傾向が続いているものの、その内訳をみると、間接機能比率の高い企業と低い企業との差が大きくなっていることが伺えます。これは、コロナ禍以降、停滞から成長に転じることができた企業、引き続き効率化が求められる企業、コロナ禍でも成長を継続できた企業等、各社の直面している状況が異なっていることが一因として考えられます。一方で、過去5回の調査を通じてみると、間接機能比率の中央値は10%から11%が中位値であることには変わりはなく、競争力のある間接機能組織を検討する際の一つの目安となる水準であると言えます。

 

■人材流動性が増加

全正社員に占める新卒採用者の割合は、前回調査に引き続き低下傾向(前々回3.1%→前回2.8%→今回2.6%)にありますが、一方で、全社に占める中途採用者の割合は前回調査の1.5%から3.1%と増加し、自己都合退職率も前回の2.4%から3.4%に増加しました。一つの会社で働き続けることにこだわらず、専門性を高めることでキャリア形成を行っていく価値観を持った世代(ミレニアル世代やZ世代)が増えてきたことから、近年自己都合退職率は増加傾向にありましたが、コロナ禍を経て、それが加速したように見える結果となっています。

 

■人的資本経営に関する取り組みの推進

女性管理職比率は6.0%(前回4.0%)、外国籍社員比率は1.0%(前回0.8%)と向上しており、また、正社員一人当たり教育研修費が33.2千円/人(前回24.6千円/人)と増加しました。これらは、各社のDEIや育成に対する取り組みを表しているものと思われますが、その根本には、昨今の人的資本経営への関心の高まりがあることが推察されます。しかしながら、こうした取り組みはまだ十分に進んでいるとは言えないため(※)、国際競争力という観点においては、さらに取り組みを強化していくことが必要であると考えられます。

※OJT以外の人材投資(GDP比):アメリカ2.08、イギリス1.06、日本0.1(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」)

※女性管理職比率:アメリカ41.1%、イギリス36.8%(内閣府男女共同参画局「女性活躍に関する基礎データ(2022年7月19日)」

 

【調査結果へのコメント】

デロイト トーマツ グループ パートナー 山本 奈々

前々回の調査より、人的資本経営に関する指標を加えた調査を行っていますが、毎回数値の向上が見られており、人的資本経営への関心の高まりや、取り組みの推進状況が伺われる結果となっています。

また、間接機能比率に関しては、その中央値は多少の増減はありつつ大きな変化はありませんが、これまでは主に“効率”を求められてきた間接機能について、“高度化”を志向する企業も増加してきており、そうした志向性の違いも今回の分散の大きさに繋がっているのでは、と思料します。いずれにせよ、間接機能比率については、絶対の適正値は存在せず、自社にとっての最適解をトップダウン・ボトムアップの両面から導き出すことが必要となります。本調査を活用いただきながら、自社なりの最適解をご検討いただければと思います。

【調査概要】

2012年より実施し今年度で6回目となる本調査は、企業の要員・人件費の生産性に関する有用なベンチマークデータとして活用されることを目的に、企業に対してWebのアンケート形式で調査を行い、集計データをもとに日本国内で活動する企業の間接部門の人的生産性を分類・整理したものです。調査内容には企業の人的生産性を計る指標の一つとして、一人当たりの生産性および人件費効率、企業の直間比率、管理スパン、人事/経理・財務/ITの各機能効率等の指標データ、業種・規模別の指標データなどが含まれます。

 

調査形式:   Webアンケート方式

調査対象年度: 直近決算期(2022年度) 

調査時期:   2023年7月31日~2023年9月30日

参加企業数:  187社

参加企業属性:

本調査は、業種、売上規模(単体売上高)、従業員規模(正社員数)の3つのカテゴリーにおいて参加企業の回答を集計しています。業種区分は日経36業種をもとに弊社独自で設定しており、製造業・非製造業の分類は下記の通りです(一部複数に該当する企業含む)。なお、今回の参加企業のうち、売上規模(単体売上高)が1000億円以上の企業は73社、従業員規模(正社員数)が1000名以上の企業は95社となります。

 

<製造業(104社)>

建設、食品(食品・飲料)、プロセス、化学工業、医薬品(医薬品・製薬)、機械・金属製品、電気機器・精密機器、自動車・自動車部品、その他製造業

 

<非製造業(85社)>

総合商社・専門商社、小売業、金融業、運輸・倉庫業・不動産業、通信・通信サービス・インターネット付帯サービス、サービス業

本調査に関するお問い合わせ

<本調査に関する企業の方からの問い合わせ先>
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ヒューマンキャピタルディビジョン
Email: hc_benchmark@tohmatsu.co.jp
 

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