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第8次医療計画の策定が始まります

令和6年度から6年間の計画となる第8次医療計画のポイント

令和6年度から6年間の計画となる第8次医療計画の策定に向けて、令和5年3月31日厚生労働省医政局より通知が発出されました。主な改定事項について整理しています。

医療計画について

医療計画は、医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携を推進するため、昭和60年の医療法改正により導入され、都道府県の二次医療圏ごとの病床数の設定、病院の整備目標、医療従事者の確保等を記載することとされました。平成18年の医療法改正により、疾病・事業ごとの医療連携体制について記載されることとなり、平成26年の医療法改正により「地域医療構想」が記載されることとなりました。その後、平成30年の医療法改正により、「医師確保計画」及び「外来医療計画」が位置づけられることとなりました。

現在は、第7次医療計画(平成30年度~令和5年度)に沿って、地域の実情に応じた医療提供体制の確保が進められています。

また、令和6年度から6年間の計画となる第8次医療計画の策定に向けて、令和5年3月31日付で厚生労働省医政局より医療計画に関連するいくつかの通知が発出されました。

令和3年6月より開催した、第8次医療計画等の見直しに関する検討会における意見のとりまとめ等を踏まえ、国は、医療法第30条の3第1項の規定に基づき、医療提供体制の確保に関する基本方針(以下「基本指針」という。)の改正を行うとともに、「医療計画作成指針」(以下「指針」という。)見直しが行われました。

都道府県は、医療法第30条の4第4項の規定に基づき、5疾病・5事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項等を医療計画に定めることとされています。医療計画の作成にあたっては、基本方針に即して、指針及び「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制の構築に係る指針」(以下「疾病・事業及び在宅医療指針」という。)を参考とし、かつ、医療提供体制の現状及び今後の医療需要の変化を含む地域の実情に応じて、関係者の意見を十分踏まえた上で行うこととされています。

第8次医療計画の記載事項に追加

令和3年の医療法改正により、第8次医療計画から医療計画の記載事項として、新興感染症への対応に関する事項が追加され、医療連携体制に関する事項については、5事業に加え新興感染症発生・まん延時における医療の6事業となりました。なお、5疾病に加えることとしないものの、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病(CKD)、ロコモティブシンドローム、フレイル、肺炎、大腿骨頸部骨折等については、現状を把握した上で、その対策については健康増進施策等関連施策と調査をとりながら講じることが必要であるとされています。

医療計画指針における主な改正事項

第8次医療計画の全体について

  • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りとなった地域医療の様々な課題に対応するとともに、人口構造の変化への対応を図ること。
  • 令和3年の医療法改正により新たな事業として新興感染症への対応に関する事項を追加すること。
  • 第7次計画期間中に追加した「医師確保計画」「外来医療計画」(計画期間はいずれも3年間)についてもそれぞれのガイドラインに基づき第8次医療計画の策定と併せて見直しを行うこと。その際、二次医療圏の設定について先行して議論を行うこと。

着実に取組を推進 ―地域医療構想―

  • これまでの基本的な枠組み(病床の必要量の推計・考え方など)を維持しつつ、毎年度、対応方針の策定率を目標としたPDCAサイクル通じて地域医療構想を推進することとし、策定率と地域医療構想調整会議における資料や議事録など協議の実施状況について公表を行う等、着実に取組を推進。
    ※2025年以降の地域医療構想の取組のあり方については、2023~2024年度にかけて、中長期的課題について整理し、検討予定。

外来機能報告により得られたデータ活用 ―外来医療―

  • 外来医療計画の策定に当たり、「外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドラインに関する事項」の内容を踏まえ、見直しを行うこととされた。
  • 外来機能報告により得られたデータを活用し、紹介受診重点医療機関となる医療機関を明確化するとともに、地域の外来医療の提供状況について把握し、今後の地域の人口動態・外来患者推計等も踏まえ外来医療提供体制のあり方について検討を行うこと。

令和6年4月に医師の時間外・休日労働の上限規制が施行 ―医療従事者の確保等―

  • 医師確保計画の策定に当たり、三次医療圏及び二次医療圏ごとの医師の多寡を統一的・客観的に比較・検討するための医師偏在指標等について、「医師確保計画策定ガイドラインに関する事項」の内容に基づき見直しを行うこととされた。
  • 令和6年4月に医師の時間外・休日労働の上限規制が施行されることを踏まえ、医療機関における医師の働き方改革に関する取組の推進、地域医療構想に関する取組と連動させ、医師確保の取組を推進。
  • 医師確保計画の策定において基礎となる、医師偏在指標について精緻化等を実施。
  • 地域医療介護総合確保基金を積極的に活用し、病院と歯科診療所の連携、歯科専門職の確保、薬剤師(特に病院)の確保を進める。
  • 特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の養成と確保を推進する。

研修の受講の推進 ―医療の安全の確保等―

  • 医療提供施設における医療の安全を確保するための措置に係る現状及び目標として、病院等の管理者に医療事故調査制度についての理解を促す観点から研修の受講割合を盛り込むとともに、病院における医療安全の取組への客観的な評価により、当該取組を推進していくため、他の病院から医療安全対策に関して評価を受けている又は第三者評価を受審している病院数の割合を新たに項目へ盛り込むこととされた。
  • 医療安全支援センターについては、医療安全に関する情報提供、研修等求められる業務に即した項目を盛り込むとともに、相談対応の質の向上を図る観点から、研修を受講した相談職員数の割合を追加する。また、医療安全推進協議会については、その開催状況についても把握することとされた。

(注)「医療計画について」(令和5年3月31日厚生労働省医政局長通知、「第8次医療計画について」(令和5年度第1回医療政策研修会」(令和5年5月18日」より引用

疾病・事業及び在宅医療指針における主な新設事項

【5疾病】

全人的な緩和ケアを実施すること ―がんの医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、新興感染症の発生・まん延時における体制、早期発見(要精密検査とされた者への精密検査の実施)が追加された。また、がんと診断された時から患者とその家族等に対して全人的な緩和ケアを実施することされた。

発症後の速やかな搬送と専門的な診療が可能な体制 ―脳卒中の医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、発症後、速やかな搬送と専門的な診療が可能な体制、急性期以後の医療機関における診療及び在宅医療の強化、新興感染症の発生・まん延時における体制が追加された。

デジタル技術を含む新たな技術の活用 ―心筋梗塞等の心血管疾患の医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、デジタル技術を含む新たな技術の活用、急性期以後の医療機関における診療及び在宅医療の強化、新興感染症の発生・まん延時における体制が追加された。

治療、重症化予防が可能な体制 ―糖尿病の医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、糖尿病・慢性合併症の予防、治療、重症化予防が可能な体制、専門的治療が必要な患者への対応・急性合併症治療が可能な体制、他疾患の治療のために入院中の患者の血糖管理を行う体制が追加された。

「本人の困りごと等」への支援等と緊急時ニーズの対応 ―精神疾患の医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、平時の対応(「本人の困りごと等」への支援等)と、緊急時ニーズの対応(精神科救急など精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等)への対応が必要とされた。また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進することとされた。

 

【6事業】

高齢者救急への対応が可能な体制―救急医療の体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、医療機関の受診や救急要請の相談に対応することが可能な体制、高齢者救急への対応が可能な体制、新興感染症の発生・まん延時における救急医療が追加された。

実効性の高い業務継続計画(BCP)の策定―災害時における医療体制の構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、実効性の高い業務継続計画(BCP)の策定、災害時においても配慮を有する被災者(精神疾患を有する患者、障害者、小児、妊婦、透析患者等)に対応できる体制が追加された。

医師確保計画と連携、整合性をとること ―へき地の医療体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、へき地の医療計画の策定に当たっては、医師確保計画と連携、整合性をとることとされた。

ハイリスク妊産婦に対する医療の提供が可能な体制 ―周産期医療の体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、ハイリスク妊産婦に対する医療の提供が可能な体制、母子に配慮した周産期医療の提供が可能な体制、NICUに入室している新生児の療養・療育支援及び在宅ケアへの円滑な移行が可能な体制、医師の勤務環境の改善が可能な体制が追加された。

退院後の医療的ケア児等の緊急入院に対応できる体制― 小児医療の体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、福祉サービスの導入に係る支援等を行う体制、退院後の医療的ケア児等の緊急入院に対応できる体制、退院後のレスパイト等の受け入れ体制、医師の勤務環境の改善が可能な体制が追加された。

平時に都道府県と医療機関が協定を締結する仕組み等が法定化 ―新興感染症発生・まん延時における医療に係る指針

  • 令和3年の医療法改正により「新興感染症発生・まん延時における医療」が追加され、令和4年には感染症法改正により、平時に都道府県と医療機関がその機能・役割に応じた協定を締結する仕組み等が法定化された。(令和6年4月施行)国及び都道府県は、新型コロナウイルス感染症対応の教訓を踏まえ、当該対応を念頭に、まずはその最大規模の体制を目指す。協定締結等を通じ、平時から地域における役割分担を踏まえた感染症医療及び通常医療の提供体制の確保を図ることとされた。
  • 都道府県と医療機関との協定締結にあたって、基本的指針に則り病床関係、発熱外来関係、自宅・宿泊療養者・高齢者施設での療養者等への医療の提供関係、後方支援関係、人材派遣関係を定めることとされた。また、圏域設定については県内のそれぞれの地域において必要な診療を受けられるよう、従来の二次医療圏にこだわらず、例えば、重症患者や特別な配慮が必要な患者への対応等については県単位で確保するなど、地域の実情に応じて柔軟に体制を構築することとされた。

急変時の対応が可能な体制 ―在宅医療の体制構築に係る指針―

  • 医療体制の構築に必要な事項として、急変時の対応が可能な体制(急変時の対応)として、事前から入院先として想定される病院・有床診療所と情報共有を行う、旧返事対応における連携ルールを作成する等、地域の在宅医療に関する協議の場も活用し、消防関係者も含め連携体制の構築を進めることが望ましいとされた。

(注)「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日厚生労働省医政局地域医療計画課長通知(令和5年5月26日一部改正))より引用

病期や制度間の切れ目がない真の連携構築を

5疾病ごとに、急性期から回復期や維持期、生活期までの医療提供体制を構築するとされていることから、それぞれ地域における医療機関ごとの役割を明確化し、役割分担するために連携することが必要となります。

また、令和4年4月1日付で施行された外来機能報告では、地域における外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進のため、外来医療の実施状況等を都道府県知事に報告をすることになりました。外来機能報告における結果は病床機能報告と同様にホームページ上で公表されることから、医療機関ごとの役割が明確化されます。地域の実情に応じた、外来から入院までの総合的な地域の医療提供体制の構築が議論されることが望まれます。

令和6年度は介護保険事業計画及び障害福祉計画の開始年度に加え、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービスの3つの報酬が同時改定されます。政策の動向を踏まえ、改定されることが予測されることから、それぞれに関連する領域等についても今後の動向に注視が必要です。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/06

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