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マイナ保険証に係る医療機関向け補助事業について
診察券・医療費助成の受給者証とマイナンバーカードの一体化に関する補助金
令和6年12月のマイナ保険証を基本とする仕組みへの移行に向けて、マイナンバーカードを活用したサービスの導入に係る補助事業が展開されています。今回は、診察券と医療費助成の受給者証のマイナンバーカードの一体化に関する事業について、補助内容やその背景にある実証事業及びPublicMedicalHub (以下PMHとする)について紹介します。
診察券とマイナンバーカードの一体化の実現方法
マイナンバーカードの健康保険証利用は、令和3年(2021年)10月、オンライン資格確認の本格運用から開始されました。それ以降、マイナンバーカードによる健康保険証利用のほか、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等もスタートしました。これらのサービスにより併用できない薬剤のチェックや重複投与を防ぐためのチェック機能の提供、並びに紹介状等の文書類や検査・感染症・アレルギー情報などを含む3文書6情報を医療機関等間での情報共有、そして患者自身がこれら医療情報を確認できる仕組みの拡充が図られています。
これらのオンライン資格確認の基盤を利用することで、マイナンバーカードは診察券としても利用することが可能であることが実証事業で明らかになっています。
診察券は従来、医療機関独自にカード等を発行し管理をしていましたが、マイナンバーカードを診察券として利用することは健康保険証に加え、複数医療機関の診察券もマイナンバーカード1枚で手続きが済むことになります。マイナンバーカードは今後、各種情報を管理する仕組みとして、患者の利便性向上に寄与する取組みとして普及が望まれます。
それでは、マイナンバーカードの一体化を実現するに際して、どのような仕組みや方法があるのかを詳しく見ていきます。
まず、オンライン資格確認等の仕組みは、ある受診者に対して、保険資格確認を行った結果を医療機関のシステムと紐づけます。この情報には「照会番号」と定義された医療機関毎に付された受診者を特定する番号が含まれています。この「照会番号」は、レセコン等のシステムで診察券(患者)番号として取り扱われていることがほとんどであり、マイナンバーカードを利用した患者はこの番号を基にレセコン等での受付処理が技術的に可能となっています。
次に、運用上、診察券の取扱いに関して2つのケースが考えられます。
①診療所での受付や新規患者など再来受付機を利用しないケース
②再来受付機を利用するケース
①の再来受付機を利用しないケースでは、顔認証付きカードリーダーなどを利用した受診者のリストは患者受付登録処理と連動し、レセコン上で受付患者一覧などに表示させるなどの対応が必要となります。さらに、従来の診察券の券面には、診察券番号や患者氏名などの情報も印字されていることから、受付後に院内での運用でこれらの情報を利用している場合、受付票などに診察券番号や患者氏名を印字するなどの対応が必要となるケースもあります。
②再来受付機を利用するケースでは、再来受付機において、顔認証付きカードリーダーを利用した患者の資格確認結果を取得し、受付処理が可能となるようにシステム改修が必要となります。その後の運用フローは、従来の再来受付機から発行される受付票に対して印字する内容を変更するなどの対応も考えられます。
図 ①再来受付機を利用しないケースでの受付処理イメージ
図 ②再来受付機による受付を行う場合のイメージ
出所:デジタル庁 診察券・医療費助成の受給者証とマイナンバーカードの一体化に係る医療機関・薬局システム事業者向け説明会資料(https://www.digital.go.jp/policies/health/public-medical-hub)
以上のように、マイナンバーカードを診察券として利用する場合、医療機関内の一部システムの改修が必要な場合があり、医療機関での費用負担が普及を進めるうえでの課題として認識されています。
また、現時点ではマイナンバーカードでの受付に対応した再来受付機の機種が限られていることもあり、今後対応機種の拡充が望まれます。
PMH事業と医療費助成の受給者証の情報連携について
患者は国や自治体による公費負担制度による助成を受けて医療機関を受診する場合、健康保険証のほかに、各種医療費助成制度の公費受給者証の提示も必要となります。これらの公費受給者証の確認について診察券同様、オンライン化ができる仕組みの整備が始まっています。具体的には、Public Medical Hub(PMH)と呼ばれる、自治体と医療機関等との情報連携基盤を利用し、各自治体の公費負担や地方単独医療費助成の情報を連携することでの実現が図られています。
図 Public Medical Hub(PMH)のシステム構成図
(出所:デジタル庁 診察券・医療費助成の受給者証とマイナンバーカードの一体化に係る医療機関・薬局システム事業者向け説明会資料 https://www.digital.go.jp/policies/health/public-medical-hub)
医療費助成を実施する自治体がシステム改修等を実施した上でPMHでの情報連携に参加していることが前提となりますが、一部自治体において先行実施されており、今後も参加する自治体が増えるものと想定されます。(参加自治体の情報はデジタル庁HP等で公開されています。 https://www.digital.go.jp/policies/health/public-medical-hub)
そのうえで、医療機関は、公費受給者証の資格確認結果を取り込めるようにレセコン等のシステム改修が必要となります。レセコンの改修は現在、医事職員がレセコンに転記(手動入力)していた内容を自動的に反映する仕組み(手入力やコピー&ペーストでの入力は不可とすることが要件になる)と、公費受給者証の券面情報をレセコンに取り込むことが必要となります。また、券面情報は、医事職員が目視で確認することが必要な情報が含まれる場合があるため、医事職員がレセコン上で目視しやすい形で表示する必要があります。さらに、同一患者に対して登録済みの医療費助成情報と異なる情報が連携された場合、意図しない上書きを防止する仕組みや、システムエラー発生時の取扱い等もシステム要件として示されています。このように、医療機関のレセコン改修に伴う対応費用が必要となっています。
補助内容と申請方法について
前述したようにマイナンバーカードを診察券や医療費助成の公費受給者証とするには医療機関のシステム改修が必要です。この費用を補助するための助成金((医療機関等におけるマイナンバーカード利活用推進事業))について、内容と申請方法を紹介します。掲載内容は執筆時点での情報となるため、最新の情報については、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会の運営する、医療機関等向け総合ポータルサイト(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=csm_index)の情報をご確認ください。
図 交付金申請手続きの概要
図 各取組みにおける補助額や要件について
参考:医療機関等向け総合ポータルサイト
おわりに
健康保険証、診察券、公費受給者証は従来、医療機関の職員が受付時に各々確認していましたが、これらの情報が自動的にマイナンバーカードからシステムへ取り込めることにより、医療機関の受付業務の負担が軽減されます。さらに患者の同意を前提に各種医療情報の共有が進むことが考えられ、質の高い医療の提供に寄与することが期待されます。
また、患者もこれらの共有された医療情報をもとにした質の高い医療を受けることができることや健康保険証・診察券・公費受給者証などを持ち歩く必要がなくなるなどの利便性向上につながります。これらは医療機関と患者双方にメリットのある仕組みとなると考えられます。
これらのメリットを最大限享受するためには、マイナンバーカードを利用できる医療機関が増え、その仕組みが普及することも重要であり、今回の補助事業を活用することによりマイナンバーカードによる各種受付業務が進むことが今後期待されます。
執筆
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/11
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