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ナレッジ
Industry Eye 第69回 通信・メディア・エンターテインメントセクター
ゲーム市場のトレンドおよび業界再編
成長を続ける世界のゲーム市場について、マルチプラットフォーム化の進展、大型M&Aや新規参入によるプレイヤー再編、それらに伴う米国・中国企業の台頭といったトレンドを解説します。
II.マルチプラットフォーム化の進展
「Among Us」、「Fortnite」等の「億ゲー」といわれる、ユーザー数が1億人を超える世界的なヒットタイトルの多くは、単一のプラットフォームではなく、モバイル、PC、コンソール(Nintendo Switch、PlayStation等)といったマルチプラットフォームでのプレイが可能となっている。マルチプラットフォームへの対応は、ユーザーに新たなゲーム体験を提供しており、ゲーム内での交流を活性化し、遊び方の幅を広げている。過去にユーザーの囲い込み競争を行ってきたMicrosoft, Sonyといったプラットフォーマーもマルチプラットフォーム化を推進している。
III.大型M&A, 異業種からの参入によるプレイヤー再編
近年、ゲーム業界で大型のM&Aが多く起きている。Microsoftは2022年の初めに米国の大手ゲームパブリッシャーのActivision Blizzardを687億米ドルで買収、MicrosoftによるM&Aでは過去最高額の取引となった。他にもTake-Two Interactive Softwareが米国のソーシャルゲーム大手Zyngaを127億米ドルで買収するなど、大型のM&Aが実施されており、業界の再編が進んでいる。
大型M&Aに加えて、異業種のプレイヤーによるゲーム業界への参入も進んでいる。動画配信サービス大手Netflixは2019年にゲーム事業に参入し、モバイルゲームを中心に展開している。NetflixはNight School StudioやNext Gamesといったゲーム開発会社の買収を実施しており、さらに直近ではフィンランドでオリジナルゲームの制作スタジオを設立するなど、ゲーム開発のケイパビリティ強化を進めている。人材面でもFacebookのAR/VRチームのコンテンツ担当バイスプレジデントやZyngaのクリエイティブ責任者をはじめ、TapZen, Kabamといったモバイルゲーム企業のプロデューサー、エグゼクティブを歴任したMike Verdu氏をゲーム開発部門の責任者として起用している。一方で、Alphabetは2019年にクラウドゲーミングサービスStadiaを発表し、話題となったが、2022年9月にサービス終了をアナウンスするなど、異業種の巨大プレイヤーであっても成否は分かれている。
IV.米国・中国企業の台頭
上記のトレンドの中で、米国・中国のプレイヤーが存在感を増している。億ゲーのパブリッシャーの多くが米国、中国のプレイヤーであり、3.5億人以上の登録ユーザーを誇る「Fortnite」の米国Epic Games、2.5億人以上の登録ユーザーの人気ゲーム「荒野行動」は中国NetEaseがパブリッシャーである。特にNetEaseやTencentなどの中国企業は日本においてもゲーム会社の買収や人材獲得を活発に進めており、ゲーム業界での存在を高めている。
V.日本のゲーム市場
これまで、日本の大手ゲーム企業はNintendo SwitchやPlayStationといったコンソール向けに多くのゲームを開発してきたが、現在ではデバイスに依存しないゲームが主流となり、多くの企業が戦略の転換を求められてきた。日本には長年愛されているIPや、高い技術力をもった開発会社が多く存在しており、日本のIPや技術力に目をつけた海外プレイヤーは日本における買収、資本提携、人材獲得に積極的であると考えられる。
TencentはAimingやプラチナゲームズ、マーベラスといったゲーム開発企業に出資を行い、直近では2021年末に「ニンジャラ」などNintendo Switch向けにゲーム開発をしているウェイクアップインタラクティブを買収している。NetEaseも同様に日本への投資を進めており、セガで「龍が如く」シリーズや「ジャッジアイズ」シリーズを生みだした名越稔洋氏はNetEaseの出資を受け名越スタジオを設立している。また、「デビル メイ クライ」シリーズや「戦国BASARA」シリーズにかかわったカプコンの小林裕幸氏がNetEaseに移籍したことを2022年8月に自身のTwitterで報告をするなど、中国企業による有名クリエイターの獲得も頻繁に行われている。
潤沢な予算を背景に、スピード感ある意思決定をしてくれる中国企業を魅力に感じるクリエイターが多くいると考えられ、IP、および技術の争奪戦が今後激しくなることが予想される。
VI.おわりに
ゲーム市場は拡大が見込まれるが、その中で日本のプレイヤーは方針転換が求められている。優良なIPや優秀なクリエイターを有しているものの、グローバルでの競争力という点では向上の余地があり、IPを有効に活用する仕組みや優秀なクリエイターの獲得、育成、リテンションのための魅力的な制作環境を提供するといったことが必要であると考えられる。
※本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
TM&Eセクター
シニアヴァイスプレジデント 山口 洋平
シニアアナリスト 二階堂 慎
(2022.11.17)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。
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