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ナレッジ
ESGがもたらすM&A変革
Unlocking transformative M&A Value with ESG
環境、社会、ガバナンス といったESG要素の社会的浸透は、プライベートエクイティファンドや企業の事業戦略に重要な影響を及ぼしています。急速に変化する事業環境下において、企業は、いかに競争力を高め成長を図っていくべきでしょうか。リスクを抑え、ステークホルダーとの信頼を確立し、持続可能な成長を実現するために、組織がどのようにESG要素をM&A戦略に織り込んでいくかについて考察します。
目次
- エグゼクティブ・サマリー
- ESGは企業価値の変革をもたらし、企業に早急な対応を促しています
- M&Aを通じて変化から生じるチャンスを最大限に活用することが重要です
- 企業は変化を見極めて価値創出をするという困難な課題に直面しています
- 企業やプライベートエクイティファンドは、焦点を絞ったエンド・ツー・エンドのアプローチが必要です
※本ページはDeloitte Development LLC. が2021年10月に発行した内容をもとに、デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー合同会社が翻訳したものです。和文版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。
エグゼクティブ・サマリー
環境、社会、ガバナンス といったESG要素の社会的浸透は、プライベートエクイティファンドや企業に対して経営戦略の早急な変革を促しています。消費者の意識や消費パターン、従業員の期待、規制の枠組み、業界の認識が大きく変化したことにより、投資家はESG要素を考慮したうえで資金の再配分を行っています。
企業は、この激動する変化を認識したうえですみやかに経営戦略を再構築し、M&Aを迅速かつ永続的な改善のための土台として組み込む必要があります。ESG関連ファンドの運用資産残高 (AUM) が2020年に1兆ドルを超え、その後半年間で、課題事業を売却しサステナビリティを重視した大胆な買収を開始する企業の動きが加速し、企業およびファンドのESG活動は1,030億ドル相当にも増加しました。
我々は、すべてのM&A取引がESGパラメータに基づいて精査されると信じています。プライベートエクイティファンドや企業は、リスクを抑えて価値を最大化するためには、ESG要素を組み込んでM&Aを実行していく必要があります。本資料では、ESGパラメータをいかにM&A目的に組み込み、オーナーやその他のステークホルダーにとっての価値創出につなげていくかについて考察します。
ESGは企業価値の変革をもたらし、企業に早急な対応を促しています
ESG投資の緊急性と価値は、M&A活動に明確な影響を及ぼしています。30%以上の企業が気候変動による事業運営上の影響に直面しており、2019年では、自然災害によって推定1370億ドル相当の損失が発生しました。
環境問題への対応として、10人中8人近くの消費者が、購買行動を変えている一方で、約半数の従業員が職場を再考しています。
M&Aを通じて変化から生じるチャンスを最大限に活用することが重要です
M&Aの実行においては、ESGニーズの高まりを最大限に活用することが肝要です。M&Aは、ESGの中間的プレイヤーを創造的破壊者に変革していくことなど、取引全体にわたって持続可能で倫理的な価値を体系的に取り込んでいく機会でもあります。政府のエネルギー税額控除やインセンティブも、困難な見通しを実行可能なものにするケースもあります。デューデリジェンスにより、資源、労働条件、廃棄物、エネルギー、市場アクセスに関するリスクと機会を把握し、適切に対処することによって買収後の統合と価値創出が可能となります。
企業は変化を見極めて価値創出をするという困難な課題に直面しています
ESGは、すでに価値創出・改善の重要な側面を担っています。しかしながら、ESGのリスクとチャンスを定量化し、目標を評価することは、依然として非常に複雑であり、比較可能ではないデータの増加によりさらに複雑化しています。ESG要素の大部分において、依然として共通の尺度の普及や標準化は進んでいないのが実態です。
合併のスピードを正しく判断しなかったり、戦略的ESGの優先事項を調整しなかったり、経営陣のモチベーションを高めなかったりすると、価値の創出が妨げられるリスクが生じます。長期的には、企業は自社の目的に照らしてM&A取引の理論的根拠を再考し、前提を検証する必要があります。
企業やプライベートエクイティファンドは、焦点を絞ったエンド・ツー・エンドのアプローチが必要です
ESG M&Aの実行により、財務面、技術面の潮流を先取りして対応することが可能となります。ESGに関する複合的な複雑性への対応として、デロイトはエンド・ツー・エンドのESG M&AフレームワークであるESG ValueFocus ®を開発しました。これは、戦略立案から案件発掘、デューデリジェンス、公表、統合や、取引実行後の長期的な価値創造までを支援するツールであり、主な考慮事項は次のとおりです。
- 企業はESGを長期成長戦略に組み込む必要がある
- リスクと機会の正確な定量化は必要不可欠
- 効果的な統合により、適切な実行と長期的な価値創出が可能
ESG M&Aによる価値向上と信頼の獲得
ESGと社会的責任投資は、ビジネスモデルに根本的な変化をもたらしており、今後数年のうちに、M&A全体に組み込まれると考えられます。このような変化は、資本の競争力、収益性、資金の流れにパラダイムシフトをもたらすものです。また、公平で持続可能な地球環境に向けた企業が果たす役割は重要であり、顧客、投資家、従業員、社会、政府のすべてが期待しているため、信頼性の獲得においても必須であるといえます。
変化の最先端にいる企業は、すでに明確な目的に基づき将来の成功に向けて、変革を急速に進めています。