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オペレーション変革を進める上での6つの視点

顧客に対し新たな価値を届けるために、オペレーション変革は最重要テーマとなる

事業を取り巻く環境が急速に変化する中、オペレーション変革の重要性は増している。オペレーション変革の6つの視点(ビジネスモデル/ケイパビリティ/生産性向上/人材活躍/コスト構造最適化/ガバナンス・経管)を踏まえ、コーポレートや事業の責任者がオペレーション変革の全体像を描き、推進・実行していくことで、変革は効果を上げることができる。

企業や事業を取り巻く環境は急速に変化している。デジタル化が急速に進み、プラットフォーマーと呼ばれる企業が、新しいビジネスモデルを携え、これまでの競争環境を大きく変化させている。一方、個人の価値観は変化し多様化し、これまでの常識が通用しない世の中が到来している。

昔も今も、企業は常に変革を行う必要があるが、求められるスピードは劇的に速くなっており、変革の推進力・実行力が企業の競争優位のカギを握ることは間違いない。こうした環境下、オペレーション変革の重要性も高まるばかりだ。オペレーションを常に変化させ、組織や機能、ビジネスプロセスを最適化できなければ、すぐに競争から取り残されてしまうからだ。

オペレーション変革を進める上で、明らかにすべき6つの視点

オペレーション改革に際し重要となる要素・視点も、必然的に変化している。これまでのオペレーション改革は、QCD(品質、コスト、デリバリー)の改善活動を通じたビジネスプロセスや機能の効率化・高度化が中心だった。QCDを継続的に高めていくことは今後も重要だが、ビジネス環境が大きく変化する中、これからは以下の6つの問いに答えていくことが重要だ。

オペレーション変革にあたっては、テクノロジーと人の変化をふまえて6つの問いに答えなければならない。
1. どのような新たな価値を顧客に届けるか?(ビジネスモデル)

多くの企業がビジネスモデルの変革に取り組んでいるが、小手先の変革を留まり、うまく進んでいないケースも散見される。ビジネスモデル変革は、単に商品・サービスの売り方を変えることではない。「顧客に対し提供する価値」を大きく変えることが、ビジネスモデル変革の本質である。

この視点からオペレーション変革をとらえると、顧客に新しい価値を届けるための「バリューチェーン」を具体的に再設計することが重要となる。例えば、モノ売りからソリューションにビジネスモデルを変化させていくのであれば、ソリューションビジネスの新たなバリューチェーンを再定義することが必要だ。バリューチェーンの最初のステップは、従来のモノ売りビジネスにおける「商品開発」ではなく、「顧客ニーズの定常的な捕捉」になるだろう。
 

2. 新たに必要なケイパビリティをいかに構築するか?(ケイパビリティ)

顧客に対する新しい価値創出のバリューチェーン/ビジネスプロセスが明らかになった際、企業が最も苦慮するのが、新たな価値創出プロセスを運営(オペレーション)できるケイパビリティが自社に備わっていないことだ。ケイパビリティのミスマッチは、変革を進める企業にとって最大のボトルネックといってもいいだろう。

ケイパビリティの再構築を進める上では、新たに必要となるケイパビリティ・機能を、構成する要素に分解することが重要だ。ケイパビリティ・機能は、大きくは (1) 人材のスキル、(2) 動かす仕組み(制度やルール)、(3) それらを支えるツール・システム に分解できる。例えば、「顧客ニーズを定常的に捕捉する機能」を強化したいと思えば、どのような人材スキルと、どのような運営上の制度やルールが必要になり、またどのようなツールが必要になるかを具体化していくことが重要となる。

3. 生産性向上をどのような形態で実現するか?(生産性向上)

オペレーション変革を進める上で、これから生産性向上の視点は不可欠となる。なぜなら、生産性向上は、企業が抱える最重要課題の一つだからだ、しかし、生産性向上をどのような形で実現するかについては、検討が不充分なまま、単にコスト削減や業務のスリム化が議論されているケースが多い。

生産性とは、分母に投入量(インプット)が取られ、分子にアウトプットが取られる指標だ。ここでのアウトプットは、顧客に対し生み出す価値となる。生み出す価値を最大化するために、デジタルテクノロジーを最大限活用しながら、

  • 特にどの機能・プロセスへの投入量を増やし、付加価値(ROI)を高めていくのか
  • 特にどの機能・プロセスへの投入量を減らし、効率化を徹底していくのか

を具体化することが重要となる。
 

4. 社員が担う業務(価値)はどの領域か?(人材活躍)

生産性向上とセットで議論すべき4つ目の視点は、機能・プロセスのどの部分を人材(社員)に担ってもらうのか、人材の活躍場面(役割)を再定義することである。この答えは明らかである。顧客に対し生み出す新しい価値を担う機能・プロセスに人材をシフトさせ、効率化を徹底するプロセスは、できる限り省人化・自動化を進めるのである。

にもかかわらず、実際の現場では反対のことが起きている。付加価値領域を担う人材が質・量ともに不足し、社内の人手が足りていない。その一方で、効率化を徹底したい領域に、人材が大量に配置されている。

まずは人材に投資しスキルを高めることに取組み、人材活躍を通じ顧客への提供価値を高め、その結果として生産性を高めていくことが企業には求められている。ここでも、デジタルテクノロジーの有効活用は不可欠となる。
 

5. コスト構造をどのようにシフトさせるか?(コスト構造最適化)

1から4までの検討をもとに、事業全体のコスト構造も、これまでの延長戦上で議論するのではなく、ゼロベースで再定義することが必要となる。

効率化を徹底する機能・プロセスは、できる限りコストの変動費化を進め、ビジネスのボラティリティに耐えられるコスト構造にしていくことが重要となる。一方で、提供価値を高める機能・プロセスについては、積極的な投資が不可欠であり、全体に占めるコスト比率は相対的には増加することだろう。たとえコスト比率が増加しても、事業全体としての競争力と生産性が高まれば、望ましい姿となる。

そのためにも、まずはコスト構造の可視化が不可欠となる。どこにどれだけのコストがかかっているかが把握できず、事業間/事業内で横比較できなければ、構造改革に着手することもできないからだ。情報を可視化し関係者で共有化できて初めて、オペレーション変革を同じ目線で進めることができる。
 

6. 何の意思決定・情報に注力するか?(ガバナンス・経管)

最後の問いであるが、不確実で先の読めないビジネス環境下では、「リソース配分の最適化」、「施策・戦略のスピーディーな修正」の2つが特に重要となる。

「リソース配分の最適化」については、これまで触れてきた通りである。投資を通じて提供価値を高めていく領域と、徹底的に効率化を進めていく領域を見極め、適切にリソースを配分していくことが重要だ。「施策・戦略のスピーディーな修正」については、事業の先読みをいち早く行うために、どんな情報・データを定常的に取得し可視化すべきかを定め、それを実現するオペレーションを設計・構築することが重要となる。

オペレーション変革やビジネスプロセス変革は、慣れ親しんだ変革テーマであり、常にどこかの部署でプロジェクトが進んでいる。しかし身近であるが故に、抜本的な取り組みに広がりにくく、個別最適に陥りやすい。

ここに挙げた6つの問いは、各部署がバラバラに検討・実行するのではなく、全体整合を図りながら一体的に検討することが重要だ。なぜなら、6つの問いは、時として相反する答えを導くからである。それぞれの問いにバラバラに答えオペレーションを設計すると、個別最適で全体としては非効率なオペレーションが出来上がる。これでは、変革効果が見込めないばかりか、むしろマイナスだ。

コーポレートや事業の責任者が変革全体をリードし、各々の整合を図りながらオペレーションの全体像を描き、変革を推進していくことで初めて、オペレーション変革は効果を上げることができる。

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