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企業変革を加速させるコーポレートの仕組み改革
企業変革・構造改革を成果に結び付けるカギは、全社コーポレートの仕組み改革にある
日本企業の企業変革・ビジネスモデル変革が十分に進まない本質的原因は、戦略やオペレーションの不備よりも、「コーポレートの仕組み変革」が進まないことにある。まず足元のコーポレート全体の仕組み改革に着手することが、中長期的にグローバル競争を勝ち抜き事業を拡大するための一番の近道である。仕組み変革は、(1)企業・組織間連携の最大化(2)共有アセットの価値最大化、(3)専門機能の付加価値化の三つが一体となって実現される。
コーポレートの仕組みが企業変革の障壁に
グローバルでの競争激化とデジタル化の進展により、日本企業を取り巻く事業環境は急速に変化している。従来の市場の枠組みが壊れ他業種プレイヤーがテクノロジーを武器に新たに市場参入してくる中、戦い方を大きく変えていかなければならない。また顧客のニーズや価値観自体が変化し、商品・サービスを選択する基準もシフトし、企業は新しい付加価値を創出する必要があり、オペレーション変革も急務となっている。
こうした中、各社とも戦略やビジネスモデル再構築の必要性を感じ、実際に手を打っている。新規事業立ち上げやイノベーション創出部署を新設し、新しいサービスを立ち上げ、ビジネスモデル転換に取り組んでいる。また既存事業の構造改革を断行し、新しいオペレーションへの移行を試行している。
しかしながら、こうした動きが会社全体の大きな流れにつながっていかない結果、個別サービスの立ち上げに留まり、企業変革に結び付いていないケースが数多くみられる。その理由はどこにあるのか。
デジタル化時代のビジネスモデル変革
デジタル時代の企業変革は、これまでの競争戦略を前提とした狭義のビジネスモデル変革ではなく、会社全体を抜本的に変革していく、より広い概念のビジネスモデル変革が必要となる。すなわちそれは、
・戦う場所/土俵を変える
・オペレーションを変える
・仕組み/ケイパビリティを変える
の三つが一体となり、企業全体を変えていくことである。
コーポレート仕組み改革の3つの柱
会社全体の仕組みを再構築し、オペレーションやアクション変革に直接つなげるコーポレートの仕組みには、三つの柱がある。
1. 企業・組織間連携の最大化
グループ内の企業同士や企業内の組織間連携を最大化する仕組み改革を通じ、企業間・組織間の連携・協業を加速させることが重要である。これにより、グループ全体で有するケイパビリティを最大限活用し、オペレーションを変革・高度化させていくことが出来る。日本企業、特に伝統ある大企業は企業体や組織が肥大化し、枠組みやルールを変えても、オペレーションやアクションは何も変わらず追加作業だけ発生するような変革が多い。責任権限や役割分担の取り決めに終始するのではなく、オペレーションやアクション変革に直結する、新たな仕組み作りが求められる。
2. 共有アセットの価値最大化
グループ内で既に保有している人材・テクノロジー・その他アセットを有効に活用し、現在の企業の提供価値を最大化していく仕組み作りも、変革を進める上で極めて重要である。もちろん、足りないケイパビリティを外から獲得・活用することは必要である。ただ外部リソースに過度に頼る結果、自社の付加価値が全くない事業・サービス開発を進めてしまい、「これは本当に自社の事業・サービスなのだろうか?」と当惑してしまう変革を、筆者もこれまでいくつも目にしてきた。保有アセットの価値を捉えなおしアクションにつなげていくことができれば、変革もより効果的に機能する。
3. 専門機能の付加価値化
グループ企業内の共通専門機能をコーポレートに集約化/一元化することにより、効率的かつ高度なオペレーションを実現する仕組み作りも重要である。なお集約化/一元化に際しては、各事業が個別に保有し運営するよりも高い付加価値を提供できることが大前提となる。付加価値を生み出さない機能集約は、結局のところオペレーション・アクション変革につながらないため、変革に結び付かない。
この三つが一体となることで仕組み改革が加速され、企業変革が推進できる。
コーポレート仕組み改革の2つの効果
仕組み改革は企業変革を促進させるドライバーとなるが、企業に対し二つの大きな効果をもたらす。
アクション変革を直接導き、企業の実行力を高める
コーポレート仕組み改革の第一の効果は、オペレーションを変えるアクションに直接結び付くことである。仕組みが変わったことで、組織のオペレーションや個人のアクションが具体的に変わる。それにより、これまでにできなかったことができるようになる。それを通じ、組織や個人のマインドや見方が変わる。その結果、会社全体が新しい仕組みを信頼するようになる。仕組み改革を適切に行うことで、この好循環サイクルを生み出すことができる。
仕組み改革がうまく機能しないケースの大半は、仕組み自体がいつのまにか制度・ルール化し、仕組み順守が目的化してしまうためである。例えば、全社のナレッジを共有しようといった取り組みは至る所で行われている。しかし大半のケースは、ナレッジ情報を集めることが目的化してしまい、収集に多大な時間と工数を費やす割に使われない仕組みになっている。情報提供者に対するインセンティブ設計や、情報を使う側が欲しい情報にすぐたどり着けるなど、アクションに結び付く仕掛けがあって初めて、ナレッジ共有の仕組みは機能する。
従業員のモチベーション・付加価値を高める
仕組み改革のもう一つの大きな効果は、従業員のパワーを最大化し、EVP(Employee Value Proposition)を高められることである。少子高齢化が進み若手世代は総数が減る一方、次世代の働き手たちはキャリアを自らで描き、節目ごとに会社を移っていくことが予想される。キャリア形成にとって魅力的な会社には優秀な人材が集まり流動性が生まれる一方、魅力を伝えられない会社には人材が集まらず、雇用の二極化が進むだろう。企業は人材を財産と捉え、スキルを高める業務により注力できる仕組みを整えることで、人材を惹きつけモチベーションを向上させるとともに、付加価値(スキル)自体も高めることができる。人材を確保するためには、従業員に優しい会社になることだけが解ではない。パフォーマンス最大化の仕組み作りは、従業員と会社を同じ方向にベクトルを向かわせ、双方にとってメリットをもたらすことができる。
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