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テキストマイニング×AIで実現する未来型顧客接点

世界中でビジネスの様々な分野におけるAI活用が急速に進んでいるが、日本では日本語の取扱いの難しさにより、自然言語処理・レコメンデーション分野での導入はグローバル基準と比較して低い状況にある。しかし、最新のテキストマイニング技術を活用しAIが学習する適切な知識データを生成すれば、日本においても同分野でのAI活用が十分可能であり、「深い顧客理解」と「自動化パーソナライズ」による高い顧客満足と従業員満足が共存する未来型の顧客接点を構築することができる。

AI活用が世界中で広がる一方、日本では言語処理・レコメンデーション分野が課題

AI国内市場規模は2023年~2028年で年間平均30%成長し、2028年には2兆5433億6200万円になると予測されている。また、デロイトが13の国の企業を対象に2023年に実施した『グローバルAI活用企業動向調査 第5版』では、「企業の全面的な成功におけるAIソリューションの重要性は高い」と答えた企業が全体の94%、「来期に見込んでいるAIへの投資がある程度増加する/大幅に増加する」と答えた企業が76%と、多くの企業・組織がAIを組織に競争的優位をもたらすドライバーだと認識しており、更なる効果創出のための戦略的活用を計画している。また27%の企業が様々なタイプのAIアプリケーションをフルスケールで展開し、成果を最大限に達成している「トランスフォーマー」として位置づけられており、AIによるビジネスの変革に既に多くの企業が成功していることがわかる。

グローバルトレンドと同じく日本でも多くの企業が、AIの活用を進めている状況にある一方で、分野別にみると日本では母国語の取り扱いの難しさから自然言語処理とチャットボットの分野の展開状況が他国と比較すると低い水準にあり、同分野のAI活用促進が日本におけるAI展開拡大のカギとなる。

テキストマイニングとAIの関係性

では、自然言語処理とチャットボットの分野でのAI利用促進を行うためにはどのような方法が考えられるだろうか?

結論を述べるとテキストマイニングをソリューションとして活用することで同分野でのAI利用は促進される。まずテキストマイニングとは何かということと、AIとの関係性について確認したい。

テキストマイニングとは、大量のテキストデータを分析・加工し、洞察を与えることを目的とする技術である。AIが学習するための知識データを生成する一つの手段としても利用することができる。AIは様々なデータをインプットとして学習していきながらそのアウトプットの精度を高めていくが、未加工のデータ(ローデータ)では学習をすることができないため、加工が必要になる。そこでAIが学習できるデータ(知識データ)にローデータを分析・加工する際にもテキストマイニングが活用できる。

具体的に自然言語処理、レコメンデーションの分野でのそれぞれの役割を整理すると

  • AI:知識データを学習し適した顧客に適した情報を提供
  • テキストマイニング:AIが学習するための知識データを大量のテキスト情報(ローデータ)を分析・加工し作る

となる。上記のようにAIとテキストマイニングは補完関係にあるためテキストマイニングを活用することは自然言語処理、チャットボットにおいてAI利用を促進する際の非常に重要な要素となる。

 

テキストマイニング×AIが顧客体験高度化のカギ

次にテキストマイニングを活用し、自然言語処理とチャットボット分野でAIを利用することが企業にどのようなメリットをもたらすか見ていきたい。

この結論は「テキストマイニングによる深い顧客理解」と「AIによる自動化・パーソナライズ」によって、顧客体験が高度化できること、となる。

顧客体験の高度化は競争優位の源泉として年々重要性が高まっており、多くの企業にとって重要な経営課題である。良質な顧客体験を提供するためには顧客を深く理解するためのデータが欠かせない。その中でも会話データは顧客理解のための貴重な示唆を提供するものであるため、重要度が高い。例えば顧客属性と顧客の嗜好の把握によるパーソナライズ化された情報提供や、接客中のリアルタイムでの顧客の感情分析による、オペレーターへの適切な応対方法のサジェスト等には会話データの活用が必須となる。

また、顧客が接客中に話す不満点として多く挙がる内容を分析しサービスを改善するなど顧客の声を組織のナレッジとして蓄積し、継続的な顧客対応の進化に繋げることも可能になる。

繰り返しになるが、この会話データの分析を行い、深い顧客理解を可能にするのがテキストマイニングツールであり、分析後の知識データを利用し自動化パーソナライズを行うのがAIである。

コンタクトセンターで実現する未来型顧客接点の具体像

ここでは、コンタクトセンターを例にテキストマイニング×AIにより実現する未来型顧客接点の具体像について4つの特長を挙げたい。

4つの特長のうち一つ目は顧客とオペレーターを適切にマッチングさせるルーティングの視点である。

(エクスペリエンスルーティング)
従来のルーティングでは顧客の用件のみの情報で該当するスキルのオペレーターに繋げるスキルベース・ルーティングと言われるものであった。これに対し、高度なテキストマイニングソリューションを導入した場合は会話内容等の音声情報から顧客属性や感情、好むコミュニケーションスタイルまでテキストマイニングが作成した知識データを元にAIで分析することで、最適なオペレーターへ接続させることができる。エクスペリエンスルーティングと呼ばれるこうしたAIによるきめ細やかなルーティングを行うことで、顧客ひとりひとりに適したベストな応対を実現することができる。

2点目はFAQの高度化である。

(ナレッジプロセスオートメーション)
大量の会話データをテキストマイニングツールにより自動で分類し、FAQに投入可能な知識データを直接生成することで顧客からの問合せにおけるFAQカバー率が高まりFAQを活用しながら行うオペレータートークの精度向上も可能になる。またFAQを元に自動応答を行うチャットボット機能も向上する。

3点目は対応終了後の顧客へのフォローアップである。

(インスタントカスタマーフィードバック)
顧客との会話が終了後にテキストマイニグで顧客の声を収集・分析し、不満を検知した場合には、能動的にフォローアップを実施ができるようになる。例えば、感情分析等で不満を検知した顧客に通話後のアンケートSMSの配信やWebサイトのセルフサービスで特定の手続きを実施した顧客へのポップアップでのアンケートが自動で可能になる。即時のフォローアップで不満や潜在ニーズを顧客から聞き取ることで、顧客体験のスピーディーな改善を実施することができる。

4点目はオペレーター支援の点である。

(エージェントエフォートレス)
顧客との会話内容を分析しオペレーターにナレッジを提供する等、担当者が顧客応対に全力集中できる環境を整備し、従業員体験向上が顧客体験向上につながる好循環を生み出すことが可能になる。例えばテキスト自動要約で応対履歴を自動作成することでオペレーターの通話中の文章打ち込みが不要となる、また、感情分析により顧客の不満を可視化し迅速な上位者のサポートを行える環境を作ることが挙げられる。

以上のように「テキストマイニングによる深い顧客理解」と「AIによる自動化・パーソナライズ」によって、様々なシーンで顧客体験の高度化が可能になることがわかる。

このようにテキストマイニングによる会話データ活用を導入した場合、顧客ニーズをいち早く捉え他組織・チャネルと連携しながら、顧客に必要な情報と的確なサポートを提供することが可能になることがコンタクトセンターの例からも理解頂けるだろう。

デロイト トーマツでは多様な業界におけるAI活用に関する知見と経験、またコンタクトセンターをはじめとするカスタマーマーケティング分野におけるノウハウを有しており、テキストマイニングの活用に関しても、最適なツール導入についてプロフェッショナルが支援を行える。具体的なサービスに関してはリンク先を確認頂きたい。

サービス紹介ページ:Vext(ベクスト)とのアライアンス

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