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オンライン教育の現状と課題

大学におけるオンライン教育について、現状の課題と対応策例を紹介する。  

新型コロナウイルス感染症を契機として広まったオンライン教育は、今後、教育システムの中心的な役割を担っていくことが想定され、学生への必要十分な教育機会の提供という社会的使命を果たすためにも、オンライン教育に対する対応が大学に求められています。

オンライン教育の広まり

 今春の新型コロナウイルス感染症対応のため、大学におけるオンライン教育が急速に広まりました。新型コロナウイルス感染症拡大以前においても、オンライン教育は徐々に広まりつつあったところですが、これまでの日本の大学においては、少人数でのゼミ活動を始め、受講生が何百人にも及ぶような大教室で行われる授業に関しても、基本的に学生が大学のキャンパスに行き、教員と対面した形で行われるいわゆる面接授業が教育の中心でした。
 ところが、令和2年7月1日時点の文部科学省の調査によると、全国の国公私立大学1,012校のうち、858校(84.8%)が遠隔授業(オンライン授業)を実施していました。また、同じく文部科学省の「大学等における後期等の授業の実施方針等に関する調査」(調査期間:令和2年8月25日~9月11日)によると、8割を超える国公私立大学が、令和2年度後期の授業において、対面・遠隔授業を併用する方針であると回答しました。
 このように、新型コロナウイルス感染症を契機として、大学教育において急速にオンライン教育が広まっています。ここでは、その現状と課題についてまとめてみたいと思います。

面接授業とオンライン授業

 上述のとおり、これまでの日本の大学教育においては、教員と学生が対面する面接授業が一般的でしたが、新型コロナウイルス感染症を契機にオンライン授業が急速に広まりました。面接授業とオンライン授業を比較した場合、どちらの方が優れているということはなく、それぞれにメリット・デメリットがあると考えられます。
(表1 面接授業と比較したオンライン授業のメリット・デメリット)

面接授業と比較したオンライン授業のメリット・デメリット

オンライン授業の形態

 一般的にオンライン授業とは、インターネットに接続されたパソコンやタブレット端末を使用して行われる授業のことを言い、オンライン授業の方法としては、大きく分けて以下の2種類があると考えられます。
 ① 教員がリアルタイムで授業を行う「双方向型授業」(同時配信型授業)
 ② 教員が行った授業を録画し、その録画されたものを学生が視聴する「録画配信型授業」(オンデマンド型授業)

 それぞれの主な特徴は以下のとおりです。
(表2  オンライン授業の種類別の特徴)

オンライン授業の種類別の特徴

 なお、実際の授業の実施においては、必ずしもいずれかの方法に区分されるわけではなく、両者を組み合わせたものや、通常の授業だけではなく、実験や実習の授業を行ったり、映像教材を使用するなど、授業の質を高めるための知恵を絞る大学も増えてきているようです。

オンライン教育を行うにあたって想定されるリスクと対応策

 オンライン教育が全国の国公私立大学に広まっていますが、このようなオンライン教育を行うにあたってのリスクについてみていきたいと思います。

①システム投資
【リスク】
 オンライン教育を実施するに際しては、大学独自のオンライン教育用のシステム構築を行っている大学もあります。そのような場合、システム構築の初期投資費用が必要となり、多額の出費が行われることも想定されます。また、そのような独自のシステム構築を行わない大学においては、Zoom等の既存のWeb会議ツールを使用して、オンライン教育を実施しているようです。
 いずれの場合においても、インターネット環境を整備する必要があるため、システムインフラに関する投資が必要となり、当該投資の際には、不十分な検討に起因するシステムの不備や、不必要な投資が行われるリスクがあります。
【対応策】
 オンライン教育用のシステム構築を行う際には、設計段階で十分な検討を行い、運用段階で教育提供上の不備が発生しないようにする必要があります。
 また、大学全体との他の投資計画との整合性にも配慮したシステム構築を進める必要があります。

②システム障害
【リスク】
 オンライン教育を実施するに際しては、インターネット環境を使用しての教育(授業)であるため、仮にシステム障害が発生した場合は、円滑な授業の実施は困難となります。また、外部の第三者から意図的な妨害を受ける可能性もあります。
【対応策】
 システム障害に対する予防策としては、システムの定期点検やテスト、プログラムの適正管理等によってある程度の予防はできると考えられます。また、定期的に外部の専門家によるシステムの整備・運用状況に関する評価を受けることも有効であると考えられます。
 外部からの妨害に関しては、セキュリティ機能の強化や、随時のアップデート等により対応することが考えられます。また、システム運用に関する運用ルールの整備や遵守(教育)も重要になります。

③教育の質の確保
【リスク】
 オンライン授業のメリット・デメリットとして既述したように、オンライン教育には利便性がある一方で、面接授業と同様の意思疎通やコミュニケーションを図ることが難しい面もあるため、学生にとっては、授業料という対価に見合ったサービスが受けられていないという印象を与えてしまう可能性があります。
 また、学生同士のコミュニケーションが不足してしまうという可能性もあります。
【対応策】
 オンライン授業のデメリットを解消するためには、面接授業と上手く組み合わせて実施する等、授業の内容に応じてそれぞれのメリットを活かせるような授業構成にすることが考えられます。
 また、Zoom等のWeb会議ツールのグループディスカッション・ツールを活用したり、グループワークを積極的に導入する等、教員と学生あるいは学生同士のコミュニケーションが希薄にならないように工夫している大学もあります。

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