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財産目録監査の新しい取扱い

~学校法人委員会実務指針第40号の改正~

今回の改正は、財産目録監査の取扱いを整理したものであり、私学振興助成法監査は一般目的・適正表示の枠組みであるのに対して、認可申請に係る財産目録監査は特別目的・準拠性の枠組みとされている。

学校法人委員会実務指針第40号

学校法人委員会実務指針第40号「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る書類の様式等の告示に基づく財産目録監査の取扱い」が平成27年10月7日に改正され、財産目録の作成日が平成27 年4月1 日以後の財産目録監査から適用されることになった。
今回の改正は、「監査基準の改訂に関する意見書」(平成26年2月18日企業会計審議会)により、特別目的の財務諸表等を対象とした準拠性に関する意見の表明の形式が導入されたことに伴い、財産目録監査の取扱いを整理したものであり、私学振興助成法監査は一般目的・適正表示の枠組みであるのに対して、認可申請に係る財産目録監査は特別目的・準拠性の枠組みとされている。
 

【認可申請に係る財産目録とは】

―開設年度の前年度の6月30日までに作成・提出される―
学校法人が新設又は増設のため寄附行為等の認可申請をする場合、所轄庁は、設置する学校法人に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びに経営に必要な財産を有しているかどうか、寄附行為の内容が法令に違反していないかどうかについて審査する。
開設年度の前年度の6月30日までに文部科学大臣に提出する書類のうち、財産目録その他の最近における財産の状況を知ることができる書類(最近とは提出日から見て直近の年度末が想定される)として、財産目録と財産目録総括表を作成し、所轄庁に提出することになる。
 

【財産目録の枠組み・会計基準】

―財務報告の枠組みは、告示第117 号―
所轄庁は「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る書類の様式等(平成6年7月20 日 文部省告示第117 号)」(以下、告示第117 号という。)で財産目録の様式を定めるほか、財産目録を具体的に作成するための「財産目録の作成に係る基本方針」を定めている。

―学校法人会計基準で定める貸借対照表に準じて作成される―
所轄庁の審査では、審査基準をクリアできるように、財産目録総括表上で、校地の再評価(時価による評価)を認めているが、財産目録については、学校法人会計基準で定める貸借対照表を基礎として(私学法第47条第1項でいう)財産目録が作成されている現状を踏まえて、財産の価額や財産の各科目については、貸借対照表に準じて記載することを基本とし、申請書に添付する貸借対照表と整合するように作成することとされている。

【財産目録の監査】

―公認会計士の監査対象―
寄附行為等の認可申請をする場合に、理事者又は設立準備委員会等は様々な書類の作成・提出が必要となるが、財産目録については、公認会計士の監査の結果を記載した書類(監査報告書)が求められている。
監査人は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査を実施し、理事者又は設立準備委員会等の作成した財産目録が告示第117 号に準拠して作成されているかどうかについて監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することになる。

―特別目的・準拠性の枠組みの監査として整理―
財産目録は、理事者又は設立準備委員会等の寄附行為等の認可申請に対して所轄庁が審査した上で認可を決定するために提出される書類の一つであることから、利用者は学校法人の寄附行為及び寄附行為の変更を認可する所轄庁に限定されており、特定のニーズに対応したものであることから、「特別目的の財務報告の枠組み」となり、告示第117 号に準拠しているかが要求されるのみで、追加開示の規定がないことから、「準拠性の枠組み」となる。

―監査実施に当たっての留意事項―
財産目録の監査実施に当たっては特に次の事項に留意することとされている。
(1) 財産目録に記載された全ての重要な資産、負債及び借用財産は、事実に基づきその種類及び内容が正しく記載されているか。
(2) 財産目録に記載された不動産は、登記簿謄本の記載内容と一致しているか。また、不動産以外については、内部管理書類や他の申請書類と整合しているか。
(3) 収益事業用財産は全て事実に基づき正しく区分して記載されているか。
(4) 財産目録に記載された負債のほか、借入金、未払金等の負債はないか。
(5) 資産の金額は適正な帳簿記録又は鑑定評価等一定の事実に基づいて記載されているか。
(6) 財産目録の作成に当たり採用した重要な会計方針は記載されているか。
(7) 資産及び負債の分類は、告示第117 号に定める財産目録の様式第6号その1(以下「様式第6号その1」という。)に従い、分かりやすく明瞭に表示されているか。
(8) 様式第6号その1に記載のない項目は、当該様式第6号その1に記載された他の科目に準じて区分し記載されているか。
(9) 特に私立学校振興助成法第14 条第3項の規定に基づく監査を受けていない学校法人又は設立準備委員会等について、財産目録作成に関連する内部統制が整備されているか。 

【監査報告書】

―監査報告書の記載事項―
監査報告書は、監査報告書は、「監査の対象」、「財産目録に対する理事者又は設立準備委員会等
の責任」、「監査人の責任」、「監査意見」の区分に分け、「監査の対象」以外はそれぞれ見出しを付して明瞭に記載し、意見を表明しない場合にはその旨を監査報告書に記載する。また、必要に応じて追記情報(強調事項及びその他の事項)を意見の表明とは明確に区分して記載するものとする。

―利用者に対する注意喚起としての追記情報(その他の事項区分)―
財産目録に記載されていない事項について、利用者に関連するため説明する必要がある場合には、「その他の事項」又は適切な見出しを付した区分を設けて記載する。
 

その他

財産目録作成の基礎
特別目的の財務諸表は、特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されており、他の目的には適合しないことがあるため、その旨を記載することとなる。

配布及び利用制限
監査報告書が特定の利用者のみを想定しており、監査報告書に配布又は利用制限を付すことが適切であると判断する場合には、適切な見出しを付してその旨を記載しなければならないとされている。

その他の事項
財産目録に対する監査に加え、私立学校振興助成法第14 条第3項の規定に基づく監査を行う場合には、その他の事項として、私立学校振興助成法第14 条第3項の規定に基づく監査の監査報告書を発行している旨を記載する。
 

参考

監査基準委員会報告書805
5.本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。
(1) 「財務表」-完全な一組の財務諸表を構成する、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書等のそれぞれを指す。
(2) 「財務諸表項目等」-財務諸表の構成要素、勘定又はその他の項目を意味する。
個別の財務表、財務諸表項目等には、関連する注記が含まれる。関連する注記は、通常、重要な会計方針の要約と、財務表又は財務諸表項目等に関連するその他の説明情報から構成される。
 

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