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地方独立行政法人法改正について(その1)
地方独立行政法人法改正内容と、今後の展開
地方独立行政法人法の一部改正により、従前から設立が認められてきた地方独立行政法人(公立大学法人含む)における適正な業務の確保を目的とした改正のほか、窓口関連業務を担う新たな地方独立行政法人制度が設けられました。
1.地方独立行政法人改正の動き
平成29年3月10日に閣議決定され、第193回通常国会議決(5月)を予定されている「地方独立行政法人法案」の詳細が明らかになりました。
総務省ウェブサイトにおいても、提出予定法律案として掲載されています。
当該法案は平成27年度に総務省で詳細に検討が進められた「地方独立行政法人制度の改革に関する研究会」(以下、「研究会」という)での検討を経て、かつ平成28年3月総理手交第31次地方制度調査会「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」において示された「ガバナンスのあり方」と「外部資源の活用による行政サービスの提供」の二つの考え方を反映し、取りまとめられたものとなっています。
なお、すでに研究会での検討を経て一部は平成28年5月国会議決を経て平成29年4月施行予定として改正が確定している事項もあります。
デロイト トーマツ グループからは、パートナー奥谷恭子が研究会の研究員として参画し、制度改革への議論に携わりました。
2.平成29年4月施行法改正の概要
1)公立大学法人における出資対象の拡大
地方独立行政法人法第21条が改正され、公立大学法人の業務が次のとおり定義されました(太字が改正による追加事項)。
「大学又は大学及び高等専門学校の設置及び管理を行うこと並びに当該大学又は大学及び高等専門学校における技術に関する研究の成果の活用を促進する事業であって政令で定めるものを実施する者に対し、出資を行うこと。」
国立大学法人と同様に大学等技術移転促進法により承認されたTLO(技術移転機関)への出資が認められました。
2)公立大学法人における長期借入金と債券発行
地方独立行政法人法第79条の3により、設立団体の長の認可を受けて、設立団体以外の者から長期借入金をし、又は当該公立大学法人の名称を冠する債券を発行することができることになりました。こうした資金調達の目的は地方独立行政法人法施行令で制限されており、法人の施設の移転のために行う土地の取得等であって当該移転に伴い不用となる財産の処分による収入をもって当該土地の取得等に係る長期借入金又は債券を償還することができる見込みがあるもの等となっています。また償還期間も目的別に上限が定められています。
使用目的が制限されているうえに、設立団体による認可手続が必要ではあるものの、資金調達方法の多様性が認められてきています。
3)公立大学法人・公営企業型地方独立行政法人における余裕金の運用方法の拡大
地方独立行政法人に比べ国立大学法人や独立行政法人である国立病院機構における余裕金運用方法が幅広い状況であることから、それぞれの取り決めに対応し、公立大学法人、公営企業型地方独立行政法人における運用方法が拡大されました。
4)公立大学法人における附属学校の設置
国立大学法人と同様に公立大学法人においても附属学校の設置が認められました(地方独立行政法人法第77条の2)。
なお、上記の改正内容に対応して、平成28年11月に地方独立行政法人法施行令、地方独立行政法人法施行規則も改正されていますので併せてご確認ください。
3.今後の対応
上記に記載した改正事項に対応し、各法人においては資金運用規則等の見直しが適宜求められます。また当該法改正に対応した地方独立行政法人会計基準の改訂版が平成29年3月31日に公表されました(平成29年度からの適用となります)。
なお、関連した地方独立行政法人会計基準への改訂の概要、及び第193回通常国会提出法案の概要とその対応への考え方については、デロイト トーマツ グループでは当ウェブ上において引き続き解説していく予定です。