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市民参加型事業評価の取組み

特集 公会計情報の活用の進め方

自団体の課題解決のために公会計情報を効果的に活用するうえで、先進事例を知ることは大変有用です。本記事では、公会計情報の活用事例として、東京都町田市における市民参加型事業評価の取組みについて解説します。

1. まえおき

本記事では、公会計情報の活用において先進的に取組んでいる町田市における「市民参加型事業評価」の事例を紹介します。前記事では同市の「課別行政評価シート」「同種施設比較分析表」等を紹介しましたが、「市民参加型事業評価」は、これらの資料が市民への情報開示及び市政参加の促進に活用された取組みです。事例の概要について解説したのち、自団体で活用する際の論点等について検討します。

【前回の記事】
特集 公会計情報の活用の進め方③課別・事業別行政評価シートによる事業マネジメント

 

2. 事例解説

(1)背景・目的

町田市における市民参加型事業評価の取組みは、平成20年度に実施された「事業仕分け」がその前身となっています。

「事業仕分け」を実施する背景としては、平成19年11月に策定された中期経営計画「行政経営改革プラン」において、基本方針の柱の一つとして、「効率的・効果的に市民ニーズにこたえられる行政運営の実現」を掲げ、事業手法の検証・見直しの推進を行うこととしたことがあります。その背景を受け、「事業そのものの必要性」や「効率性」、「民営化の可否」等について、外部の視点を取り入れ、市民が参加する公開の場で考えることを目的として、取組みが開始されました。

(2)取組内容

これまでの開催状況は下記の通りです。

【参照】町田市版事業仕分け (外部サイト)

 

①対象とする事業数
事業仕分け開始当初は34事業を対象としていましたが、直近実施の回では6事業と対象事業数が減少しています。これは回を経るごとに「対話を重視して評価を行う」ことが重視され、事業選定プロセスから市民の関与を行う、1事業にかける討議時間を延ばすなどの対応がとられたことによるものと考えられます。

②評価に使用する資料
各事業の説明時に使用される資料についても回ごとに見直しが行われています。特に、第3回実施の際には「新公会計制度」による財務諸表の情報が資料に取り入れられました。直近年度における事業別の貸借対照表、行政コスト計算書、及び財務指標分析(利用者負担割合、単位当たりコスト、資産老朽化比率(現在は有形固定資産減価償却率)等)が盛り込まれるなど、公会計情報が評価の視点として活用されています。

出典:2013年度町田市版事業仕分け」について(2013年5月12日開催) (外部サイト)

 

③評価への市民参加
初回の事業仕分けでは、評価人は他自治体職員や学識経験者により構成され、市民は事業仕分け当日に会場で傍聴するという参加形式でした。第2回では評価人に市民が参加し、事業仕分け当日は会場の傍聴者からも質疑を受けるようになりました。また第5回からは高校生市民を評価人に加える、第6回からはYouTubeでの配信を開始するなど、より幅広い世代の多くの市民が参画するための取組みが行われています。

④改善プログラムの策定
第2回以降では、評価対象事業ごとに「改善プログラム」を策定し、進捗状況を含め市民に公開しています。
改善プログラムでは、評価人の意見を踏まえ担当課が具体的な取組みを策定し、また当該取組みについて目標となる指標を設定し進捗状況を測定しています。

 

出典:町田市 令和元年11月24日実施の市民参加型事業評価 改善プログラムについて筆者が加工(外部サイト)

 

(3) 取組みの効果

市民参加型事業評価の実施により、以下のような効果が期待できます。

・事業の必要性、有効性、効率性等について、有識者や市民からの多面的な評価を得ることができる。

・公会計情報などの財務情報、事業利用者数などの非財務情報等、担当課が市民参加型事業評価実施にあたって様々な指標によって分析することで、事業の状況をより深く理解し、課題となる事項を客観的に把握することが可能になる。

・組織内のみで意思決定しにくい事業の廃止などについて、有識者や市民などの外部者からの意見に基づき意思決定がしやすくなる。

・評価を行って終わりではなく、改善プログラムの立案とモニタリングまで実施することで、事業改善の実効性が担保される。

・事業情報の積極的な公開と市政への参画機会の確保により市民満足度の向上を図ることができる。

 

3. 自団体への活用にあたって

町田市の事例を参考に自団体で同様の取組みを検討する場合、以下の留意点を考慮する必要があります。

①市民が理解可能な事業説明の準備
評価人となる市民が事業選定や事業評価を行う際、また事業評価当日に来場した際に、事業の理解を行うための説明資料が必要となります。多くの市民は市政に使用される用語や、公会計情報について精通していないため、行政組織内で使用する資料をそのまま提供しても十分に理解が得られないことが想定されます。
事業評価資料に読み方の解説資料を添付することや、情報量を多くしすぎないこと等、読み手が理解しやすい工夫が必要になります。

②「評価」は目的でなく、その後の事業改善のための「手段」である
事業評価の取組みは、あくまで事業改善のための手段にすぎないことを理解し、評価して終わりとしないことが重要です。町田市では事業評価後に改善プログラムを策定し、その後の達成状況についてモニタリングを行う仕組みづくりがなされています。評価人からの指摘が適切に事業改善に反映されるよう、改善プログラムを策定し管理していくことが必要です。

改善プログラムの策定にあたっては、

  • 「改善策が識別された課題とマッチしているかを論理的に検討すること」
  • 「実現可能な改善策とすること」
  • 「進捗状況を客観的に測定できる指標(ないしマイルストーン)を設けること」

が重要です。

 

以上

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