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もしも不祥事が起きたなら…
自治体における不祥事対応手順と再発防止策
自治体で万が一の不祥事が生じた時、あなたが担当者であればどうするでしょうか。普段から一定の備えがなければ、適時の適切な対応は困難です。今回は不祥事が発生した場合の対応手順と再発防止策の概要をご紹介します。
「不正は必ず起こる」という心構え
総務省のHPでは、地方公務員の懲戒処分等の状況を年度ごとに公表しています。この中にはいわゆる不正(汚職事件)の件数も記載されており、直近5年間の件数推移をみると平均して毎年80件程度の不正が発生していることが分かります。地方公共団体の数が1,724団体(※)であることを考えると、どのような団体であれ不正が発生することを念頭に置いた取組みが不可欠であると考えます。
しかし、実際には必ず不正が生じるという前提で有事に備えている団体は少数ではないでしょうか。不正が発生した場合には、事実確認やメディア対応が求められるとともに、利害関係者が納得できるような再発防止策の立案も必要です。このような取組みを迅速かつ的確に実施することは、事前に段取りを整えて定期的な訓練を行わない限り困難です。
※2021年8月31日時点
表:地方公共団体等における汚職事件の発生件数推移
出典:総務省HP公表の各年度における地方公務員の懲戒処分等の状況の「2.汚職事件について」より作成
もしも不祥事が起きたなら…まず最初にすべきこと
もしも、急に不祥事が発生して、あなたが担当者となったら、まず最初に何をしますか。
例えば、内部通報により公になる前に不祥事を識別した場合には、ある程度の時間的猶予があり、まず調査や再発防止策を実施すべきかもしれません。司法当局の捜査等により初めて認識したような場合には、事実確認を十分できない状態であってもメディア対応等が優先になるかもしれません。
まず、最初に実施すべきことはケースバイケースですが、不祥事が生じた場合の危機管理はおおむね以下の手順で対応します。
①初期調査
まず発生している事案の概要を把握します。次に事実関係を確認します。この際、情報が錯そうすることもあり、収集した情報から確実な事実を識別し、積み上げるようにして調査します。
②正式調査
初期調査で不祥事発生が間違いない場合には、調査チームを立ち上げて正式調査を開始します。この際、客観性確保のために外部の専門家をチームに招聘することや外部の有識者で構成する委員会を設置するケースもあります。
また、事実関係を明らかになった時点で、内部規程等に基づいて懲戒処分等を行います。
③再発防止策の策定
不祥事の原因を分析して再発防止策を講じます。不祥事の原因は個人の資質による場合もありますが、組織の在り方に問題があるケースも少なくありません。不祥事の直接の原因だけでなく、根本原因を特定して実効性のある再発防止策を抉ることが重要です。
④ステークホルダーへの対応(メディア、議会等)
正式調査結果や再発防止策等を報告書にとりまとめ、利害関係者に公表します。重大な危機発生時における利害関係者とのコミュニケーションはクライシスコミュニケーションとよばれます。クライシスコミュニケーションは、報告書のとりまとめの後に実施するとは限らず、①以降のどの段階においても必要に応じて適時の実施が求められています。
⑤再発防止策の実行
再発防止策の実行状況を適切にフォローアップできるように、責任者を明確にするとともに取組計画の工程表を作成して実施時期を明確にコミットすることが望ましいところです。フォローアップ状況は監査委員監査等においてもモニタリングすることが重要と考えます。
不祥事を次に活かす取組み
一度不祥事が発生すると、その対応のために多くのマンパワーが必要となるとともに、利害関係者からの信頼の喪失により様々な施策の進捗に支障が生じることもあります。また、懲戒処分により優秀な人材を失ってしまうこともあります。しかし、不祥事は平時では取り組むことが難しかった組織の重要課題を解決する契機になることもあります。多くの犠牲を利得のない単なる「損失」にせず、貴重な「教訓」に転化するためには適切な再発防止策を講じて実行することが重要です。
不祥事を契機とした内部統制の改善に向けたトーマツのご支援
不祥事の再発防止策が根本的な解決策であるほど、組織全体で一丸となって取り組む必要があります。しかし、そのような取組みは総論では賛同を得られても、実行する段階では様々な困難がつきものです。このような際には、外部の専門家が一歩離れた客観的な視点から取組みの方向性や選択肢を助言することで、組織内部の意見調整が円滑に進むことがあります。また、他団体での取組事例や内部統制改善プロジェクトの要諦をご紹介することで、試行錯誤する時間を節約できるメリットもあります。
有限責任監査法人トーマツ(以下、「トーマツ」)では、自治体だけでなく、民間企業や公的機関における内部統制改善プロジェクトの実績が多数あり、様々な知見をご提供することが可能です。もちろん理想は、不祥事が起きる前の段階でご相談いただくことですが、万が一の際に対応手順や再発防止策の有効性や客観性に不安を感じるのであれば、ぜひ一度トーマツにご相談ください。
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