調査レポート

内部通報制度の整備状況に関する調査2022年版

デロイト トーマツ グループが2022年10月に実施した「内部通報制度の整備状況に関する調査」の結果をレポートにまとめ、PDFデータを公開しています。本調査は、日本の組織の内部通報制度の現状を明らかにし、その有効性向上、高度化に資することを目的としています。

サマリ

日本企業の内部通報制度の状況

2016年から実施している調査すべてで内部通報窓口がある組織は90%超、外部窓口は本調査開始年の67.4%を除きすべて70%台とほぼ変化していません。2006年の公益通報者保護法施行から16年が経過し制度自体は多くの組織に浸透しているようですが、次のとおり、通報する者にとっての利用のしやすさには課題が残ります。

  • 認知度:制度を知っている
    ・9割以上の認知度がある組織は37.8%
  • 信頼性:制度(会社)を信用できる
    ・外部窓口が顧問弁護士のみ 41.8%
    ・通報対応にあたる担当者
      ・監査役または社外監査役 17.0%
      ・社外取締役 3.0%
  • メリット:通報者にメリットがある
    ・社内リニエンシー制度 「導入済み」および「導入予定」 20.0%
    ・報奨制度 「導入済み」および「導入予定」 5.5%
2022年版内部通報制度の整備状況に関するアンケート調査報告書

国内の内部通報制度に関する法令、認証制度

公益通報者保護法の一部を改正する法律(以下改正法 2022年6月施行)が施行された後初めての調査となりました。300名超の人員を有する組織では体制整備が義務付けられましたが、対応が済んでいない組織も多い結果となりました。

  • 公益通報者保護法令
    ・改正法に対応済み 57.1%
    ・11条指針*に対応済み 49.1%
    *公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針
  • 認証制度(内部通報制度認証制度/WCMS)
    2022年2月に休止したWCMSの代替となる制度があれば導入するか
    ・導入しない 20.3%
    ・わからない 61.3%

 

 

海外進出企業の状況

海外拠点を有する組織で海外組織における社内窓口があるのは60.0%、外部窓口は44.0%となりました。社内外ともに、日本と海外で別々に窓口を運用する組織と、グローバル共通で運用する組織はほぼ同数でした。

 

 

調査結果詳細

日本企業の内部通報制度の状況

過去すべての調査において、9割超の組織が社内窓口を設置済みであり、制度自体はほぼすべての組織で取り組み済みとなっています。しかしその中身には改善の余地があるようです。
  •  認知度
    従業員の内部通報制度の認知度は9割以上が最も多く37.8%となりました。また、認知度8割以上まで含めると55.8%と過半数を超えます。

    通報者が通報するに至るまでには少なくとも3つのハードルがあると考えられます。制度を知っている、制度(会社)を信用できる、通報者にメリットがある、といった段階を経てようやく通報に至るという考え方です。

    調査からは、第一のハードル“制度を知っている”=認知度にさえまだ改善の余地があることがわかります。通報制度が機能しているかを評価する指標として通報受信件数が着目されることが多いようですが、認知度に注目する方が合理的かもしれません。
内部通報制度の社内認知度(従業員の何割が認知しているか)
  • 信頼性
    第二のハードル“制度(会社)を信用できる”=信頼性に対しては、組織との利害関係が希薄で独立性の高い担当者を内部通報窓口とすることによる、隠蔽、もみ消しといった不安の軽減が寄与することを期待できます。本調査では、外部窓口を顧問弁護士のみとする組織が2020年から13.9pt減少し、41.8%となりました。今後も減少傾向が続くものと思われます。
外部窓口

また、組織内の体制においては、通報対応する監査役(社外監査役)は17.0%、社外取締役は3.0%にとどまりました。
すべての通報が利益相反のリスクが低い監査役や社外取締役に共有されることは、通報者の疑念の軽減につながります。監査役、社外取締役がすでに設置されている組織にとっては、新たな費用が発生することもありませんので、労務問題などの職場で発生する諸課題を受け付ける制度と上手に切り分けることができれば、公益通報に対応する仕組みとして、より取り入れやすいのではないでしょうか。

内部通報の対応窓口となる部門(複数回答)
  • メリット
    第三のハードル“通報者にメリットがある”=メリットの代表的なものにリニエンシー制度や報奨制度があります。「導入を検討してない」はいずれの制度でも過半数となりました。「導入済み」および「導入予定」を合わせると社内リニエンシー制度は20%、報奨制度では5.5%です。社内リニエンシー制度については「人事規程等で規定される賞罰を適用する」というフリーコメントも見受けられ、新たに制度を設けず既存の仕組みを活用している組織もあるようです。

    内部通報制度は、自組織の不正を、行政への通報やソーシャルメディア、マスメディア等外部への公開に至る前に対処することを目的とする、組織にとっての重要な制度です。しかし、組織だけでなく通報者自身にも利益がなければ通報する人は増えないでしょう。

    また、近年ソーシャルメディアに組織の内情を暴露する投稿が見られようになりました。インフルエンサーによる拡散を経てマスメディアに取り上げられる事例も発生しています。スマートフォンでの録音、録画も容易にできるようになりました。幼いころからソーシャルメディアに親しんだ世代が社会人の多くを占めるようになると、メリットがなければ通報などしない、という傾向がより増加していくのではないでしょうか。
社内リニエンシー制度、報奨制度の導入状況

高い倫理観をもつ従業員が内部通報制度を知っていて(認知度が高く)、組織が信頼されており(信頼性が高く)、なおかつ通報者個人に対してもなんらかの見返りがある(メリットが大きい)とき、組織にとっての有益な通報が促されるものと考えます。

 

 

国内の内部通報制度に関する法令、認証制度

  • 公益通報者保護法令
    「対応済み」と回答した組織は改正法が57.1%、11条指針が49.1%と8.0ptの差がありました。さらに「わからない」と回答した組織は、前者が8.0% 後者が17.3%と差が9.3ptとなりました。改正法には対応した一方で、11条指針は「知らない」「わからない」との回答が一定数あります。体制整備および通報対応における具体的な事項が記載されているため早急に対応されることが望まれます。
改正公益通報者保護法と11条指針それぞれの対応状況

組織の人数規模別にみると、体制整備義務が明記された300名*を境に傾向の差が見られました。300名以上の組織のほうが整備は進んでいましたが、「知っているが内容は確認していない」「知らない」「わからない」を合わせると32.2%(11条指針においては39.0%)となりました。体制整備義務が課された組織でも未対応の組織が一定数存在しています。今回の法改正では、守秘義務違反による窓口担当者個人に対する刑事罰が設けられました。300名超の組織で、改正法対応が済んでいない場合はリスクが高い状態にあることに注意が必要です。

一方、改正法および11条指針の対応を尋ねたいずれの設問においても、体制整備が努力義務である300名未満の組織においての最多回答は「対応済み」でした。

*改正法では”300名超”の組織に体制整備義務が課されたが、本調査の設問は”300名以上”

改正公益通報者保護法の対応状況 (300名未満、300名以上の組織別)
11条指針の対応状況 (300名未満、300名以上の組織別)
  • 認証制度
    2022年2月の内部通報制度認証制度(WCMS)の休止後初の調査となりました。後続の制度については、「導入しない」と「わからない」を合わせると81.6%となり、多くの組織で制度には積極的でない姿勢が明らかになりました。

    一方で導入検討したいとする組織では、僅差ではありますが以下の選択肢が優位でした。
    「合理的であれば基準にとらわれず導入検討する(7.2%)」
    「WCMSよりも安価なコストであれば導入検討する(3.5%)」
    「第三者が認証する制度であれば導入検討する(4.8%)」
    審査基準の難易は問わないが、コストはWCMS以下で第三者による認証を得られる制度が求められているようです。
WCMSの後継の認証制度に求める内容(複数回答)

海外進出組織の状況

COVID-19の流行のため、出張に行けず現地の状況がわからないという声があります。そのような状況下でも海外組織からの不正の端緒を発見するために有効な手段の一つが内部通報制度です。

海外進出している組織の60%が海外拠点の社内に内部通報窓口を設置済みであり、外部窓口の設置も44.0%となりました。窓口をグローバルで統一している組織、海外組織と日本でそれぞれ別に運用している組織がほぼ半数という内訳でした。

内部通報制度の有無(海外拠点あり組織に限定)
内部通報制度の外部窓口の有無(海外拠点あり組織に限定)

日本国内の窓口設置率が90%を超えていることから、海外拠点の窓口設置も今後同様に進んでいくものと思われます。しかし、ボトルネックとなっているのが個人情報の国外越境を制限する法規制のようです。内部通報は高い確率で個人情報を伴うため、特にグローバルで統一した窓口をいずれかの拠点に設置する、という方法がとりづらいことがその要因です。

課題となる外国法令では個人情報に関するものが最も高く4年前からほぼ変化がありません。その他の法令を懸念点とする組織も少なくはありませんが年々低下しています。

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