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内部通報制度

期待される企業の自浄作用

法令違反等の早期発見と未然防止を主な目的として設置される内部通報制度について解説。公益通報者の保護の行い方、望ましい組織制度、制度設計、運用のポイントについて。

1.内部通報制度とは

内部通報制度は、法令違反等の早期発見と未然防止を主な目的として設置されることが多く、組織内外の者からの申告を受付け、調査・対応するために会社の内部に整備される制度です。 法令違反、規程違反、セクハラなどの個別の問題を処理するだけでなく、企業風土、内部統制の改善を行なうことを目的とする場合もあります。

 

内部通報制度を構築していない場合または構築していても形骸化してしまっている場合、以下のようなリスクにさらされる可能性があります。

・通報の内容が社内外に漏れる

・職場のパワハラ、セクハラ行為が助長される

・不正行為の発見が遅れる

2.通報者の保護

内部通報に関連する法律として、2006年4月1日に施行された公益通報者保護法がありその中で公益通報を行った通報者の保護が明確に定められています。 公益通報に該当しない場合でも、以下の観点で通報者保護を行うことで、有用な通報が期待できます。

1.内部通報を行ったことによって、不当な取扱を受けない旨を明確に定める 

2.内部通報の受付者、調査実施者に厳正な秘密保持を課す 

3.内部通報の受付手段や各種記録類の取扱い、保管方法等について、機密保持を考慮した設備・運用方法を整備する

3.内部通報制度の組織制度

内部通報制度を有効に機能させるためには、以下のような組織を設置することが望ましいでしょう。

所管部門には少なくとも2名以上の複数の担当者を設置することが多いです。これは、通報受信者による隠蔽、担当者自身が告発される対象である場合に通報できない事態を防止するためです。

 

所管部門

役割…内部通報受付窓口、調査実務

詳細…法務部門、コンプライアンス部門、人事労務部門、監査部門が担当することが一般的です。

内部通報受付窓口のみ外部事業者に委託を行なう場合もあります。全員が顔を知っている規模の会社、その反対に大規模な事業者で通報件数が多数に上る場合は外部に委託するメリットを享受しやすいと考えられます。

 

委員会組織

役割…所管部門の監督

詳細…内部通報受付窓口を担当する部門とは別に、どのような調査を実施しその結果を通報者へどのように伝えるかを検討する等、内部通報受付窓口で受付けた案件の処理・調査状況の監視を行なう委員会を設置することを推奨します。内部通報受付窓口と別の組織体で対応することで、担当者への業務の集中と隠蔽を防ぐことができます。また、対応未了案件の長期間放置を防止することにも役立ちます。

4.内部通報制度の制度設計

対応する範囲を拡大すれば事務処理の負担とコストが増大しますが、広範な事案を収集することができリスクが顕在化する前に対処できる可能性が高くなります。メリット、デメリットを考慮し、各組織に合った制度を設計しましょう。

 

受け付ける内容

1.通報

2.相談・提案

 

通報対象者

1.社員(正社員、パート社員、アルバイト)

2.派遣社員、請負先の従業員

3.取引先の従業員

4.社員の家族

5.退職者

6.消費者など

 

内部通報受付窓口

1.社内担当部署

2.社外(通報受付専門会社、法律事務所)

 

受付時の匿名性

1.匿名ではない(記名、顕名)

2.匿名

 

匿名性の確保

1.社外の窓口担当者以外は匿名の取扱い

2.委員会等においても匿名の取扱い

 

受付手段

1.電話(就業時間内・外)

2.郵送・電子メール・FAX

3.面談

5.内部通報制度の運用

5-1.受付内容の仕分

内部通報受付窓口の担当者は受付けた内容を下記の仕分事項に基づいて分類し、分類結果に応じて調査実施の必要性、通報者への継続フォロー、他部署への連絡、及び委員会の開催等の対応方針等を検討します。

 

通報内容の分類

・通報か相談か、もしくはそれ以外か

・法律違反なのか、社内規程違反なのか、倫理違反なのか

・具体的な事実が特定されているか、漠然とした内容なのか

 

匿名性の確保

・匿名かどうか

・匿名の場合の通報者への連絡方法はどうするか

 

通報内容の評価

・緊急かどうか

・信憑性はどうか

・重要性(リスク)が高いか

・調査が必要かどうか

・委員会開催が必要かどうか

 

5-2.調査

通報内容を評価し、緊急度、信憑性及び重要性から調査の要否を判断します。調査が必要な場合、時期、手法及び範囲を選定します。調査にあたっては、関係者・部署間において情報管理と秘密保持を徹底することが求められます。 なお、必要に応じて社外の専門家(監査法人、弁護士等)による調査を検討することも有用です。 調査の手法には以下の様なものが考えられます。 

①該当部門への調査と同時に、関係のない部門へのダミー調査

②調査対象より広い範囲で調査

③定例の内部監査の一環として調査 

 

5-3.是正措置及び再発防止策の実施

調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、速やかに是正措置及び再発防止策を講じます。必要がある場合には、関係者の処分や関係行政機関への報告等を行います。

 

5-4.報告

内部通報受付けから調査の実施、是正措置及び再発防止策までの一連の事項について、通報者、コンプライアンス委員会及び取締役会等の経営層への報告を行い、必要に応じて組織内外へ案件の通知等を行います。

6.内部通報制度の運用のポイント

導入時

・内部通報制度の趣旨の説明

・内部通報制度の認知度向上活動(ポスター掲示、携行カード配布、社内イントラネットで周知)

 

導入後 

・通報への誠実な対応

・受付対象の見直し(法令違反のみでなく、業務改善についても受け付ける。記名、顕名のみでなく匿名も受け付ける、外部事業者の窓口を活用するなど) 

・定期的な趣旨説明

・通報件数の社内での公表

・公開できる事案について事例の社内での公表(組織風土の改善など)

7.企業グループにおける内部通報制度

各社それぞれで内部通報制度を整備し、運用状況についてグループ間で情報共有を図る方法、通報受付窓口のみをグループで共通化し、調査・対応は各社で実施する方法、又は、通報受付から調査・対処体制までグループで共通化する方法があります。

 

パターン1

通報受付…各社

調査対応…各社

 

パターン2

通報受付…親会社

調査対応…各社

 

パターン3

通報受付…親会社

調査対応…親会社

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