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NRIセキュアテクノロジーズ株式会社主催セミナー「顧客体験価値(CX)の形成において顧客ID/アクセス管理(CIAM)が果たす役割とは」開催報告レポート

セッション「顧客視点で考えるサイバー・プライバシーリスクへの備え~昨今のトレンドから読み解く、B2Cサービスに求められる重要成功要因~」(2022年10月19日開催)

デロイト トーマツ サイバー合同会社の柏井 茂達は、NRIセキュアテクノロジーズが主催するセミナー「顧客体験価値(CX)の形成において顧客ID/アクセス管理(CIAM)が果たす役割とは」に登壇し、「顧客視点で考えるサイバー・プライバシーリスクへの備え~昨今のトレンドから読み解く、B2Cサービスに求められる重要成功要因~」をテーマに講演しました。本ページでは開催レポートとして講演内容をご紹介します。

デジタルビジネスを取り巻く環境~ビジネス拡大における“顧客の信頼”の重要性~

技術発展やそれに伴うDX推進、さらにCOVID-19によるパンデミックなどを背景に、ビジネスシーンにおけるデジタルの活用は当たり前になった。それだけでなくデジタル空間での新たな価値創造や、生活様式の変化に対応したオンラインサービス利用のニーズもますます増えている。

しかしオフライン/オンラインに関わらず、顧客から信頼を得ることの重要性は変わらない。約81%が「ブランドへの信頼」を購買決定の決め手としているという調査結果*1も出ており、多くの顧客がデジタルであっても企業への信頼に重きを置いて行動する動きがみられる。

デジタルビジネスにおける顧客との信頼構築には、優れた顧客体験や安心・安全が重要な目線となると考えられる。

*1 2019 EDELMAN TRUST BAROMETER SPECIAL REPORT: In Brands We Trust?
 

<安全の構築>

信頼構築の土台を形成するためには、まずシステム面(顧客ID管理CIAM)で安全性を担保した設計構築を行うことが重要な要素となる。

<安心の醸成>

そして安全な土台を築いたうえで情報の扱いについて透明性、一貫性を持ちメッセージを発信していくこと、情報を自身でコントロールできる機能を提供することが顧客の安心につながる。

<優れた顧客体験>

さらに安心・安全の醸成により顧客とのエンゲージメントを深めることで、顧客から預かったデータを活用し、よりパーソナライズされた優れた顧客体験の提供が可能となる。


こうした安心安全の積み重ねと、優れた顧客体験の提供によって顧客と深い信頼関係を築くことができ、パーソナルデータをもとにさらなるサービス品質の向上に繋げることで、より信頼して顧客がサービスを利用する、そうした正のスパイラルを生み出すことが、デジタルビジネスにおける理想的な状態であると言えるだろう。

マーケットトレンドから読み解く顧客の信頼獲得の重要性
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サイバー・プライバシー領域のトレンド ~デジタルビジネスにおける”安心・安全”ニーズの高まり~

一方、デジタルビジネスを取り巻くサイバー・プライバシー関連の状況はどうか。社会情勢の悪化によって重要インフラなどへのサイバー攻撃や、サービスを利用している顧客個人への攻撃は依然として活発に行われている。また、サービスを企画展開する上で法規制対応は重要なポイントになっており、デジタルビジネスにおいて安心・安全への備えは欠かせないと言えるだろう。

また、こうした外部環境の変化に伴いプレイヤーの対応も変化している。

グローバル巨大IDプロバイダーがサードパーティークッキー(3rd party cookie)規制やデバイスID取得規制など、顧客のプライバシー保護を自ら牽引し、加速させていることは周知の通りである。また、グローバルと比べるとキャッチアップ過程に見えるが日本国内でも安心・安全なサービスの提供を企業メッセージとして発信している。急動する世界情勢や大手プレイヤーの動きによってグローバル全体でデジタルビジネスにおける安心・安全の基準は高まっており、同時に顧客の期待も高まっていると考えられる。

デロイト トーマツでは様々なクライアントに対しアドバイザリー業務を行っており、先に述べた安全の土台となるCIAM基盤の構築を中心に、安心・安全をより高いレベルで提供することに重きをおいた先進的なケースまで幅広く実績を有している。近年では高まる安心・安全の基準に応えるための相談や、更に安心・安全のレベルを高めていくための相談が徐々に増えつつある状況にある。

サービス企画・展開時に押さえるべき重要ポイント

前述した通りデジタルビジネスの理想は、顧客と信頼関係を築き、それを元にサービス品質を高めることでより信頼関係を深めていくという正のスパイラルに引き起こす状態を作ることである。

経産省が行った消費者意識調査(外部サイト)では全体の70.4%が「金銭的利益やポイントに左右されず、個人情報の提供に非常に慎重である」と回答し、38.2%は「割引などの金銭的利益やポイントの有無にかかわらず、企業やサービスを信頼できるか見極めたうえで慎重に行う」と回答している。データビジネスの発展や、パーソナルデータのカスタマイズは顧客との信頼関係が構築されたうえでないと成り立たないことがわかるだろう。

サービス企画・開発におけるあるべき姿・アプローチ
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顧客との信頼関係構築は、サービス企画の段階から安心・安全を重視し、土台となる顧客認証基盤を固め、中長期に渡って顧客とのコミュニケーションを重ねることが重要である。

一方で、多くの関与者やコスト、時間がかかる中で、このようなボトムアップ的な視点でのアプローチを取り入れることやあるべき姿に向けて一丸となって動くことは容易ではない。

組織の壁や現実的な課題が多く混在する中で、サービスのUXリッチ化が先行し、安心・安全が後回しになってしまうという逆順アプローチが一般的となり根付いているのではないかと考えている。こうした状況でのサービス展開は短期的には有効であっても、中長期では顧客との信頼構築ができず離脱するケースや、安心・安全の隙をついた攻撃を受け、大きなインシデントにつながるケースも考えられる。

こうした中でデロイト トーマツなどの第三者の専門家を活用することは1つの対応方法として有効である。ニュートラルかつ顧客に近い目線でサービス、事業のあるべき姿を描けることは外部専門家を活用する最も重要な意味だと考える。

急速に発展するデジタルビジネスにおいて顧客との信頼構築は重要な要件であり、外部環境の変化、顧客の期待の高まりから、安心・安全をビジネスの初期段階から固めていくことが成功のカギとなる。今後日本国内でこうした取り組みが本格化していく中、デロイト トーマツは日本の将来を支えていけるようなより良いサービスの構築を皆様と共に考え、インサイトを提供していく。

登壇者

デロイト トーマツ サイバー合同会社
柏井 茂達

国内大手事業会社にて、大規模ソフトウェア開発のプロジェクトマネジメントや海外事業者との業務連携に従事。顧客ID基盤のセキュリティ戦略立案・企画・運用業務を経て現職であるデロイトトーマツに入社。現職では、主に顧客ID基盤(B2C/B2B/G2C等)に係る構想策定、デジタルアイデンティティガイドラインの策定、不正検知対策(リスクベース認証/ATO防止)等の業務を担当。

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