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不正監査 ~不正に強い組織となるための内部監査~

内部監査の新潮流シリーズ(3):不正に強い組織となるために内部監査部門による検証・評価が重要です

内部監査は不正を発見すること自体が目的ではありませんが、企業の活動をモニタリングする役割を担う立場の内部監査人に対する不正の防止・発見への役割期待は大きいといえます。内部監査では「ルールがあるか、牽制が実施されているか」という観点だけの監査ではなく、「不正が起きにくい組織となっているか」という観点から監査を実施することも重要であり、不正に強い組織となっているかを検証、評価する必要があります。

デロイト トーマツでは、「内部監査の新潮流」と題して内部監査のトピックスを全24回にわたり連載いたします。前半は、内部監査の基礎となる事項をとりあげ、後半は次世代の内部監査に求められる最新のトピックスを取り上げます。全24回の詳細はこちらのページをご覧ください。

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不正に対する内部監査の役割

不正が生じないようにすること自体が企業の最終目的ではありません。しかし、企業の存続を危うくするような不正が生じないことは、企業が健全に経営され、成長していくための前提となる条件です。したがって、内部監査は不正を発見すること自体が目的ではありませんが、企業の活動をモニタリングする役割を担う立場の内部監査人に対する不正の防止・発見への役割期待は大きいといえます。内部監査人は、不正対応に関する期待に応えるために、不正に関する最低限の知識を身につけること、不正に対して正当な懐疑心をもって監査を実施することが必要です。

不正に強い組織

不正の定義はいくつかありますが、2008年7月に、米国公認会計士協会、公認不正調査士協会、内部監査人協会が公表した「企業不正リスク管理のための実務ガイド(Managing the Business Risk of Fraud: A Practical Guide)」によれば、「不正とは他人を騙すことを目的とした意図的な作為あるいは不作為であり、結果として、損失を被る犠牲者が発生し、かつ(あるいは)不正実行犯が利益を得るものである。」と定義されています。不正発生のメカニズムについては、犯罪心理学者クレッシー(Donald R. Cressey)が実施した調査から設定した仮説である「不正のトライアングル」があり、不正のトライアングルの3つの要素(動機・機会・正当化)が揃うと不正が生じやすくなると言われています。不正防止の観点からは、不正のトライアングルが揃わないような対応策を考えることになります。「動機」や「正当化」は個人の心の状態であって企業がコントロールすることは難易度が高いため、「機会」を低減すること、つまりルールや牽制を厳しくするところに力点が置かれてきました。また、「機会」を低減すれば十分というわけではなく、「動機」や「正当化」を生じさせないような組織となるための取り組みも必要です。

不正に強い組織とは、不正に対する内部統制が適切に整備・運用されている組織であり、また、不正に関する相談窓口等が有効に機能して不正を早期に発見するようなモニタリングが継続的に実施されている組織といえます。「ルールがあるか、牽制が実施されているか」という観点だけの内部監査ではなく、「不正が起きにくい組織となっているか」という観点から監査を実施することも重要です。

 

不正に対する内部監査の留意点

不正に強い組織、つまり不正を防止・早期発見する組織となっているかどうかを内部監査部門が検証、評価することが期待されています。不正防止・発見のための監査でも通常の監査とステップと大きく変わりませんが、監査人が意識すべきポイントが加わります。

まず、計画の段階では、不正に関するリスク評価を行うことが必要です。不正リスク評価は、監査対象部門だけを対象に実施する場合もあれば、監査対象部門を選定するために実施する場合もあります。不正リスクを評価する際には下記の観点が重要です。

  • 属人的な組織となっていないか
  • 不正に対する組織のガバナンスが適切に機能しているか
  • 不正に対応する内部統制は適切に整備・運用されているか

次に、実施の段階では、計画の段階で識別した統制が不正に対して有効に機能しているかどうか、結果的に監査対象部門の不正リスクがどの程度低減されているかを評価します。通常の内部監査と同様に想定される統制手続が有効に整備・運用されているかどうかを検証することになりますが、不正防止・発見の内部監査を実施するにあたっては、下記の点に留意することが必要です。

  • 一般的な動向、同業他社の動向等をある程度知っておく
  • 自分がおかしいと思い、追加の質問や資料の提出を依頼した場合、その入手をあきらめない
  • インタビューにおいて説明の非合理性を見逃さない
  • 不正が行われている可能性が高いと感じた場合、抜き打ちの資料依頼等の無理なお願いをする

最後に、報告の段階においては、不正リスク識別や不正リスクに対応する監査について、監査対象部門の理解を得るのは難しいことも多いと考えられます。監査結果の報告だけでなく、不正リスク要因の説明を行う、アンケートや評価結果を開示して理解を求める等不正リスクマネジメントの重要性について啓蒙する場としても利用することが望まれます。

不正に対する内部監査の留意点
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不正を発見した場合の内部監査人の対応

内部監査の過程で不正を発見した場合、速やかに経営者に報告する必要があります。特に公表された過年度の財務諸表に影響を与えるような場合には、上場企業であれば有価証券報告書等の訂正報告書の提出事由に該当する可能性もあるため、社長および財務最高責任者に即座に報告する必要があります。また、その後の不正調査については、特定の不正調査部門がないのであれば、内部監査部門が中心的な役割を果たすことが必要です。不正調査は、不正の規模・手口次第では迅速かつ専門的な対応(証拠の入手・保管等)が必要となることも多く、外部専門家を利用することもあります。不正調査後の是正策の策定にあたっても、独立的な部門として中心的な役割を果たすことが必要となりますが、同様の不正が再発しないよう、徹底的な再発防止策を実施することが必要です。

 

不正監査のポイント

不正監査のポイントとして、主に不正に強い組織となるための内部監査についてご紹介しました。

近年、企業不正に関する報道は後を絶たず,中には企業の存続を危うくするような事態に発展する場合もあります。また、不正会計だけでなく、品質管理や安全管理といった企業のサービスと信用に直結するような業務に関する不正も多く発生しており、企業の経営に重要な悪影響を与えています。さらに、不正行為による直接的な損害だけでなく、企業の評判や信頼を落とし、将来的な利益に大きな影響を与えるような事例も多くあります。

このような状況の中で、内部監査人への不正の防止・発見に対する期待が大きくなっていることから、内部監査では、不正に強い組織、すなわち不正が起きにくい組織となっているかという観点から監査を実施することが重要です。内部監査人には、不正に関する最低限の知識を身につけること、また、不正に対して適切な懐疑心をもって監査を実施することが今まで以上に求められています。

 

これらの内容につきまして、詳しくは「内部監査実務ハンドブック」をご覧ください。

 

また、トーマツでは「次世代の内部監査への変革を本気で取り組もう」という会社様向けに「次世代内部監査提言サービス」を始めました。外部品質評価(診断)や内部監査ラボなどを通してInternal Audit 3.0フレームワークとのFit & Gap分析を実施し、各社の実情に合った次世代内部監査モデルを提言いたします。ご興味のある方はぜひトーマツの内部監査プロフェッショナルまでお問い合わせください。

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