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上場企業における不祥事対応のプリンシプルについて

不祥事により失った信頼を速やかに回復するために

2016年2月24日に日本取引所自主規制法人は「上場企業における不祥事対応のプリンシプル」の策定を公表しました。 上場企業にとって、重大な法令違反その他の不正・不適切な行為等は、直接または間接的に企業に損失を生じさせる可能性があり、また、その影響が中長期的に及ぶ可能性があるため、企業を取り巻くステークホルダーからの信頼を失い、企業価値を大きく毀損する原因となります。このような不祥事により失ったステークホルダーからの信頼を速やかに回復し、再生を図るため、上場企業に求められる行動原則と位置づけられる本プリンシプルについて解説します。

上場企業の不祥事多発をうけプリンシプルが策定

近年、大手の上場企業による不祥事が多発しています。不正会計や、製品の品質を改ざん、労働基準法を違反した過剰労働など不祥事が指摘され、大きく報道されています。

不祥事はその内容を問わず、企業価値の毀損を招きます。前述のような不祥事が発生した上場企業では、ステークホルダーの信頼を回復するに足る原因究明や再発防止を行うことが期待されます。

しかし、企業の中には、不祥事に対する調査結果を公表し、改善過程に入った後に、同様の不祥事を複数回にわたり公表するなど、当初の調査範囲に疑念が呈されるケースや、調査体制の不十分さ、情報開示の遅れが指摘されるケースもあります。

その結果、ステークホルダーの信頼回復を阻害し、資本市場全体の信頼性を損なう恐れが生じたため、上場企業で起きた不祥事に対する共通の行動原則が必要となり、本プリンシプルが策定されました。

プリンシプルは不祥事対応に失敗しないための行動原則である

上場企業の不祥事は多様であり、その発生には各企業の企業文化が深く影響するため、不祥事への具体的な対応を一律のルールとすることは困難です。そのため本プリンシプルは、不祥事に対する対応策の根底にあるべき共通の行動原則として策定されました。ルールではないため、違反したことを直接の理由として罰則が科されるものではありません。

本プリンシプルは、上場企業が不祥事に対応するにあたり、失敗しないための行動原則として活用することが可能です。

不祥事対応プリンシプルの4原則

本プリンシプルは以下の4つの項目からなります。

1. 不祥事の根本的な原因の解明 

上場企業は自律的に不祥事の根本的な原因を解明し、その結果ステークホルダーからの信頼を速やかに回復することが期待されています。

また、調査環境の整備にあたっては、企業の事業や戦略を理解しつつ、非執行者として経営陣から独立の立場にある独立役員、すなわち独立社外取締役、独立社外監査役の果たす役割が期待されています。

2. 独立性・中立性・専門性の確保    

経営陣による不正や、経営陣が構築、運用する責任をもつ内部統制の有効性に疑念がある場合、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者を活用することの有用性が指摘されています。

第三者による調査を実施するという形式だけを整え、経営陣におもねった調査が行われることないよう、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性の確保への十分な配慮が求められています。

3.実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行 

ステークホルダーからの信頼を回復するためには、根本的な原因に即した実効性の高い再発防止策の策定・実行が不可欠です。

また、実行後はその運用定着をモニタリングし、再発防止に向けて継続的な改善活動を含む、自律的な対応が求められます。

4.迅速かつ的確な情報開示

ステークホルダーは企業内部者よりも情報を得にくいので、不祥事に対するステークホルダーからの信頼を回復するためには、不祥事の把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行うことが求められます。


詳しくはこちらをご覧ください。
「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の策定について(外部サイト PDF)

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