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デジタル時代の最重要キーワード“採用ブランディング戦略”構築のキーポイント
デジタル時代の“採用”において、現在最重要キーワードとも言える“採用ブランディング”。デロイト トーマツ コンサルティング合同会社Deloitte Digitalデジタルストラテジーとヒューマンキャピタルが協働、独自に開発した“採用ブランディング/マーケティング”戦略とその推進ポイントを、国内外グローバル先進企業の事例を交えながら紹介します。
目次
- 新しい時代の到来?~デジタル時代における“採用”の重要性~
- 新時代の採用におけるトレンドの変化
- 新時代の最重要キーワード“採用ブランディング”戦略の構築
- 採用応募者800%UP。GEに学ぶ、徹底的な採用ブランディング戦略
- 採用ブランディング/ マーケティング戦略構築におけるキーポイント
新しい時代の到来?~デジタル時代における“採用”の重要性~
- 世界的に労働人口は減少トレンドにあり、今後「人材の獲得とリテンション」が経営における最重要課題に押し上げられることが予想される。
- 人材の量的な課題の他にも、主要な労働力がジェネレーションX/YからジェネレーションZなど“ミレニアル世代”へとシフトしてきていることにより、労働人口の職業選択における嗜好性が大きく変化している等、人材の質的側面においても企業側の対応が迫られる時代になっていると言える。
- 人材の量・質双方の側面から大きな変化が訪れているこの新時代において、「人材獲得(採用)」の難易度・重要性は飛躍的に上がると推測される。デロイトのグローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2017からも、実際に全世界の経営者・役員・HRリーダーたちの10人に8人以上(約83%)が「採用」が重要(もしくは非常に重要)と考えていることが分かる。
全世界の経営者・役員・HRリーダーたちの10人に8人以上(約83%)が「採用」が重要(もしくは非常に重要)と回答
採用:「重要」または「非常に重要」と回答した回答者の割合
新時代の採用におけるトレンドの変化
- 重要性が増している採用のトレンドが、デジタル化により大きく変化していることはチェックしておかなければならないだろう。
- キャンパスリクルーティングやリクルーターの活用といった旧来の“対面型(オフライン)”採用は終焉を迎え、デジタルツール(Website, SNS, Video等)を駆使し、ブランディングに成功した企業のみが勝ち残る時代が到来したことが最も大きなトレンドの変化である。デジタル化とともに急速に進むグローバル化においても、国境を越えられるデジタル(オンライン)のツールは非常に有用であると考えられる。
新時代の最重要キーワード“採用ブランディング”戦略の構築
- このようなデジタル化により急速に変化する採用領域において、近年最もホットなキーワードが“採用ブランディング”である。
- 「人材不足」・「売り手市場」の時代において、企業は「認知を高め」、「採用候補者を引き寄せ」、最終的には「企業のファンになってもらう」ことが必要である。採用候補者を、その企業の“ファン化”する活動が、“採用ブランディング”である。
- 採用候補者の職業選択における行動を見てみると、効果的に採用ブランディング/ マーケティングを実施できている企業においては、Attention(企業を認知する)→Interest(企業に興味を持つ)→Search(企業を調べる)→Action(企業に応募する)→Share(企業を他者へ紹介する)の全てのプロセスにおいてその企業のブランドイメージ・好感度を高めることに成功していることが分かる。
採用応募者800%UP。GEに学ぶ、徹底的な採用ブランディング戦略
- 採用ブランディング先進企業の事例として今回はGeneral Electric社(GE)を取りあげる。
- GEは事業戦略の変革を背景に、これまで全社横断的に点在していたデジタル関連機能を1つに集約し、一昨年新たにGE Digitalを発足した[1]。
- GEはこのGE Digital立ち上げを契機に徹底的な採用ブランディング戦略を推し進めた。その結果として大成功をおさめたのが、彼らが生み出した全く新たな採用ブランディングキャンペーン“What’s the matter with Owen”キャンペーンである。GEのエンジニアとして入社が決まった架空の人物“Owen”君を題材にした30~40秒ほどのショートムービーがシリーズ化されTVCM・YouTube等で公開されると大きな話題となった。Facebook等SNSでも拡散された結果、「採用応募者800%UP」と「彼らの採用サイトへの流入が 66%UP」という驚異的な数字をたたき出した[2]。
- ストーリーもシンプルでストレートかつ自虐的なユーモアを含んでおり、つい誰かに教えたくなるような中毒性をはらんだ拡散型コンテンツとなっている。
動画サンプル What's The Matter With Owen? - "Hammer" - GE -(外部サイト)
[1] GE プレスリリース(外部サイト)
[2] Employer Re-Branding: What to Learn from GE’s Multimillion Dollar Ad Campaign, jibe (Emily Check) (外部サイト)
採用ブランディング/ マーケティング戦略構築におけるキーポイント
- 魅力的なデジタル採用ブランディング/マーケティング戦略を構築している企業に共通しているポイントは、1.採用ターゲット策定(WHO)2.Core Brand Essenceの定義(WHAT)3.クリエイティブ戦略/開発(HOW)を一気通貫で、統合的に考えている点である。
ポイント1. WHO(誰に?) - 採用ターゲットの策定
- グローバル/ローカルで採用しようとしている候補者を彼らの特徴・嗜好性も含めて把握し、採用ターゲットとして可視化できるか?
ポイント2. WHAT(何を?) - Core Brand Essenceの定義
- その会社“らしさ”を、経営理念・ミッション/バリュー・歴史・現マネジメント/従業員の想い等より紡ぎ出し、Core Brand Essence (CBE) として定義できるか?
- 加えて、そのCBEは採用ターゲットに対して訴求力が高いか?競合他社と比べて本当にユニークなのか?を分析し、煎じ詰めていく。
ポイント3. HOW(どのように?) - クリエイティブ戦略/開発
- Video・Game・Blog等のツール含め、Website・SNS等チャネルのあり方が複雑化する中で、それらの統合的・効率的な活用方法を戦略として考えることができるか?
- これまでの戦略も重要である一方、最終的に開発するもの(Website・Video等)の質の高さ・洗練度が全てを決めると言っても過言ではないため、開発における適切なパートナー選定・投資等も非常に重要なポイントとなる。
- いくら綺麗なブランド戦略(ターゲット定義やCore Brand Essence策定)を描いても、実際にそれを体現するクリエイティブ(Websiteや SNS等)が伴わないことには意味がない。反対に、いくら綺麗にクリエイティブを作りこんでも、それを届けるターゲットや入念に紡ぎ出されたその企業“らしさ”(Core Brand Essence)とリンクしていなければまったく意味を持たない。WHO・WHAT・HOWの統合的ブランド戦略の構築が重要である。
- 先に紹介したGEはDigital Industrial Companyへの変革に向け、新たな採用ターゲットの策定・新たなCore Brand Essenceの定義・新たなチャネルの活用を、統合的・一気通貫で実施していた。さらに、GEは「What’s the matter with Owen」キャンペーンのような対外的なブランドコミュニケーションだけでなく、内部の人事/採用施策についても次々と新たなものを導入しており、名実ともに徹底的なブランディング戦略を推進していると言える。懐疑的な嗜好性を持つと言われている現代のミレニアル世代にとって、“口先だけでない”ブランディング活動も大きなポイントになってくるのではないだろうか。
結び
- 採用の重要性・難易度は日に日に高まっており、魅力的な採用ブランディングの構築は、外資系・日系企業に関わらずグローバルでの認知を高めたい全企業にとって取り組むべき一大アジェンダとなっている。
- 1. 採用ターゲット策定(WHO)2. Core Brand Essenceの定義(WHAT)3. クリエイティブ戦略/開発(HOW)を「一気通貫」で、「統合的」にブランド戦略へと昇華させること、また“口先だけでない”ブランディング活動として、具体的な社内施策として“実行する”ことこそが、成功のファクターとなるといえるであろう。
お問い合わせ:
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
Deloitte Digitalデジタルストラテジー 和氣 恵美子
Direct Mobile: +81 80 9882 9403 | email: ewake@tohmatsu.co.jp