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意思決定を可能にする検討推進、判断ミスをしないM&A検討

ステークホルダーへの説明責任を果たす合理的な投資の意思決定

コーポレートで策定された成長計画に基づきインオーガニックな成長目標を課された各事業部門では、「買収ありき」でM&A検討を進め、描いた将来像を実現できないという失敗例は枚挙にいとまがない。ステークホルダーから支持を獲得し、失敗の可能性を低減する投資意思決定とはどのようにあるべきか。M&Aディールエグゼキューションにおいて責任者が知っておくべき検討の進め方を考える。

事業戦略を具現化するM&Aディールエグゼキューション

多くの企業でM&Aを含めた成長が求められる中、十分かつ慎重な検討が行われないまま投資や買収の意思決定がなされ、実行後に収益計画からの下方乖離が生じてしまうケースは少なくない。「買収ありき」ではなく、明確かつ合理的な意思決定に基づく検討推進を実現するためにはどのような検討プロセスを確立すべきなのか。M&Aの検討プロセス全体に亘り、ディール検討責任者および関係者の取組に事業戦略目線を根付かせ、判断を行うための情報の整理が重要となってくる。ステークホルダーに対して説明責任を果たし、M&A取引を介して事業戦略を具現化させるために、エグゼキューションステージにおける重要な要素を考える。

  • M&Aの目的定義
  • 意志を持ったデューディリジェンス
  • 意思決定のフレームワーク

M&Aがエグゼキューションステージに入るとき、そのM&Aで何を得るのか、組織の事業戦略に根差したM&Aの目的を定義することが重要である。検討プロセスの中では、多くの意思決定の場面に絶え間なく直面する。個々の判断や意思決定は常にM&Aの目的に立ち返るべきであり、然りM&Aの目的は複数多岐に亘る関係者に明確かつ具体的に認知されている必要がある。組織の一部で「このM&Aをやらねばならない」という関係者の推進力は貴重である一方、不明瞭な目的定義は、意思決定に議論の余地を残し、実行後にリスクが顕在化する可能性を高めてしまう。ディールエグゼキューションを推進するにあたり、組織として合理的な買収および投資の意思決定を行っていくために、明確な目的定義を行う必要がある。

デューディリジェンスは意思決定に向けて必要な情報を取得し精査するステージとなる。複数の領域の責任者や知見者を検討プロセスに巻き込むことが望まれるところ、それら関与者が全てM&Aに精通していることは少なく「デューディリジェンスで何をどのように精査すればよいのか」との声が生じることとなる。また、エグゼキューションプロセスにおいて、望む全ての情報がM&A対象から得らえるとは限らない。デューディリジェンスの情報収集においても、求めるリソースは得られるのか、期待するパフォーマンスの資質は備わっているかというビジネス目線、どれだけの対価を支払うべきかという価格目線、また、取引に付帯する潜在的なリスクをマネージできるのかというPMI目線、といった包括的な観点からM&Aの目的に則して必要な情報を求めていく。ただしその本質はテンプレート化された情報のリストには決して収まるものではなく、戦略実現へと繋がる仮説を検証するために必要な情報を自ら特定し求めていくべきものである。望む情報を見いだせなければ新たな仮説を構築し検証を試みる。そこには常に能動的な強い意志が存在しているべきであり、その意志が揺らぎ薄れる時こそ、実行後のリスクを残してしまう危険な場面である。

取得した情報を精査する中で、絶え間ない意思決定の場面が訪れる。時間的また取得情報の量および完全性・網羅性といった制約の下で、速やかに、かつ合理的な判断を行わなければならない。デューディリジェンスからの発見事項をノックアウトファクター、価格調整対象、最終契約での担保、PMI実行計画への反映、という主な対処方針へ整理した上で、個々の発見事項に関して受容適否判断を行っていく必要がある。特に留意すべきは「M&Aの失敗」として一般的に注目される実行後の減損処理である。期待シナジーの定量化と提示価格を説明する精緻なロジック、また、実行後に期待シナジーを創出させるための取組の蓋然性が重要となることは言うまでもない。それらを踏まえた上で、M&A対象との厳しい価格交渉の中で、組織として何処までを許容し意思決定するのか。意思決定の判断根拠を客観的視点から説明できる情報整理のフレームワークが必要となってくる。

モニター デロイトM&Aでは「ディールの完了」ではなく、「M&Aの成功」を目的として、クライアントM&A検討推進責任者およびチームの機能の一部となり、検討主体と同じ立ち位置で、客観的第三者としての視点から意思決定の合理性を追求する。その合理性を高めるために必要な、過去無数の実績より蓄積したデータを意思決定の場に提供していく。事業戦略の実現という目的へ向けて、検討プロセスの構築からデューディリジェンス推進に関する助言、また、意思決定のフレームワーク提示を含め、M&Aディールエグゼキューションを支援していく。

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Strategy-Centric M&A Deal Execution
ディール意思決定支援

ビジネスコンサルティングの視点を備えたM&Aアドバイザリーサービスとして、買収・売却ありきの検討ではなく、クライアント事務局(PMO: Project Management Office)の一機能として、M&Aの目的達成を目指してディールを推進していきます。戦略的意義の検討から取引条件の決定まで、グローバルネットワークと業界専門コンサルタントの知見を活用し、目的を達成するために必要な意思決定の支援を行います。M&Aの競争環境、取引価値、契約交渉等、複眼的な観点から経験に基づく助言を行い、推進主体と一体となって、ディールを推進していくために求められる様々な支援を提供致します。

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