ナレッジ

持続的成長の実現に向けた「コーポレート改革」

変化と不確実性の時代において、企業の舵取り役たる「コーポレート」が果たすべき役割は大きい。しかし、日本企業におけるコーポレート組織は「聖域化」し、その改革は失敗に終わるケースが多い。「コーポレート改革」を成功させるために押さえるべきポイントとは何だろうか?モニター デロイトの経験に基づく「コーポレート改革」を停滞させる3つの要因から読み解いていく。

変化と不確実性の時代における「コーポレート改革」の必要性

近年、グローバル化の更なる進展、デジタルテクノロジーの急速な進化といった大きな変化を背景に、多くの日本企業は戦略・ビジネスモデルの抜本的な変革に迫られている。

これらの変革は、目先の売上・利益を確保しなければならない個別事業のみで成し遂げることは困難であり、中長期視点での経営戦略策定・浸透、事業ポートフォリオ管理を含めた経営資源の最適配分等を行うことでグループ全体の企業価値を最大化する舵取り役が不可欠となる。

企業における組織・機能は大まかに【図1】のように分類されるが、このような舵取り役を担う「コーポレート機能」の役割の重要性は高まっていると言えるだろう。

「コーポレート改革」を成功に導くには、3つの要諦がある
※クリックまたはタップして拡大表示できます

 

しかし、一部の日本企業においては、【図2】に示すように「コーポレート機能」と「スタッフ機能」が一体化して「大きな本社」となり、舵取り役となるどころか、事業部門の意思決定を阻害したり、収益を圧迫している状況が散見される。つまり、「コーポレート機能」の強化と「スタッフ機能」の最適化・効率化の両面を実現する「コーポレート改革」が求められているのである。

日本企業における「本社」の典型例
※クリックまたはタップして拡大表示できます

このように「コーポレート改革」は、変化と不確実性の時代において持続的成長を実現させるための重要な経営アジェンダの1つであるが、実際には、このような改革には多くの課題と難しさが存在し、成功を収めるケースは決して多くないというのがモニター デロイトの見解である。よって、本稿では、日本企業が陥りがちな課題、そして当該課題の解決策としてモニター デロイトが考える「コーポレート改革」のポイントについてご紹介させて頂きたい。

 

「コーポレート改革」を停滞させる3つの要因

モニター デロイトの経験を踏まえると、一般的に「コーポレート改革」は【図3】に示す3つの要因により停滞しがちである。

「コーポレート改革」の停滞要因
※クリックまたはタップして拡大表示できます

1つ目は、「自浄作用・競争原理の欠如」である。一般的に、本社組織には厳格なP/L管理が存在せず、予算執行的・行政的な運用がなされているケースが多い。本社組織の予算は積み上げ型で策定され、事業部門に配賦される。事業部門にとっては、本社組織の提供機能・サービスを他に切り替える選択肢がないため、競争原理が働きづらい。

2つ目は、「余剰人員活用の難しさ」である。仮に本社組織の機能・業務をスリム化しても、これに伴い発生する余剰人員について、本社組織内では活用余地が限定的となりがちである。他の機能部門やフロント部門に再配置をしようにも、専門性やスキルがマッチするケースは一般的に多くない。

3つ目は、「改革推進役の不在」である。本社組織に属する各機能部門は縦割り構造が強く、自らの組織・予算を守る意向が働く。これらの部門は改革における「抵抗勢力」となりがちである。各部門の利害から脱した立場で「抵抗勢力」を説得しながら改革を推進する役割を、改革される当事者である各機能部門に期待するのは現実的ではない。

これらの要因により、本社組織は「聖域化」し、経営層や事業部門に課題意識は存在しつつも、その改革は停滞してしまうのである。

 

「コーポレート改革」の成功に向けて

上述の停滞要因を打破し、「コーポレート改革」を成功に導くため、弊社は【図4】に示す3つの要諦を提唱する。

「コーポレート改革」の3つの要諦
※クリックまたはタップして拡大表示できます

「コーポレート改革」の実行にあたっては、他の改革と同様、「グランドデザイン」が重要となる。本改革で実現したい目的やそのための手法が不明確なまま走り出してしまった場合、途中からアプローチを変更することが困難である。また、このような改革には全社的なモメンタムが必要となるため、仮に一度行った改革が不十分であった場合でも、当面の間は「やり直し」を行うことは現実的でない。したがって、上述した3つの要諦を満たす「グランドデザイン」を初期段階で明確化しておくことが、改革の成功には欠かせない。

 

モニター デロイトの経験と実績

モニター デロイトは、これらは「コーポレート改革」のグランドデザイン策定から実際の組織再編に至るまで、豊富な支援実績を有している。これらの経験に基づき、改革が止まりがちなポイントを予見し、それらを動かすための施策をピンポイントでグランドデザインに埋め込むことにより、実効性の高い改革のメカニズムをご提案することが可能である。

貴社が「コーポレート改革」の必要性を感じられた際、またはかつて失敗に終わった「コーポレート改革」を再始動される際は、モニター デロイトの経験とケイパビリティの活用をご検討頂けると幸いである。

 

以上

著者

伊藤 爵宏/Takahiro Ito
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

製造業を中心に、バイサイドディールにおけるビジネスアドバイザリー、セルサイドディールの構想・実行、PMIにおける統合事務局、グループ子会社の再編構想等、M&A・組織再編全般にアドバイザリー経験を有す。
近年では、日本企業のグローバル経営力強化に向け、グローバル本社・地域統括組織におけるミッション・機能の再定義から組織再編の構想・実行に至る機能・組織変革案件に多数従事している。
 

pro

増田 祐介/Yusuke Masuda
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

M&A/組織再編領域に従事。買収・統合・JV設立等におけるPMIや持株会社化・合併・分割等を伴うグループ組織再編、コーポレート組織再編・機能強化等のテーマについて、構想から実行までの幅広いアドバイザリー経験を有し、伴走型の支援を得意とする。
近年はエネルギー業界を中心に、成長領域へのシフトや多角化推進、グローバル展開等を目的としたグループ組織構造改革・コーポレート組織改革案件に多数従事している。

 

緑川 祐哉/Yuya Midorikawa
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

製造業、サービス業、金融業の幅広い業界において、バイサイド/セルサイドの両面のM&Aの構想策定からディール実行、PMIを一貫したアドバイザリー経験を有す。
近年においては、M&Aを活用したグループ組織再編やIT機能を中心とした間接機能改革の案件に多数従事しており、構想から実行までの伴走型のサポートに強みを持つ。

 

 

(2020.9.11)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

関連サービス

Strategic Reorganization
経営戦略を実現する組織構造再編成

産業構造・事業環境の大きな変化と不確実性に機動的に対応し、持続的な成長と企業価値の向上を果たすために、戦略推進、成果創出のための基盤構築に向けた持株会社設立・事業分社および関係会社を含む大規模組織再編、グループガバナンス構造改革、コーポレート組織・機能改革などの組織・ガバナンス面の改革をご支援します。

お役に立ちましたか?