第2回 気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動の実態調査 ブックマークが追加されました
調査レポート
第2回 気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動の実態調査
Climate Techとの協業の動きは進展。サーキュラーエコノミーやCCUS、カーボンクレジットへの関心が前回から高まる
このたび国内大企業およびベンチャーキャピタルを対象に第2回目となる「気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動の実態調査」を実施しました。本調査は、気候変動事業に係る国内企業の関心度や取り組み状況、取り組み体制と手法、関心のあるClimate Tech領域の取組みやテクノロジー等について分析しています。
はじめに
グローバルで気候変動対策が求められる中、気候変動イノベーションへの関心が益々高まっています。2015年の「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃ より十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力 を継続(1.5℃努力目標)する必要性が確認されました。2018年のIPCCの「1.5 ℃特別報告書」では、気温上昇が2℃に達してしまった場合、1.5 ℃に抑えた場合と比して20兆ドルの経済損失が生じるとの試算も行われています。
日本では、2020年、「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言し、2021年には技術革新を通じて今後の成長が期待される14分野を特定し、現状の課題と今後の取組みを明記するなど同分野のイノベーションにも力を入れていく方向性が打ち出されました。2022年にはグリーントランスフォーメーション(GX)が「重点投資分野」のひとつに位置付けられ、「今後10年間に官民協調で150兆円規模のGX投資を実現する」との方針が打ち出されています。
グローバルではClimate Tech領域で様々なスタートアップが勃興すると共に、気候変動に係る新しいファンドが数多く組成され、同領域へのベンチャーキャピタルの投資規模は数兆円規模まで拡大するなど、官のみならず民間企業も積極的に気候変動への取組みを始めています。
このような状況のもと、国内大企業およびベンチャーキャピタルを対象に第2回目となる「気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動の実態調査」を実施しました。今回は前回の調査結果の更新に加えて、Climate Tech領域の先端技術やスタートアップへの期待値が高い技術についても調査を行っており、国内大企業やベンチャーキャピタルの関心・取組みの現状についてより広い分析を行っています。
本稿が同領域でのイノベーション創出の一助となれば幸いです。
調査結果サマリー
【事業会社の現状】
事業会社の回答者127名中、9割以上が気候変動は「社会」と「自社」及び「自分の部署」が取組むべき課題であると回答していました。一方で、気候変動事業創出に向けて具体的な行動を起こしている企業は昨年と変わらず6割程度であり、成果(売上)を出している企業も同様に昨年と変わらず1割に留まる結果でした。
カーボンニュートラル方針の策定、イニシアチブへの賛同・参画の対応は昨年より進んでいる傾向が見られ、気候変動事業に係るチーム組成や「事業開発担当」の配置も昨年と比べて進み、スタートアップとの関係構築も昨年より前進が見られました。一方で、 「投資担当」についてはまだほとんどの会社で配置されておりません。
事業への取組み手法については、戦略的提携/協業との回答が7割程度であり、自社単独での検討を超えています。また、資本提携やM&Aも進展が見られることから、外部との協業が益々主流化していると考えられます。
関心のある取組み/テクノロジーについては再エネ関連と電化が昨年と変わらず高い関心を集めていますが、サーキュラーへの関心も上位でした。前年比で見た場合、CCUSやカーボンクレジットへの関心も急伸しています。先端技術領域ではエネルギー長期貯蔵(LDES)とグリーン水素が高い関心を集めており、これら技術に対するスタートアップへの期待も高いことが分かりました。
サステナビリティ情報開示においては、約4割がスタートアップ関連の情報を開示しており、その内容は協業や出資に係るものでした。
アンケートの調査概要
実施主体:デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
調査方法:インターネットを通じたアンケート調査
調査期間:2022年11月8日~2022年12月9日
調査対象:国内大企業およびベンチャーキャピタル (Morning Pitch会員* )
回答者数:144名/144社
Morning Pitchとは
「Morning Pitch」は、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社と野村證券株式会社が幹事となり主催しているピッチイベント。毎週木曜AM7時から開催し、ベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出すことを目的に、毎週5社のベンチャー企業が、大企業・ベンチャーキャピタル・メディア等のオーディエンス約200~300名に対しピッチを実施している。2013年1月から開始し、2021年8月時点で全380回超、累計1,700社超のベンチャー企業が登壇している。
参照:http://morningpitch.com/about/
関連するリンク
お問い合わせ
今回の調査結果を踏まえたご相談と今後の情報発信について
気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動に関するご相談については、以下URLまでお問い合わせください。
>> DTVS受付窓口(https://tohmatsu.smartseminar.jp/public/application/add/2039)
執筆者
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
取締役COO 木村 将之
執行補佐 宮澤 嘉章
ビジネスプロデュース事業部 マネジャー 井村 賢