調査レポート

CXOの選択肢としての5Gエッジネットワーク

将来の競争優位性のための投資

5Gエッジコンピューティング技術は次世代イノベーション、効率性、アジリティを発揮するために必要な機能を提供できる可能性を秘め、特に今後2年間の5Gエッジへの投資が将来の競争優位性を生み出すと考えられます。日本ではユーザーであるエンタープライズ企業の多くは様子見の立ち位置ですが、イネーブラーによるインフラ整備とユースケース開発が続き、5Gエッジの導入を検討するのも決して早すぎることはありません。

グローバル版:CXOの選択肢としての5Gエッジ

※図表および「日本の視点」を含む本文詳細は、ダウンロードボタンよりPDFファイルを取得してご確認ください。

デジタルイノベーションがもたらす歴史的な可能性は経営層(CXO)にとって非常に魅力的です。経営層は、イノベーションを加速させ、効率を高め、組織のアジリティを向上させるために、AI、アナリティクス、IoTなどの強力なデータテクノロジーを活用する経営戦略を立案するようになっています。

将来のデジタルやビジネスの機会の多くはより高いデータ処理能力を必要としています。これは多くの経営者が認識している現実で、デロイトの調査では、回答者の76%が、今後3年間のデジタル戦略において、より強力なネットワーク機能の導入が不可欠であると回答しています1

5Gとエッジコンピューティング技術は次世代のイノベーション、効率性、アジリティを実現するために必要なネットワーク容量を確保できるプラットフォームを提供することができます。

先駆的な企業は、すでにその可能性を追求しています。回答企業の58%は、すでに5Gを運用、もしくは試験的な運用/実験に着手しています2。さらに、エッジで先進無線ネットワーク技術(5GおよびWi-Fi 6)を利用することを計画している企業の数も着実に増加すると考えられます3

5Gエッジテクノロジーはネットワーキング機能を飛躍的に向上させるものであり、それによってビジネスの可能性の範囲が劇的に広がります。この飛躍には、高速化、低遅延化、データ処理能力の向上などが含まれます。

 

5Gエッジ+デジタル=チャンス

5Gエッジは、企業が一連の強力なデジタル技術を展開するための、拡張性があり柔軟なコネクティビティとコンピューティングプラットフォームとしての役割を果たし、以下を実現する可能性を秘めています。

  • コンピュータービジョンによる製造・物流のコスト削減の実
  • IoT、AI、アナリティクス、コンピュータービジョンによるイノベーションと自動化
  • 自律型ロボット・自動運転車両による生産性の向上
  • デジタルツインによるオペレーションの最適化
  • クラウドベースのソフトウェア駆動型ネットワーク機能によるレジリエンスとアジリティの構築
  • エッジコンピューティングによる高需要サプライネットワークの変革


 

2年の間にチャンスを掴む

5Gから生まれるイノベーションは4Gまでの過去の世代の通信規格でのイノベーションと同様に、2~3年の助走期間を経ることになると予想されます。(図)。今5Gエッジに投資している企業は、世界中で5Gの導入が加速し技術が標準化されていく中で、イノベーションの先陣を切っていくことになります。

5Gはまだ比較的新しいため、ネットワークの構築やデバイスの接続、ビジネスへのカスタマイズに時間が掛かる可能性があり、「成熟した」テクノロジーに比べて、ビジネス価値を生み出すまでの道のりが長くなるかもしれません。しかし、潜在的なメリットを考えれば、努力する価値は十分にあるといえます。アーリーアダプターなら、様子見をしている競合他社が簡単には真似できないような運用上・戦略上のメリットを享受できる可能性があります。誰もが5Gエッジを導入する頃には、競争優位性を得ることは難しくなります。

レポート「CXOの選択肢としての5Gエッジネットワーク」【PDF, 777KB】

図: 5Gエッジへの現在の投資が将来の競争優位性を生み出す

インフラ主導のイノベーションでは、インフラが導入されてから新しいビジネスが生まれ規模が拡大し始めるまでのリードタイムが通常2~3年と言われている。今後2年のアクションが次の勝者を決定する。
 

5Gエッジへの現在の投資が将来の競争優位性を生み出す
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日本の見解:国内の5Gエッジネットワーク動向

日本国内での5Gエッジネットワーク市場の立ち上がりは

国内エッジインフラ市場は、5Gエッジネットワークを検討するための土壌となるクラウドネットワークが未だ国内企業に浸透しきっていないこともあり、まだ黎明期といえます。オンプレミスのITシステムからクラウドへの移行が遅れている企業は、5Gエッジネットワークに対しても様子見の立ち位置を取っていると考えられます。

 一方、既にクラウドに移行している企業にとっては、今までクラウド上での運用を検討してきたアプリケーションを5Gエッジネットワーク上で開発し、自社で運用するだけでなく、このアプリケーションの他社への外販を狙えるようになります。そのため、5Gエッジネットワークも投資の選択肢として捉えやすくなっています

 

国内エンタープライズ企業は「今」5Gエッジネットワークに投資すべきなのか

確実にROI・先行者優位が働くと言い切れる成功事例はまだ見当たらないものの、イネーブラーである通信事業者・クラウド・通信機器プレイヤーが先進的な国内エンタープライズ企業と組んでユースケースを開発する事例は増えてきています。  海外プレイヤーでは5Gエッジネットワークの民主化が進みつつあり、今後日本国内に参入した場合は国内企業のローカル5G事業にも大きな影響が見込まれます。

エンタープライズ企業やアプリケーション開発企業はイネーブラーと共同で開発ハードルやコストを低減しながら活動を加速していくことが予想されます。各業界の国内先進企業にとっては、数年後ではなく今から5Gエッジネットワークを用いたアプリケーションを企画しても早すぎではない局面にあるといえます。

 

ユースケースの実現レベルとネットワーク要件はどのような関係性にあるか

下図にあるように自社のデジタル戦略に鑑み、どのようなアプリケーションに今着手すべきなのか、そしてネットワークへの要件を押さえた上で投資オプションを検討できる企業がROIを最大化できると考えられます。

図: スマートファクトリー領域における事例

スマートファクトリー領域における事例
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エンタープライズ企業は、どのような観点で投資検討をすべきか

通信ネットワークは従来のように最新技術の一択ではなく、自社のデジタル戦略に直結する適材適所のオプション検討が求められる事業投資領域になりつつあります。

経営層には、通信ネットワーク投資を情報システム部署や外部ベンダに任せっきりにするのではなく、経営マターとして自社戦略と紐づけて検討する必要性を意識することが求められています。

国内におけるイネーブラー役である通信事業者・通信機器・クラウドベンダにとっても、従来のネットワーク技術・コスト競争だけでは、エンタープライズ企業から信頼されるパートナーになりきることは難しくなっています。エンタープライズ企業から受け取ったRFPを、サービス要件からネットワーク要件に落とし込む段階でも付加価値が求められています。先進企業との協業を加速しながら、様子見をしている他企業が追従したくなるような業界・事業特性を踏まえたキラーアプリケーションの開拓を進めていく必要があります。

1. 「企業のイノベーションと変革を加速させる5GとWi-Fi 6 Deloitte’s Study of Advanced Wireless Adoption 日本版」デロイト トーマツ、2021/8: 400社以上のグローバル企業を対象に最近実施した先進無線技術の導入に関して調査を実施した

2. Ibid

3. Chris Arkenberg et al., Gaining an intelligent edge: Edge computing and intelligence could propel tech and telecom growth: TMT Predictions 2021, December 7, 2020.

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