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クラウドの導入と進化するカスタマーエクスペリエンス

顧客や従業員、そしてエコシステム・パートナーにおけるヒューマン・エクスペリエンスの最適化

今日のマーケティング責任者は、受け手の選好するプラットフォームを通じて彼らを惹き付けるべく、さまざまな主要チャネルで差別化されたエクスペリエンスを創り出す必要があり、また、それを低コストで実施することが求められます。この難題を解決するためには、新しいアプローチが必要です。本記事では、クラウドの導入を、顧客や従業員、エコシステム・パートナーのデジタル・ヒューマン・エクスペリエンスと連携することが、マーケティング活動においてどのように役立つかをご紹介します。

以下はDeloitte US作成記事「Cloud adoption and the evolving customer experience」の日本語版です。英語原文と以下の日本語訳との間で相違や矛盾が発生する場合は、英語原文が優先します。

適切なデジタル・ヒューマン・エクスペリエンスの開発

ブランドの成功に当たって、人間同士のポジティブな関係やエクスペリエンスがこれまで以上に重要になってきています。マーケティング責任者は認知度を高めて注意を惹き付けることにフォーカスしていた従来のマーケティング方式から、ポジティブな関係や真の情緒的なつながりの構築を重視する新しいやり方へシフトする必要があります。素晴らしいエクスペリエンスが関係を築き、強い関係がロイヤリティを作り出し、そのロイヤリティが業績を牽引します。

成功している多くのCMOは、顧客や従業員、エコシステム・パートナーの行動および嗜好が即時性と利便性で決まることが多くなっている中、そのような相手と関係を構築するには既存のツールや戦略では不十分であることを認識しています。クラウドの導入は顧客や従業員、エコシステム・パートナーのエクスペリエンスの劇的向上をもたらし、最終的には以下を通じ、マーケティングの成功を促進します。

  • レスポンス時間の短縮
  • プロダクト開発のスピード向上
  • より深いインサイトの抽出
  • ダイナミックな意思決定の促進
  • マーケティング活動の有効性と効率性の向上

クラウドテクノロジーは、世の中の変化のスピードに合わせた迅速な対応に役立ちます。

 

今日のマーケティングエグゼクティブの要望

今日、人間は「チャネル」という概念なしに、物理的な現実とデジタル現実の世界を同時に経験します。この同時に起こる経験から、マーケティングリーダーたちは以下3つのチャレンジに取り組まなければなりません。

  1. 自社エコシステム内の顧客やパートナー、その他の主要ステークホルダーにおけるモバイル使用の増加傾向に合わせて、差別化されたヒューマン・エクスペリエンスを創出する
  2. ステークホルダーの選好するチャネルと手段を通じ、効率的かつ費用対効果の高い方法でステークホルダーを巻き込む
  3. この新たなデジタル世界におけるマーケティング活動および投資を、社内のそれ以外の組織と整合させる

クラウドケイパビリティの強固な基盤が、上記取り組みへの鍵となります。クラウドツールとそのメリットは、より良いヒューマン・エクスペリエンスをより多くもたらすでしょう。クラウドを使用すれば、より迅速にイノベーションを実現でき、スケールを拡張できるでしょう。クラウドは個々人に合わせてパーソナライズされたフリクションレスなエクスペリエンスを創り出せるようにし、自社エコシステム全体におけるヒューマン・エクスペリエンスを向上させます。

顧客や従業員、エコシステム・パートナーにおけるエクスペリエンスとクラウド導入をどのように連携させるか

クラウドを活用して顧客や従業員、パートナー、サプライヤーとリアルタイムでつながる関係を構築するという飛躍的な進化を遂げることで、企業は長期的な競争優位性を獲得できます。

より素早いレスポンス

クラウドテクノロジーを用いることで、企業は従来数日かかっていた作業を数分でこなせるようになります。企業はより安価かつ迅速に情報を収集し、クラウド対応の先進的なアナリティクスケイパビリティを利用して人間の行動に関するインサイトを得ることができます。

プロダクト開発時間の短縮

クラウドテクノロジーは開発やテスト、(本番環境への)実装の迅速化を手助けすることで、イノベーションにかかる時間を短縮し、最終的にはTime to Value(価値創出までの時間)を短縮できます。ブランドでは、クライアントデータをクラウドベースのソリューションに取り込み、新しいプロダクト、サービス、ツールがどのように稼働するかを素早くテストできます。クラウドを活用することで、従来では1年かかっていた作業を今ではより短い時間と少ない予算を使って数週間で完了できます。このアジリティによって、マーケティング責任者は常時変化する顧客の行動および嗜好を予測し、それに対応できます。

洞察力の向上

クラウドは、例えば戦略的パートナーから提供されたり、さまざまなテクノロジープラットフォームに保存されていたりする、膨大かつ多様なデータセットを迅速かつ効率的に処理・分析できるようにします。クラウドが持つ柔軟性によって、データの共有、さらには分析までが、かつてないほど容易かつ迅速になります。

顧客関係の再定義

企業は、クラウドテクノロジーの膨大なキャパシティとデータ処理能力を使用し、顧客のニーズや要望、嗜好を把握できます。そして、関連するエクスペリエンスをカスタマイズできます。

ダイナミックな意思決定の促進

クラウドによってデータや分析ツールへのアクセスが可能になり、経営陣はより良い決断をより迅速に行えます。例えば、マーケティング責任者はクラウド対応のソーシャルメディア分析により、特定の顧客セグメントで流行っているトピックや関心の高い分野を予測し活用できます。また、レストランでは、ディスカウントされたメニューを販売する際、高い頻度で一緒に買われている定価のメニューを組み合わせて販売することで、ディスカウント分のマージンを回収できます。

マーケティング責任者は何から始めればよいか

より優れたデジタル・ヒューマン・エクスペリエンスは、売上高の向上やマージンの改善、より強力なブランドアドボカシーを実現します。しかしながら、分散クラウド環境への移行は、組織全体に多様な影響を及ぼします。最終的には、CIOが実際のクラウドジャーニーやテクノロジーの移行に関する説明責任を持ちます。マーケティングリーダーは、そのクラウドジャーニーをナビゲートしブランドの目指す姿の実現をドライブするため、インプットを提供し戦略上のビジョンを示さなければなりません。

マーケティング責任者は、まず以下2つの重要なステップに注力することで、デジタル・ヒューマン・エクスペリエンスの創出を始動できます。

  1. ケイパビリティを定義する:顧客に提供したい種々のエクスペリエンスに関しビジョンを策定する際、その実現に必要となるコアなケイパビリティも特定しなければならないでしょう。ビジョンの実現に当たって必要となる特殊な専門知識やドメインナレッジは何ですか。それらは現在、組織内に存在しますか。それらのケイパビリティを実現するツールやシステムは何ですか。
  2. 価値を定量化する:必要なケイパビリティと、それらを活性化するツールやシステムを把握できれば、クラウドマイグレーションに投資することで得られる潜在的なビジネス価値をすぐに評価できます。迅速なコストベネフィット分析により、最終的に意思決定プロセスやクラウド戦略に影響を与える潜在的なコスト削減、効率性、およびビジネスへのインパクトを明確化できます。

これらの重要なステップを経て、アジャイルでクラウド対応可能なマーケティング組織に変革できます。

 

クラウド導入とヒューマン・エクスペリエンスが融合する時

人間は、プロダクトやテクノロジー起点というより、エクスペリエンス起点で物事を記憶します。我々がどう感じるかが我々に残ります。我々のエクスペリエンスが世界に意味を吹き込み、思い出を埋め込み、我々の認識や行動を変えます。

誰かにポジティブでパーソナライズされた感情を作り出すことができれば、信頼やロイヤリティを築き、収益を創出できます。テクノロジー、とりわけクラウドテクノロジーは、消費者がどこにいるかにかかわらず、かつてないほど迅速かつ効率的にエクスペリエンスを開発・テスト・改良する機会をCMOに提供します。

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