Posted: 14 Oct. 2021 3 min. read

食品ロスの削減を通じてカーボンニュートラル社会を実現しよう

(食と環境問題)

2021年3月、AFP通信は、欧州連合(EU)の共同研究センター(Joint Research Centre)が主導して発表された論文に基づき、世界中で人為的に排出される温室効果ガスの3分の1は、「食」に関係していると報道した。
参考記事:https://www.afpbb.com/articles/-/3336993

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2019年に公表した土地関係特別報告書でも、食料の生産に直接関連する排出(農業と農業に由来する土地利用変化)に加え、加工、流通を経て最終的に消費されるまでのプロセス全体を考慮した食料システムからの排出は世界の総GHG排出量の21~37%を占めると示されていたが、報道された前述の論文では、食料生産者から消費者、廃棄に至るまでの食料の流れを追跡している。その結果、世界の総GHG排出量に占める食料システムからの排出の割合は25~42%と推定され、IPCCが示した値を上回る可能性が高いことが明らかになった。

食品ロスの定義とフードサプライチェーンについては前回ブログで述べたが、食料の生産から加工、廃棄に至るまでのライフサイクルにおいてはCOや排水の排出、農薬や化学肥料の使用、農地への転用に伴う森林開発、食品廃棄物といった環境負荷が生じており、フードサプライチェーンは「食」を軸としてどこまでを定義づけるのといった議論はあるものの、事実として温室効果ガス発生源の約3分の1は「食」に関係していると言ってよい。

さらには、2021年3月4日に発表された国連環境計画(UNEP)のUNEP Food Waste Index Report 2021によれば、食品ロスの廃棄による温室効果ガスの排出量は、世界の温室効果ガス排出量のうち、8%から10%を占めているとのことだ。食品ロスの廃棄は、世界的な課題、かつ、気候変動に影響を及ぼす主要因であり、これらの事実からわかるように、カーボンニュートラル社会の実現には、一人ひとりの意識変革とフードサプライチェーン全体の取組みが必須となる。

(主要国の食の観点からの環境政策)

主要国の環境政策においても図1に示したとおり、食に関わる戦略・アジェンダを策定し、EU、米国では具体的な数値目標を提示している。食の観点からは、食品ロス含む食品廃棄物全体として捉えなければならないことはもちろんであるが、そのほかにも家畜の消化管内発酵や家畜排せつ物、稲作、農用地の土壌、肥料などによるCHやN2O等の温室効果ガス排出の問題も絡んでおり食品ロスの問題のみならず、農業分野全体の問題とあわせて検討する必要がある。(出典:経済産業省 第3回グリーンイノベーション戦略推進会議WG資料参照)

 
(日本における戦略)

前述のとおり日本においては「みどりの食料システム戦略」が打ち出され、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現していく方向性が示されている。

中でも図2に記載の③ムリ・ムダのない持続可能な流通・加工システムの確立にあるようにフードバリューチェーンにおける食品ロス問題の解決にはデジタル技術をフル活用した物流ルートの最適化や需給予測システムの構築が必要である。なぜなら、食品ロスの問題はSDGsの「12.つくる責任つかう責任」に表現されているとおり、企業は消費者のニーズをとらえて生産する。まずはムリ・ムダのない持続可能なフードバリューチェーンを実現し図3のような従来型のリニアエコノミーあるいはリユースエコノミーからサーキュラーエコノミーに移行していくことがカーボンニュートラル社会に向けてのスタートラインだと位置づけている。

物流ルートや需給予測は当然ながらフードバリューチェーンの1プレーヤーだけで解決はできない。企業グループを超えたエコシステムの構築と産官学が連携した課題解決により、持続可能なフードバリューチェーンを構築することが必要だ。

また、需給予測の需要はまさしく我々消費者のマインドが反映されたものである。私たち消費者も食品ロスが環境破壊に直結している現状を正しく理解し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて一人ひとりができる取組を実施していくことが豊かな未来を創っていくための責務である。過剰な購入を避ける、購入したものは使い切るといった、身近なことからはじめていこうではないか

D-NNOVATIONスペシャルサイト

社会課題の解決に向けたプロフェッショナルたちの物語や視点を発信しています

プロフェッショナル

高田 真紀/Maki Takada

高田 真紀/Maki Takada

デロイト トーマツ グループ マネージングディレクター

有限責任監査法人トーマツ A&A事業企画所属。ITソリューションサービス企業等を経てデロイト トーマツ入社後、グローバルでビジネスを展開する小売業、製造業、物流業等における会計監査、内部統制監査をはじめ、内部統制構築支援、SSAE18関連サービス、デジタルガバナンス・ ITガバナンス関連サービス、リスクマネジメント構築支援等に従事。 現在は、主にデジタル✕女性活躍の視点で、主にまちづくり、地域活性化、食品ロス等の社会課題解決に向けた取組を進めている。 資格:システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)