生成AI時代の人材育成のために、企業がすべきこと(後編) ブックマークが追加されました
デロイト トーマツグループは2024年10月21日「生成AIが現場に与えるインパクトと人材育成の在り方」と題したオンラインセミナーを実施した。その内容を前編・後編にわたりレポートする。
前編では生成AIのトレンドや仕事への影響、生成AIへの向き合い方・行動の起こし方について解説。後編では「生成AIが現場に与えるインパクトと人材育成の在り方」をテーマにパネルディスカッションを展開。その内容をレポートする。
※期間限定で本セミナーのアーカイブ配信を実施しています。視聴ご希望の方はページ下部よりお申込みをお願いします。
左から、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 町田幸司(モデレーター)、独立行政法人情報処理推進機構 高橋伸子氏、日本電気株式会社 祐成光樹氏、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 小野隆
続いて生成AIが現場に与えるインパクトと人材育成の在り方についてパネルディスカッションを実施。IPAの高橋伸子氏、NECでデータサイエンティスト・AIコンサルタントとして活躍する祐成光樹氏、デロイト トーマツ コンサルティングで人事領域のコンサルティングを手がける小野隆の3名がパネリストとして登壇した。ファシリテーターは、デロイト トーマツ コンサルティングの町田幸司が務めた。
独立行政法人 情報処理推進機構 デジタル人材センター人材プラットフォーム部 部長 高橋 伸子氏
最初に「生成AIが現場へ与えるインパクト」をテーマに話し合った。
高橋:生成AIはこれまでの技術とは広まるスピードがまったく違うため、有識者の見解にも短期間で変化が見られるほどで、結果デジタルスキル標準の早急な改定となりました。現場へのインパクトという意味では、このスピードの面が最も大きいと感じています。
祐成:スピード感との言葉が出ましたが、まさに当社はIT企業ですのでスピードが重要な会社です。当社では生成AIが登場した1カ月後には、社内で自由に利用できる環境を整備しました。生成AIの活用ではガバナンスやリテラシーを整えた上で利用することも重要だと考えています。
NECではプロンプトを共有するしくみも整っており、人気プロンプトがランキング形式で見られるようになっています。レポーティングや調査など幅広く使われており、最近は社内で希望のポジションに応募する際に使う職務経歴書を作成するプロンプトが人気ですね。
小野:生成AIを利用することは仕事の効率化につながる一方で、それまで経験していた業務がなくなる可能性もあるため、意図的に人材の成長機会を提供する必要があるのでは、と考えています。また、デロイトによる今年のZ/ミレニアル世代調査によると、日本のその世代は意外にも海外諸国と比べて仕事での生成AIの利用がまだまだ少ないという結果も出ているので、現場の利用を促す施策も打っていく必要があると考えています。
次に、生成AIのインパクトを踏まえ、どのような人材育成が必要かについて議論した。
高橋:開発側と利用側で異なりますが、共通して言えることは実際にそれぞれの立場で使ってみて、楽しみながら学ぶことです。もうひとつDX推進人材に伝えたいことは「昔の技術に頼らないでほしい」ということです。どうしても過去の成功体験があると生成AIをはじめとする新しいチャレンジが難しくなります。上司・部下という関係性においても、上位者が過去の固定観念を捨て、率先して新たな技術を学ぶ姿勢が必要だと考えています。
小野:自分から積極的に動く方々だけでなく、機会やきっかけがあれば動く方々もいらっしゃいます。一般的には後者が大きなボリュームを占めると思われるため、この方々にどう火を付けるか、がポイントではないでしょうか。いろいろ打ち手はありますが、日本人は真面目な面があると思われるので、やはり業務と紐づけ、実際に仕事の中で生成AIを使える環境を整えてあげるのがいいのでは、と考えています。
日本電気株式会社 アナリティクスコンサルティング統括部 ディレクター 祐成 光樹氏
祐成:生成AIの裾野は確実に広がってきており、これまで開発業務に携わっていたデータサイエンティストも、ある程度淘汰されていくのではないか、と考えています。では、淘汰されないのはどのような人材なのでしょうか。私は、自分しかアクセスできない、自分しか扱えないような希少なデータを扱えるデータサイエンティストは強いと思います。
またデータサイエンティストという仕事は、従来はデータ分析やAIの専門知識を持つ人が、事業について学ぶというケースが大多数でした。しかし生成AIの裾野が広がり、データ分析は誰でもある程度できるようになるのだとすれば、今後は業務に対する深い知識を持ち、AIをどのように適用するかというノウハウを持つ人材が重宝されるようになるのではないかと考えています。
3つめのテーマは、「必要となる人材育成のために、組織としてすべきこと」だ。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Human Capital パートナー 小野 隆
小野:最も大切なことは実践だと考えています。とにかく試行錯誤して失敗を経験して学ぶというサイクルをいかに高速で回せるか、そして企業はそのような場をどれだけ多くつくれるか、がポイントだと思います。
高橋:先ほど祐成さんがおっしゃったように、事業、デジタルなどの部門にこだわらず、適正な人材を見つけて育成することが重要でしょう。とにかくやってみないと分からないので、まずは実践してみて、うまくいかなければすぐにやり方を変えるというくらいのスピード感が求められていると思います。
祐成:先ほど、今後は業務を深く知っている人が活躍するという仮説を述べました。もしこれが正しいとすれば、2つのパターンがあると思います。1つは、業務知識を持つベテラン社員がAIの知識を身につけ武装するという方向性です。しかし業務知識は一朝一夕では身につきませんから、若手社員には難しいアプローチでしょう。そこで、まずはAI やデータサイエンスのスキルを身につけるというのがスタンダードなアプローチなのかなと思います。しかしこのアプローチは、(IT企業ではない)事業会社にとっては評価しにくい面もあります。ですから、そのような場合はIT企業などと組んで、AI に取り組む若手を評価できる環境を構築していくことも、地道なアプローチですが人材育成の面では重要だと考えています。
急速に進化する生成AIに、企業はどのように対応すべきなのか。また生成AI時代に、どのように人材を育成すべきなのか。さまざまな観点から知見を共有し議論を深めた、学びの多いイベントとなった。
「生成AIが現場に与えるインパクトと人材育成の在り方」セミナーレポート(前編)はこちら
期間限定で本セミナーのアーカイブ配信をご視聴いただけます。この機会にぜひご視聴ください。
※申込期間:2024年12月2日(月)~2025年2月28日(金)12:00
※視聴には事前登録が必要となります。
※視聴後アンケートに回答いただくと、一部の講演資料のPDFを提供いたします。
デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社 執行役員 人事領域の機能・組織・業務・人材の変革について、HRテクノロジー、デジタルHR、エンプロイーエクスペリエンス、BPR、SSC・BPO、チェンジマネジメント等の観点から支援している。グローバルヒューマンキャピタルトレンドサーベイに関する講演多数。グループ組織再編・M&Aにおける人事PMI等に豊富な経験を持つ。著書に「最強組織を作る人事変革の教科書(日本能率協会マネジメントセンター)」がある。 関連するサービス: ・人事機能変革(HR Transformation)(ナレッジ・サービス一覧はこちら) >> オンラインフォームよりお問い合わせ
有限責任監査法人トーマツ パートナー。物理学の研究員、コンサルティング会社を経て、2002 年から有限責任監査法人トーマツに勤務。 金融機関、商社やエネルギー会社を中心にデリバティブ・証券化商品の時価評価、定量的リスク分析、株式価値評価等の領域で、数理統計分析を用いた会計監査補助業務とコンサルティング業務に多数従事。 現在は金融、エネルギー、製造、小売、医薬、公共等の領域で、デロイト トーマツ グループが提供する監査およびコンサルティングサービスへのアナリティクス活用を推進すると共に、データ分析基礎技術開発を行う研究開発部門をリードしている。 東京工業大学大学院 イノベーションマネジメント研究科技術経営専攻 客員准教授