Posted: 10 Feb. 2022 5 min. read

科学における女性と女児の国際デーに考える「リケジョ」問題

シリーズ: Diversity, Equity & Inclusion

単語に比して一般化していない、「リケジョ」の存在

理系女子、略して「リケジョ」。

この単語がメディアで使われるようになったのは2010年頃。単語の出現から既に干支ひとまわりの年月が経った。では、「リケジョ」という言葉が広く知られた今、その肝心の理系女子が一般的になったかというと、そうではないのが実情だ。OECD(経済協力開発機構)による2021年の調査報告では、日本は自然科学や工学を専攻する女子学生の割合がOECD加盟国のうち比較可能な36ヶ国中最下位であり、例えば、高等教育機関で自然科学を専攻した学生の女性比率は、36ヶ国平均52%に対し、日本は27%と、倍近い開きが存在する。

自然科学・工学を専攻する女子学生の割合

女子は男子よりも理数系科目が苦手なのだろうか。当然そのようなことは無く、小中高の理数系科目の学力調査では、男女に大差はないという結果が出ている。ではなぜ、理数系に進む女子が男子に比べて圧倒的に少ないのだろうか。これにはいくつかの複合的な理由があるといわれているが、多くの研究で指摘されているのは、家庭や社会におけるジェンダーの在り方および、教員から受ける影響の大きさである。

 

周囲のオトナからの影響 ~「女の子なのにすごいね!」が意欲を削いでいく~

例えば、内閣府の委託調査でも、女子を養育する女性保護者の最終学歴が理数系だった場合、女性保護者が文系の場合と比べて、20%ポイントも多くの女子学生が理数系を選択するといった調査結果がある。また、全ての科目の教員が男性だった場合よりも、一人でも女性の教員がいた場合の方が、女子学生が理数系を進路として選択する割合が11%ポイント高いといった調査結果も存在する。

そして、保護者や教員といった立場を問わず、より広範な<オトナ>から影響がある事象として挙げられるのが、【好意的差別態度】と呼ばれるものだ。例えば、「女の子なのに理数系が得意なんて、すごいね!」といった言葉を耳にしたことは無いだろうか。これは悪気無い声掛けのつもりかもしれないが、「女の子なのに」がポジティブ表現だとしたら、そのネガティブ表現は「女の子のくせに」であり、どちらも言っていることは変わらない。つまり、そこには「女性は理数系が苦手(=できないのが当たり前)」というステレオタイプ的思考が根底に潜んでいるのだ。こういった発言は、自身をステレオタイプ的に知覚している者にとってはポジティブに働くこともあるが、そうではない場合はネガティブに作用することが多く、例えば、試験で良い点を取った場合に「女の子なのにすごいね」と褒められると、「すごいね」とだけ言われた時よりも学習意欲が低下するという研究結果も存在する。試験で良い点を取り本来高まるはずの意欲が、「女の子なのに」という発言によって抑えられてしまうことがあるのだ。

 

テクノロジー分野に女性が少ないことから生じる弊害

このように、様々な要因が絡んで小さなジェンダーバイアスが積み重なると、女子は理数系を進路として選びづらくなってしまう。しかし、当グループが取り組んでいるジェンダー施策、Panel Promiseに関するブログ記事でも言及しているとおり、「属性に偏りがある」という状況は物事に対する見落としが生まれやすく、大きなリスク要因となる。テクノロジー分野でも同様であり、例えば「自動車の衝突実験を行う際に使用するダミー人形は男性の体をモデルに製作していたため、女性や妊婦が事故に遭った場合の影響を十分に想定することができていなかった」という他、「システム開発段階で男性を基準として作成してしまったため、AIが女性をはじいてしまう(顔認証の精度が劣る、検索結果や翻訳結果で男性を基準に示してしまうなど)」といった問題も、世界中の大企業を含む数々の組織でたびたび指摘されている。科学技術の世界で女性の存在が抜け落ちることは、明確なリスクといえよう。

後続女性を育てるための、Women in Tech

デロイト トーマツ グループでは、これまでのライフスタイルやビジネスを変化させているテクノロジー・デジタル技術の活用推進に力を入れるとともに、当該分野を担う女性たちを応援しており、「Women in Tech」というイニシアティブを2021年から始動させた。

Women in Techは、学生からキャリア層まであらゆるステージにおいて、テクノロジーの世界活躍の幅を広げる女性たちを支援するために生まれたものであり、”当たり前”ではない発想を形にする取り組みを行っている。

特に女子学生向けの啓発活動には力を入れており、自由な発想で未来をビジョニングする未来ワークショップや、テクノロジー探求カリキュラムといったイベントを始め、社会課題の解決をテーマとした講義・セミナー、テクノロジー分野で活躍する女性リーダーを招いてのパネルディスカッション、テクノロジーを体験できるハンズオンセッション(チャットボット作成体験、感覚プログラミングなど)などを企画・開催し、デジタル・テクノロジーの世界に触れる機会を提供している。実際に参加した女子学生からは、最新のテクノロジーやデジタルに驚き感動する声の他、「テクノロジーは私が将来解決したい社会課題に関係していると実感し、テクノロジー系の進路に興味が湧いた」「ITと自分のやりたいことを掛け合わせて、唯一無二のことに挑戦してみたい」といった熱量の高い声が寄せられ、女子学生達の変化に大きな手ごたえを感じているところだ。そして、これらのイベントでは「“女の子なのに”、すごい!」という視点は皆無であり、誰もがひとりの個人としてTechを楽しみ、多様な未来を描ける未来へと繋げていくことができる。

 

さよなら、「リケジョ」! ~リケジョが死語となる、その日まで~

冒頭で挙げた「リケジョ」は、【有徴(ゆうちょう)】といわれる現象であり、時として差別や蔑称へ繋がるセンシティブなものである。有徴とは、初期想定や前提とは異なることを強調するために、あえて特徴を示すことであり、例としては女医や女流作家、ワーキングマザーなどが挙げられる。女性を表すことが多いが、まれに男性を表すこともあり、男性保育士やイクメンも有徴といえるだろう。

2月11日は、「科学における女性と女児の国際デー」だ。この国際デーは、女性と女児が科学技術の分野において果たす重要な役割を認識し評価する目的で2015年の国連総会にて制定されたものであり、女性や女児が科学分野に完全かつ平等にアクセスし、参加できる機会を推進するための日である。男性と同じくらいの比率で女性が科学分野で活躍できるようになった未来では、「リケジョ」という単語は消えていくだろう。デロイト トーマツ グループでは、これからの時代を創るために大きな威力を発揮していくであろうテクノロジー領域を志向する多くの女子や女性を支援し、誰もがのびのびと羽ばたいていける世界を目指して、これからもWomen in Techの取り組みを推進していく。

■本記事は、デロイト トーマツ グループにおけるWomen in Tech Japan プロジェクトメンバーによる協力のもと執筆。

デロイト トーマツ グループ Diversity & Inclusionチーム

激変する市場環境の中、自社と顧客の成長を牽引するための経営戦略の1つとして経営層と一体になりDiversity & Inclusionを推進すべく2017年に結成されたチーム。ジェンダー・国籍・カルチャー、LGBT等の個人の多様性や違いを強みとするための施策を幅広く立案・実行し、社内外に広く発信中。

「=」をモチーフとしたロゴは、デロイト グローバル共通のDiversity & Inclusionコンセプトである「ALL-IN」をイメージしたもの。

執筆者

Diversity, Equity & Inclusion チーム

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デロイト トーマツ グループ

「Diversity, Equity, & Inclusion(DEI)」を自社と顧客の成長を牽引し、社会変革へつなげていくための重要経営戦略の一つとして位置付けているデロイト トーマツ グループにおいて、ジェンダーやセクシャリティ、人種・民族、宗教や言語を含めた文化の違い、障がいなど、様々な「違い」を強みとするための施策を、経営層と一体となり幅広く立案・実行しているプロフェッショナルチーム。 関連するリンク デロイト トーマツ グループのDiversity, Equity & Inclusion