時代と共に進化し続ける。一人ひとりが活躍するチャレンジド ブックマークが追加されました
デロイト トーマツ グループには、それぞれのグループ法人で障がいのあるメンバーが働いています。
トーマツチャレンジド株式会社(以下、「トーマツチャレンジド」)は、障がい者雇用の促進を目的に、2006年7月、有限責任監査法人トーマツの100%出資の特例子会社として設立されました。昨年設立15周年を迎えたトーマツチャレンジド代表取締役である淺井明紀子に、16年目となるトーマツチャレンジドについて、また自身が考えるWell-beingについてインタビューしました。
―トーマツチャレンジドの代表取締役として、どのような取り組みをされているのでしょうか?
トーマツチャレンジドの代表取締役として、組織の運営を行っています。私は有限責任監査法人トーマツに入社以来、公認会計士として監査業務に携わってきましたが、2019年にAudit&AssuranceビジネスのDEI(Diversity, Equity and Inclusion)リーダーとなり、2020年からは、トーマツチャレンジド の代表取締役に就任、そして2021年よりAudit&AssuranceビジネスのWell-beingリーダーを兼務することとなりました。
これまで身近に障がいのある方との接点はなかったので、当初は、メンバーとどのように接すれば良いのか、やってはいけないことがあるのではないか等と、過度に緊張していましたが、メンバーと一緒に仕事をしていくなかで、徐々にメンバー一人ひとりへの関心が高まり、心理的なプレッシャーのようなものは自然と無くなっていきました。
私たちの身体は老いていくので、機能の低下や不全という意味で障がいは誰しも経験することです。「知ること」と「自分ごと化すること」が、すべてのDEI活動のポイントだと考えています。
トーマツチャレンジドは、設立時は10人~20人でスタートしました。最初はメールルームでの業務から始まり、障がいのあるメンバーの持つ能力の認知の広がりとともにパソコンのセットアップ業務、さらに、ペーパーレス化の流れを受け、郵便物のデジタル化の業務を行うようになりました。時代の流れとともに仕事の領域は拡大しています。“できない”と決めつけるのではなく、どうすればできるのか、工夫次第で可能性は広がると考えています。
―淺井さんご自身がWell-beingを感じるのはどういうときでしょうか
知らないことを学ぶことや、未知のもの事に出会った時に感じる“アハ体験”を得る瞬間が、私のWell-beingです。
最近は、オンラインのイベントやワークショップに参加できることも多くなり、産業カウンセラーの資格取得や、コーチング等の勉強をしています。勉強を通じて新しい仲間が増えることも楽しいですね。仕事をしている自分以外の自分に気づくことができる大切な時間です。
仕事一筋だと、仕事で躓いたときにとても落ち込んでしまいます。でも、仕事だけでなく、自分が好きと思えるものをたくさん持っていると、仕事で躓いたとしても、他の好きと思えるものが自分の支えになり、簡単には心が折れなくなります。結果として、好きと思えるものがあることでレジリエンスが高まり、仕事のパフォーマンスも上がっていると思います。とはいえ、好きだと思っていても自分に合わないこともあるのですけれどね。コーチングではうなずき方が変だと指摘され、落ち込みました(笑)
好きなことに取り組むことは大事ですが、一方で、自分で自分の枠を作らないようにも気を付けています。違和感のあることでもチャレンジして、自分がどんな反応をするのか楽しむことも大事だと思います。得意なことがある自分、できないことがある自分、まじめな自分、暗い自分、陽気な自分、色々な自分を受け容れることで、他人に対しても寛容になれると思うのです。
― トーマツチャレンジドのメンバーが、Well-beingな状態で働くことができるように、工夫している取り組みがあれば教えてください。
トーマツチャレンジドには、障がいの特性上、皆と同じやり方・画一的なやり方ではうまく仕事ができないメンバーもいます。
そんな時、私たちは、その人の行動を変えようとするのではなく、やり方や周辺環境を変えることで、その人の強みを活かして、「できる」ようにサポートします。例えば、個々人に合わせた詳細なマニュアルを作成したり、また、机の向きをほんの少し変えたりするだけで、本人が集中できるような環境を設定することもできます。私たちは、メンバーが困ったことがあった時には、みんなで「どうしたらできるようになるのか」を考えるミーティングを行います。その人が何に困っているのか、どのようにサポートできるのか、個別に考えて対策を打っています。
また、コミュニケーションも工夫しています。私たちのミーティングでは、難しい話が議題であっても、話しやすい雰囲気を作るようにしていて、必ずどこかに“笑い”があるんです。真剣だけれど、深刻ではない。何とかなる、何とかしていこう、と前向きに取り組んでいます。発言をする時間も設けているので、参加している人は、聞いているだけでは終わらず、ほとんど全員発言しています。
―そのような工夫は、トーマツチャレンジドだけでなく、他法人の職場でも活用できると良いですね。
そうなんです。「確かにそうだよね」、とトーマツチャレンジドのメンバーから気付きをいただくことも多くあります。トーマツチャレンジドでの工夫は、監査の現場でも取り入れることができると考えています。
一人ひとりが活躍できるようにサポートしたり、話しやすい雰囲気を作ったりすることで、個人のWell-beingが向上し、またチームパフォーマンスも向上すると思います。
その人に応じて工夫する観点は、クライアントへの向き合い方にも活かせると思います。監査の現場で、困っている人、苦境にあるクライアントにどのように手を差し伸べるのかと考える観点と似ていますね。
― 最後に、トーマツチャレンジドでの今後の抱負を教えてください。
トーマツチャレンジドでは、デロイト トーマツ グループの事務業務をメインで行ってきました。ただ、時代の流れとともに、これまでメインで行っていた業務がなくなっていく可能性もあると考えています。先を見据えて新規事業の拡大に取り組みたいと考えており、ぜひグループの皆さんにもご協力いただきたいと思っています。
例えば、“パソコン関連の業務はできないのではないか?”と制限をかけることなく、“こんなことってできる?”と投げかけてもらいたいです。先ほどお話した通り、工夫次第で取り組むことができる業務はたくさんあります。お互いのバリアを外して、障がいのあるメンバーが活躍できる領域をもっと増やし、共に働くという視点でこれからも挑戦、成長していきたいと考えています。そして、トーマツチャレンジドのことをさらに皆さんに知っていただけたらと思います!
トーマツチャレンジド株式会社は、障がい者の雇用促進を目的として設立された有限責任監査法人トーマツ100%出資の特例子会社。
2006年設立、知的・精神の障がいのある職員を中心に、現在は150名以上が所属。
トーマツチャレンジドでは、職員の様々な特性に応じたバリエーションに富んだ業務を受託し、親会社である有限責任監査法人トーマツやデロイト トーマツ グループとともに成長、挑戦できるインクルーシブな職場環境作りを目指します。
また、デロイト トーマツ グループではトーマツチャレンジドに限らず、各グループ法人で積極的に障がい者雇用を推進しています。その数はデロイト トーマツ グループ全体で270名超となっています。(雇用者数は2022年11月1日現在。本インタビューに登場する、トーマツチャレンジドに出向している者も含む)
事務系コーポレート領域業務の他、所属法人によっては、農園の運営、従業員を対象としたマッサージルームでの施術に従事しているメンバーもいたり、社内のボランティア活動にも積極的に参加しています。
そして今年、社内における障がい者インクルージョンの取り組みに加え、自治体や教育機関等における啓発や支援、The Valuable 500への加盟など、積極的な対外活動において総合的に評価され、障がい者インクルージョンに関するアワードDisability Matters Award の「Workplace部門」を受賞しました。今後も一人ひとりのメンバーが活躍できる環境作りに向けて、Well-beingも推進していきたいと思います。
インタビュアー:デロイト トーマツ グループ ファイナンシャルアドバイザリー 村川夏実