Posted: 29 Jul. 2024 7 min. read

受援者にとって真に必要なことを熟慮した復興支援活動

Just Do It‼地域イニシアチブ(JDI)の活動紹介 Vol.2

私たちは、デロイト トーマツ グループ横断の「プロボノチーム」 です。 

その活動の起点になっているのが、Just Do It‼オンライン会議です。(2024年7月末現在で68回開催)

コロナ禍ではじまったこの会議では、全国各地から経営者、NPO、学生の皆さんが登壇し、抱えている課題を共有いただきます。その解決策を探るべく、「何か力になれないか?」という想いを持った社内外の仲間たちが集まり、それぞれが持つ専門性やアイディア、ネットワークを掛け合わせ具体的なアクションを起こしています。

その会議をきっかけに、継続するテーマやチームが誕生し、地域軸を掛け合わせた活動を推進しています。(下図ご参照)

そこで今回は、「防災部会」の取り組みと「能登半島支援」とを掛け合わせた活動を紹介します。

Just Do It‼地域イニシアチブ(JDI)の活動紹介 Vol.1でも紹介しましたが、発災2週間後より現地に入り、以降可及的速やかに且つ持続的にできる活動を石川県七尾市の皆さまと毎週協議を重ね、現場の課題を一次情報で知り、何ができるかを地域と一緒に考える支援活動の一つとして、石川県七尾市にある矢田郷地区まちづくり協議会主催の「YATAGOUビレッジセカンド大学」(生活に根付いた地域課題の解決策を共創する場)の企画・運営サポートを開始しています。

 

5月28日開催 YATAGOUビレッジセカンド大学 第2回「グルーバルな視点で能登の復興を考える」に参加して

~デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 信澤康一~

登壇者は、左から金沢大学融合研究域経営学教授・博士の松島大輔先生、一般社団法人きたまえJAPAN代表の政浦義輝さん、そして金沢大学学生の西村さん・渡辺さん・岡本岳人さん。
●提言1:稼ぐBCPを実践したお互いプロジェクトに範をとれ!

冒頭に松島先生から「危機」という言葉について触れられました。通常は「Crisis」と考えがちですが、「危=Danger、機=Chance」で、ピンチであると共にチャンスであると。よって、今回の能登半島地震でも災害という危機面だけでなく、災害をきっかけに何かにチャレンジするチャンス(機)ととらえるべきと。

また、「お互いプロジェクト」に関しては、災害は誰にでも起こりうるため、起きた時に助けてもらった方が、次に自身が被災した時に助ける「お互い様」が良く見られますが、これをボランティア等だけでなく、販路先開拓等の経済支援を行うことによるBCPという考えがあります。実際、今回販路先として開拓したタイは、2011年3月の東日本大震災で支援して頂き、その後の2011年10月のタイでの大洪水の際、日本から恩返しの支援を行ったのがきっかけとなりました。

●提言2:能登復興の鍵は『新興アジア』との連携にあり!

被災すると、とかく守りに入って「まずは復旧、そして復興」という対策が取られることが多いですが、松島先生は「被災した今こそ」海外進出して経済復興するのが得策と論じ、且つ実際実行にも移しています。

筆者自身、東日本大震災で経済支援に携わって来ましたが、補助金・助成金漬けで自走できなくなり、結果競争力がなくなって復興できなくなった会社を多く見てきました。被災した事業者に一番必要なのは、事業を継続できる体力作りであり、そのためには能登の物産である寒ブリやのどぐろといった海産物等を、国内だけでなく海外にも向けた販路先開拓が有効というのは説得力があります。

きたまえJAPANは震災前から能登のキラーコンテンツの海外への販路先開拓を行って来ましたが、震災後の今こそ、きたまえJAPANのこれまでの活動が活きる場面と思われます。

●提言3:2X2インターンシップに参加せよ!

「2X2」とは、日本の会社&学生と海外の会社&学生のマッチングのことです。「1X1」や「2X1」は良くありますが、海外の学生も巻き込んでいる所に特徴があります。日本と海外の学生を巻き込むことにより、学生ならではの新鮮な発想や行動力が生かされるとともに、両国学生の学びにもなります。

きたまえJAPANはタイ・インド・ベトナムの3か国の会社と共に、各国の大学とリレーションを築いてきました。今回登壇された学生はそれぞれタイ・インド・ベトナムに数か月滞在して販路先開拓に携わるという貴重な経験をされました。実際、西村さんはタイで刺身を、渡辺さんはインドでカニカマ・お好み焼きを売って来ました。

●提言4:能登復興において海外販路確保こそ生命線!

2030年には世界消費の42%がアジアになるとの予測があります。きたまえJAPANは、販路先開拓をすべき地域として一番将来性のあるアジアのタイ・インド・ベトナムとのリレーションを築いてきました。特にタイはGNPの60%が日本と何かしら関係があり、経済的に緊密な関係にあるため、今後も良好な関係を維持できる見込みです。

東日本大震災では東北支援の一環としての東北の物産の購買支援が行われ、今回の震災でも同様の支援が行われていますが、復興期が終わるとそういう形での支援は縮小し、継続的な販路先とはなり得ません。ですので、能登の産業が今後も継続するためには、アジアが生命線と言えると思います。

●提言5:Anshinプロジェクトを通じグローバルな関係人口の拡大を目指せ!

Anshinプロジェクトというのは、金沢大学学生を中心に開発した「Anshinコイン」というアプリを使い、被災地への募金を行うプロジェクトです。震災前に開発した時は「unseen=未知の」という意味でしたが、震災後は「安心」という意味に変えて運用しています。

現在は国内のみで展開していますが、アプリをインストールすれば誰でも支援できるため、今後はアジアのリレーション先に展開予定で、この「地域通貨」アプリを使い、能登支援を通じて関係人口を拡大することが期待できます。

能登半島地震でのあるべき支援

例えば、皆さんは、風邪をひいた人に何と声をかけますか?多くの方は「無理しないで横になっていて下さい」などといった安静を促す言葉だと思います。ただ、最近、あえてプールで泳いだり走ったりした方が、風邪の治りが早いのに気付きました。頭痛になった時も然りです。じっとしていても免疫力は高まらないが、運動すると免疫力が高まるからだという結論に達しました。電車でお年寄りに席を譲ろうとしたところ、「大丈夫です」と言われて、「いえいえどうぞ」とお互い席を譲りあっている場面を何度か目にしましたが、元気そうなお年寄りに長生きして頂くには、あえて席を譲らないのが正解かも知れません。

同様に、震災で被災した会社に対しては、多くの日本人の感情としては「復旧するまで補助金や助成金を出すべき」だと思いますが、これは重症患者の様な会社に対しては然りですが、風邪やケガレベルの会社に対してはむしろ逆効果で、競争力を低下させ、結果的に会社の寿命を短くさせる結果となるのを、東北の震災復興支援活動を通して多数見てきました。

その最たる例が原発の補償金で、今までもらったことの無い大金が舞い込んできたため、通常であれば購入することができない高級車や、はたたま仏壇などに化け、本来補償すべき事業に回らないケースなどもありました。まれに補償金を断る企業がいて理由を聞くと「売上が減っても補償されると、従業員にどう頑張ればいいのか説明がつかないのでお断りした」とのことで、この会社は震災から見事立ち直りました。

今、能登支援で求められているのは風邪をひいた方に「早く治って欲しいので、免疫力が高まる様に運動して下さい」と言ってあげる勇気だと思います。

 

能登支援でお会いした、金沢大学の松島教授も同様の理念を持っていて、「震災から立ち上がるためには海外に能登のキラーコンテンツを売ることだ」と説いています。私の知る限り、東北の被災者で「今こそ海外に販路開拓するぞ!」と考えた人はいませんが、よくよく考えてみると、能登の事業者にとって一番のソリューションと思われます。初めて聞いた方は「震災で経営基盤が弱まっているのだから、海外よりまずは国内からじゃないの?」と思うかもしれませんが、松島教授の考えを聞くと納得です。

 

なお、JDIが主宰する防災部会(隔週開催)では、能登の皆さまやデロイト トーマツ グループ社内外の専門家と議論をしており、その軸足を「Can→How→Action Plan」から創造的支援にシフトし能登半島の復興支援活動をサポートしています。

ご興味のある方は下記までご連絡下さい。

執筆者

Just Do It‼地域イニシアチブ

代表 百瀬 旬(デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社)
事務局長 信澤 康一(デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社)

※ 執筆者の社名・肩書は執筆時のものです。

 

JDI活動に関するお問い合わせはこちらから:info_jdi@tohmatsu.co.jp

 

関連リンク

デロイト トーマツ グループのWell-being(ウェルビーイング)