Posted: 08 Sep. 2021 5 min. read

第2回 11条指針の解説(指針の解説)の予想~パブリックコメントの回答を基に~

連載記事:内部通報制度の有効性を高めるために~体制整備の指針と基準~

第1回では11条指針[1]案に対するパブリックコメント[2]の傾向を診ることで、内部通報制度の体制整備に対する社会の関心事を探ってみました。
第2回ではこのパブリックコメントに対する消費者庁参事官(公益通報・協働担当)室(以下「消費者庁所管部署」とする)からの回答を診ることで、今後公開される予定の「指針の解説」(11条指針案を策定した検討会の報告書[3]4ページ目に記載)の位置づけや分量を予測してみたいと思います。


ガイドラインに関するコメント

第1回[4]記事の図表2の連番8には「ガイドライン[5]」に関する11件のコメントが集計されています。ガイドラインは無くなるのか、ガイドラインは指針と指針の解説に吸収させるべきだ、いやガイドラインも併存させるべきだ、といった様々なコメントが見受けられます。これまで日本企業の多くがこのガイドラインを参照して内部通報制度を構築・運用してきていますので、一定数以上のコメントがあることにはうなずけます。
そしてガイドラインについては、11条指針案を策定した検討会の報告書[6]4ページ目の脚注7に、指針の解説への“統合”が想定される記載もあります。


消費者庁所管部署のパブリックコメント回答の分類

パブリックコメントに対する消費者庁所管部署の回答には「意見を採用する」、「すでに自明である」あるいは「参考にする」といったさまざまなものがあります。これらの回答を筆者が独自に分類したものが以下の6種類です。

A)     記載済

パブリックコメントの疑問あるいは指摘等は、改正公益通報者保護法[7]の条文あるいは11条指針案に、すでに回答に該当する記載が存在する事項と思われる。

B)     報告書参照可能

パブリックコメントの疑問あるいは指摘等には、検討会報告書の本文や脚注に記載された内容を参照しつつ解消あるいは対応することが可能と思われる。

C)     指針の解説に記載

パブリックコメントの疑問あるいは指摘等は、多くの組織に共通した一般的な疑問あるいは有用な意見と考えられるため、指針の解説にそのコメントに対応する文を記載する。

D)     指針に記載

パブリックコメントへの指摘は、指針案を修正して反映させるべき妥当な意見である。

E)     事業者個別判断

パブリックコメントの疑問あるいは指摘等は、法や指針によって一律にその回答あるいは対応方法を指し示すことができない(あるいは指し示すことが妥当ではない)もので、各事業者に対して自組織の状況に応じた適切な判断が求められる事項と思われる。

F)     単純な返答

パブリックコメントは礼辞や賛成意見の表明等であり、それに対して応答している。


消費者庁所管部署のパブリックコメント回答のパターン別集計

筆者は、パブリックコメントに対する消費者庁所管部署の回答は、前述の6種類の回答を組み合わせた13個のパターンで構成されていると考えました。そのパターン別のパブリックコメントの集計表が図表3です。


図表3 消費者庁所管部署のパブリックコメント回答パターン別集計

※画像をクリックすると拡大表示します

※ A,B,C,D,E,F列は、前述の回答の分類に該当する記載が含まれている場合を「〇」とし、前述の回答の分類に該当する記載が含まれていない場合を「-」としている

※「コメント数」は、前述の回答の分類に該当する記載が含まれているコメント数を示している

最も多数の回答パターン1は、前述の回答の種類C「指針の解説に記載」単独の回答であり、95回答となります。そして、種類Cは196コメント中の141回答に使用されています。多くのパブリックコメントの疑問や指摘に応える形で、指針の解説にはそれに対応する詳細な説明や具体例が記載されていくものと思われます。
また、同様に種類B「報告書参照可能」は196コメント中の62回答に使用されています。
つまり、指針の解説には141パブリックコメントに応える内容の詳説とともに、62パブリックコメントに対応する分の、検討会報告書中の記載の転記が反映されるものと考えておくべきだと思います。
例えるならば、今後、内部通報通報制度の体制整備を学ばなければならない生徒にとっては、すでに校則となる改正公益通報者保護法および教科書となる11条指針が配布され、そこに、かなり分厚くなりそうな参考書である指針の解説が追加されることが確定しています。その上でさらにガイドラインにも目を通さなければならない、とあっては少々ランドセルが重すぎるように感じます。また、指針の解説とガイドラインの位置づけがわかりづらくなって、双方の記載にちょっとした矛盾を感じた場合に、どちらをよりどころとして体制整備を行えばよいのかといった混乱の要因になってしまうかもしれません。
そこで筆者が消費者庁所管部署に質問したところ、あくまでも“予定”として以下の回答を得ました。

2021年4月28日のパブリックコメント意見募集要項に以下を記載済みで方針は変わっていない

  •  参考となる考え方や、想定される具体的取組事項等を示す
  • ガイドラインと報告書の記載を盛り込む
  • ガイドラインは指針の解説に盛り込むことで統合される

ということであれば、ランドセルが不必要に重たくなる心配はあまりなさそうです。さらに、筆者の個人的意見としては、従業員300名超の組織規模の事業者に課せられる“義務”と、事業者が参考にすべき”具体例”とをわかりやすく表記するなどして、事業者の混乱をできるかぎり防ぐような工夫を施した作りにしてもらいたいと考えています。

第3回では、指針に沿った体制整備を行っていく上での注意点について議論を進めていきます。

[1] 公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針:https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_research_cms210_20210819_02.pdf

[2] https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_research_cms210_20210819_05.pdf

[3] 公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_001/assets/review_meeting_001_210421_0001.pdf

[4] 第1回 11条指針の公表~パブリックコメントに見る社会の関心事~
https://www2.deloitte.com/jp/ja/blog/risk-management/2021/publication-of-guidelines.html

[5] 公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン :https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/pdf/overview_190628_0004.pdf

[6] 公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_001/assets/review_meeting_001_210421_0001.pdf

[7] 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号):https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_200615_0003.pdf
 

関連するリンク

デロイト トーマツ リスクサービスでは、グローバルホットライン(内部通報中継サービス)をご提供しています。

従業員、家族、取引先などからの内部通報を適切にお客様企業の担当部門へ中継し、お客様の回答を通報者へ伝達します。

連載記事:内部通報制度の有効性を高めるために~体制整備の指針と基準~

本稿に関するお問い合わせ

本連載記事に関するお問合せは、以下のお問合せよりご連絡ください。

お問い合わせ

執筆者

亀井 将博/Masahiro Kamei

亀井 将博/Masahiro Kamei

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 シニアマネジャー

内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員 金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援 その他、リスクマネジメント体制構築支援、J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 外部セミナー、インハウスセミナー講師を始め内部通法制度に関する寄稿記事の執筆多数。主な著書 「統制環境読本」(翔泳社、共著)、「攻めと守りのブランド経営戦略」(税務経理協会、共著)等

和田 皇輝/Koki Wada

和田 皇輝/Koki Wada

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 マネジャー

J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 2010年より内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 金融機関、自動車関連、建設業、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業、ITなど業種業態規模を問わず企業の対応を支援 現在インハウスセミナー講師を始め内部通法制度構築助言や通報対応業務、ソーシャルメディア関連助言業務を担当 主な執筆 電気評論(寄稿)、「炎上リスク」に備えるWebモニタリングのすすめ方(共著)、マンガ 銀行員のためのSNS利用ルール(共著)