開催レポート:企業の危機管理戦略シンポジウム ブックマークが追加されました
昨今、世間の耳目を集める企業不祥事が相次ぐ状況を受け、危機管理の要である「広報戦略」「専門家起用」「ガバナンス」に焦点を当て、どうすれば危機を乗り越えることができるのか等を企業経営者と専門家が議論するシンポジウムを開催しました。
2023年11月20日(月)、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(DTFA)が、企業の危機管理戦略をテーマにしたシンポジウム「企業の危機管理戦略シンポジウム~危機管理における広報戦略・専門家起用・ガバナンス~」を、Deloitte Tohmatsu Innovation Parkで開催いたしました。
2023年は、世間の耳目を集める企業不祥事や記者会見が多かったこともあってか、会場はほぼ満席となり、有事の広報戦略や専門家起用に関する関心の高さが窺われました。
開会のあいさつにあたり、DTFA フォレンジック & クライシスマネジメント 統括 の中島祐輔より、不正・不祥事は2010年代に増加の一途をたどり、2020年代にコロナ禍の影響により減少したものの、2023年は増加の傾向にあるデータが示されました。中島が「どの企業でも、いつ不正が発生してもおかしくない」と指摘すると、会場の空気が引き締まりました。
<登壇者>
Session1では、危機対応の局面において、特に注目を集める記者会見をテーマにディスカッションをしました。2023年は、メディアで連日にわたって取り上げられるような記者会見が相次いだこともあり、参加者はメモを取るなど、真剣に聞き入りました。
デロイト トーマツが2年に1度実施している調査結果(企業の不正リスク調査白書)では、不正・不祥事後の記者会見に関して、7割以上の企業が「事実確認が未了であっても可能な限り速やかに会見を開催すべき」と回答しています。この点について、三木は「会見に臨むにあたっては、事実の認定が必要となる。会見では認定した事実に基づいて説明することが重要だ」と強調。そのうえで、失敗例として記憶されるような記者会見では、事実なのか、伝聞なのか、想定に基づく推測なのかといった整理ができていないことが多いと指摘しました。
対外的な説明をプレスリリースで済ませるか、記者会見を開いた方がいいかの判断に当たっては、浅野から「『ことの重大性』『迅速性』『複雑性』の3つの観点から、検討すべきだ」と説明がありました。
また、記者会見に臨むにあたっては、清水はこれまでの支援経験に基づき、「平時からトレーニングを積んでおくことで、失敗のリスクを減らすことができる」と紹介。内藤は、「何のための会見かを明確にすること」をポイントに挙げ、「謝罪のためであればトップが会見の場に立つことが求められ、説明のためであればその事象に精通している担当が必要になる」と述べました。
Session2では、実際に不正や不祥事が起こった際に、企業はどのような対応が必要になるのか、という観点から、専門家起用の是非が議論されました。
危機対応の局面では、大きく「初動対応」「実行」「再発防止」の3つのフェーズに区分され、0からのスタートであり、かつ、後続フェーズの着地点も想定することが求められる「初動対応」が一番難しいという説明が清水からありました。
この点について、三木は、「ことの重大性の判断が難しい」と指摘。当事者でありながら、客観的な視点でその不正・不祥事の重大性を判断することが求められるため、「このタイミングで、専門家の目を入れて判断材料のひとつとすることも考えられる」としました。
また、浅野は、企業経営の実体験に照らしながら、「重大な案件の場合、時間が非常に限られており、マンパワーも足りない。現業を継続しながら対応するとなると、外部の力を頼らざるを得ない」と振り返りました。
Session3は、危機対応をリードする対策本部の人選が重要になるという話題からスタートしました。内藤は、対策本部長は、全ての情報がエスカレーションされる立場としたうえで、「会社としての方向性を決める、いわばドライバーズシートというポジションにあたる」と説明しました。
清水からは、不正事案への対応に当たっては、当事者性の確認が重要であり、当事者性がないことを、外に説明できないと、調査自体がやり直しになったり、対策本部長が交代になったりしたケースがあると紹介がありました。
浅野は、トップや経営層の不正・不祥事への関与が疑われるケースでは、「社外取締役の役割が重要になる」と述べました。そういったケースでのレポートラインは通常のケースとは異なり、社長や業務執行取締役ではなく、社外取締役となることを指摘。そのため、「平時から、そういったケースでのレポートライン等をどうすべきか、という議論をしておくことが求められる」としました。
三木も、「不正・不祥事が起これば、混乱して、どういう体制をとるべきか、という適切な判断が難しい。冷静な平時にこそ議論しておくべきだ」と述べました。
シンポジウム終了後、参加者からは「危機対応に当たっての経営目線の話を聞くことができてよかった」、「対策本部長の人選が重要であること、レポートラインの整理等を平時からしておく必要があることが分かった」といった感想がありました。
予期せぬインシデントを避けることは困難ですが、危機を認識した後に被害拡大を防ぐための手立てはいくつも存在します。
危機発生時は、迅速かつ適切な対応が重要です。インシデント発生時には、まずは事前の契約不要の「危機管理センター」(電話番号:0120-123-281、メールアドレス:dt_emergency@tohmatsu.co.jp)にお問合せください。あらゆる類型の危機対応の経験豊富な専門家が助言します。インシデント発生前の事例研修・ガイドライン作成なども受け付けています。
フォレンジック & クライシスマネジメントサービス統括 会計不正、品質偽装、贈収賄など様々な不正・不祥事事案対応に調査委員や責任者として関与。ステークホルダー対応等の危機管理や再発防止策導入など危機に直面した企業を信頼回復まで一貫して支援している。会計監査を経験後、2002年にDTFAに参画。M&A、企業再生、組織再編など広範な領域でプロジェクトマネジメントの経験を有する。2018年より現職。2021年よりファイナンシャルアドバイザリー領域全体のレピュテーション・クオリティ・リスクマネジメント統…
大手出版社勤務後、大手メーカー経営企画にて、全社戦略やブランドマネジメントを担当。2016年より、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーに入社。新規事業開発ならびにデータマネジメントサービスに従事したのち、現在は有事を中心にクライシスマネジメント(初動対応、危機管理対応)業務の提供を行っている。 関連サービス フォレンジック&クライシスマネジメント >> オンラインフォームよりお問い合わせ