ニュースリリース

デロイト調査:日本は所属組織の90%が、LGBT+インクルージョンに関する取り組みを行っていない

自身の所属組織が「組織内外でLGBT+インクルージョンの取り組みを行っている」との回答は5%。当事者は、自身の立場や相手との関係性にかかわらず、職場でのカミングアウトが難しい状況

2023年7月31日

デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一)は、デロイトが2023年1月~2月に実施した世界調査「LGBT+ Inclusion @ Work: A Global Outlook」の日本版を発表します。

本調査は、世界13か国でさまざまな業界の組織に属する5,474人のLGBT+ (Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderなど) 当事者を対象に、職場で当事者が日々直面する現実や、組織における取り組みがどのように機能しているかなどを把握し、組織が抱える課題を示すことを目的として行ったものです。なお、本グローバル調査は2022年から実施していますが、日本版の公開は今回が初めてであり、日本版レポートでは、調査対象のうち日本で働くLGBT+当事者425人の回答から示された傾向やグローバル平均との比較をまとめています。

本調査結果からは、グローバルと比較して日本は、組織によるLGBT+インクルージョンに関する取り組みが不十分であること、職場においてセクシャリティをオープンにしづらいことなどが明らかになりました。

■日本の組織における取り組みは、当事者にとって十分なレベルには程遠い

自身が所属している組織のLGBT+インクルージョンへの取り組み状況について、「組織内・組織外ともに取り組みを行っている」と回答した割合は、日本は5%(グローバル35%)でした。また、「組織内・組織外ともに取り組みを行っていない」と回答した割合は、グローバル43%に比べ日本は90%と、50ポイント近い差が生じています。

日本はLGBT+インクルージョンに関する取り組みがある組織で働いている当事者が10人に1人にとどまり、所属組織が取り組みを全く行っていないと当事者が認識している割合が、グローバルに比べて高いことが示されました。

所属組織のLGBT+インクルージョンに関する取り組み状況
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■グローバルに比べ、職場でのカミングアウトのしづらさが目立つ日本

日本の回答者が、職場において「誰にでもカミングアウトができる」と回答した割合は20%であり、グローバル(43%)の半分以下のポイント数でした。一方で、日本の回答者のうち27%が、職場で「誰にもカミングアウトはできない」と回答しており、グローバル(14%)の約2倍のポイント数でした。

職場におけるカミングアウトのしやすさ
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職場でのカミングアウトについては、日本・グローバルともに、上位の職層であるほどLGBT+当事者として自身のセクシャリティを公表しやすいという傾向が見られます。しかし、どの職層であっても、日本の当事者はグローバルに比べて「カミングアウトをしている」と回答した割合が低く、リーダー層であっても、カミングアウトをしている割合はグローバルと比較して非常に低くなっています(グローバル:51%、日本:29%)。

職場でのカミングアウトについて(職層別)
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また、本調査では、カミングアウトに最も抵抗を感じないのは親しい同僚、次いで直属の上司というグローバル傾向が示されましたが、この傾向は日本も同様です。しかしながら、グローバルで最も「抵抗がなくオープンである」と回答された(59%)間柄の「親しい同僚」であっても、日本では「抵抗がなくオープンである」と答えた割合は26%にとどまり、「抵抗がありオープンにはしていない」と回答した人が20%(グローバル:9%)でした。組織内における立場や、相手との関係性にかかわらず、日本の職場においてカミングアウトはしづらい状況であることがうかがえます。

職場でセクシャリティをオープンにしているグループのグローバルと日本の比較
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「組織内のアライシップ*1は、カミングアウトへの一助となっているか」という問いに対しても、グローバルは「カミングアウトの一助となっている」と回答した割合が61%だったのに比べ、日本では23%にとどまりました。

組織におけるアライシップは当事者にとって有意義なサポートになり得ることが2022年調査において示されたところ、「日本の組織におけるアライシップは、未だ当事者を支えるレベルに至れていない」という現状が示唆されています。

■認識されていない当事者が多く組織内にいることを大前提に、LGBT+インクルージョン施策を推進すべきである

本調査では、LGBT+インクルージョンに関する取り組みがある組織で働いている日本の当事者が10人に1人程度であることが明らかになりました。LGBT+インクルージョン施策の実施については、組織規模による差異が非常に大きく、従業員数が少ない組織ほど未実施であるという傾向がありますが、平均すると施策のある企業は10.9%という厚生労働省の2019年調査*2と比べ進展があったとはいえない結果です。組織は「当事者が実際に求めている施策であるか」という点を重要視して、LGBT+インクルージョンの取り組みを強化していく必要があります。

セクシャリティを誰に打ち明け、どのように生きるかは個人の意思や選択によるものであり、カミングアウトは「しなければいけないもの」ではありません。日本は現時点で同性婚が法制化されていないことや、その他多様な観点においてもLGBT+インクルーシブな社会環境とは未だ言い難いことなどから、カミングアウトをする意義が無いと感じている当事者も多くいます。しかしながら、「カミングアウトをしている当事者がいない=組織内にLGBT+当事者がいない」ということでは決して無く、組織はカミングアウトしない層が組織内に多く存在していることを前提とした制度設計や、当事者が差別や偏見といった壁で苦しむことがないインクルーシブな風土の醸成を行うことが必要です。

詳細につきましては下記リンク先よりレポートをご確認ください。

レポート本文はこちら、グローバル全体のレポートはこちら
(調査対象国:オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、インド、日本、メキシコ、オランダ、ポーランド、南アフリカ、英国、米国)


*1:LGBT+など性的マイノリティについて理解し、応援・支援をすること
*2:厚生労働省「令和元年度 厚生労働省委託事業 職場におけるダイバーシティ推進事業 企業アンケート調査」(2021年7月30日)

<LGBT+インクルーシブな組織を目指して>

LGBT+インクルージョンの第一歩としては当事者の声を尊重すること、また、当事者・非当事者問わずセクシャリティに関する悩みや制度利用に関する相談などが気軽にできる環境が重要と考えています。デロイト トーマツ グループでは、LGBT+専門相談窓口を設置し、適切な知識・経験を擁する相談対応担当者以外は相談内容を知ることができないよう、相談者のプライバシー保護に配慮をした体制の中で個別の相談対応を行っております。

また、インクルーシブな風土醸成の一環として、CEO以下経営層・リーダーが率先して、LGBT+に関する全社啓発やコミュニケーションを実施しているほか、社内では、オリジナルアライグッズの制作・社内販売などを通じて、社内のアライシップ可視化に努めています。そして、社会変革に向けた取り組みとしては、レインボープライドを中心とした各種LGBT+インクルージョンイベント・キャンペーンへの参加・協賛や、LGBT+教育を推進する非営利団体へのプロボノ・寄付キャンペーン、学生を対象とした課外授業などを通じ、次世代に向けたLGBT+理解啓発なども行っています。

*グループにおけるLGBT+インクルージョン/アライシップ活動の推進についての詳細はこちらから、社内の当事者・アライメンバーから寄せられた声を掲載したニュースレターはこちらからご覧いただけます。
*デロイト トーマツ グループでは、LGBT+に関する全社でのセミナーやイベントなども開催しており、一部の開催ウェビナーに関するレポートや、各種活動報告などもこちらのページにてブログ形式で紹介しています。

デロイト トーマツ グループのDEIに関する取り組み

デロイト トーマツ グループでは、Diversity, Equity & Inclusion(DEI)を重要経営戦略の一つとして位置付け、激変する市場環境を柔軟に乗り切り、クライアントに価値を提供し続けるための重要なカギであると捉えています。また、私たちは、【ちがいに「気づく」、つよみを「築く」 ~一人ひとりが活躍する会社から、一人ひとりが活躍する社会を~】というDEIビジョンを掲げながら、社会全体のインクルージョン推進強化に向けても様々な取り組みを行っています。

デロイト トーマツ グループのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

<報道機関の方からの問い合わせ先>

デロイト トーマツ グループ 広報担当 菊池、岡根谷
Tel: 03-6213-3210  Email: press-release@tohmatsu.co.jp

デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ グループ合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約30都市に約1万7千名の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

Deloitte(デロイト)とは、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)、そのグローバルネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびそれらの関係法人(総称して“デロイトネットワーク”)のひとつまたは複数を指します。DTTL(または“Deloitte Global”)ならびに各メンバーファームおよび関係法人はそれぞれ法的に独立した別個の組織体であり、第三者に関して相互に義務を課しまたは拘束させることはありません。DTTLおよびDTTLの各メンバーファームならびに関係法人は、自らの作為および不作為についてのみ責任を負い、互いに他のファームまたは関係法人の作為および不作為について責任を負うものではありません。DTTLはクライアントへのサービス提供を行いません。詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。

デロイト アジア パシフィック リミテッドはDTTLのメンバーファームであり、保証有限責任会社です。デロイト アジア パシフィック リミテッドのメンバーおよびそれらの関係法人は、それぞれ法的に独立した別個の組織体であり、アジア パシフィックにおける100を超える都市(オークランド、バンコク、北京、ベンガルール、ハノイ、香港、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、メルボルン、ムンバイ、ニューデリー、大阪、ソウル、上海、シンガポール、シドニー、台北、東京を含む)にてサービスを提供しています。

Deloitte(デロイト)は、監査・保証業務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリー、税務、法務などに関連する最先端のサービスを、Fortune Global 500®の約9割の企業や多数のプライベート(非公開)企業を含むクライアントに提供しています。デロイトは、資本市場に対する社会的な信頼を高め、クライアントの変革と繁栄を促し、より豊かな経済、公正な社会、持続可能な世界の実現に向けて自ら率先して取り組むことを通じて、計測可能で継続性のある成果をもたらすプロフェッショナルの集団です。デロイトは、創設以来175年余りの歴史を有し、150を超える国・地域にわたって活動を展開しています。 “Making an impact that matters”をパーパス(存在理由)として標榜するデロイトの約415,000名の人材の活動の詳細については、(www.deloitte.com)をご覧ください。