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地域に根差した監査人の熱意とグループの総合力で、地域未来創造に貢献

シリーズ 監査に進化を 第5回

地域活性化の重要性が叫ばれる中、地域におけるデジタル人材の育成やスタートアップ支援、中小企業支援などへのニーズが高まっている。有限責任監査法人トーマツは従来のやり方にとらわれず、時代を先取りして変革を続けながら、どのように様々な地域課題の解決や地域活性化を進める取り組みにおいて、貢献できる領域を広げているのか。未来を見据え監査の変革と高付加価値化にむけた取り組み進めるAudit Innovation部長 外賀友明が、有限責任監査法人トーマツ A&A事業企画のマネージングディレクター/DTI(Deloitte Tohmatsu Institute)フェロー 高田真紀と、有限責任監査法人トーマツ 監査・保証事業本部 地域未来創造室/静岡事務所 谷本創に聞いた。

地域経済の活性化のため、人口流出や少子高齢化による労働力不足といった課題への対策として、デジタル人材の育成やスタートアップ支援などへのニーズが高まっている。そこで有限責任監査法人トーマツでは、日本の未来を創造することをコンセプトに地域課題の解決にフォーカスした地域未来創造室を2021年に創設した。これまで全国各地で独自に進めてきた地域支援のノウハウや知見を集約して、地域支援をさらに加速させようという取り組みだ。

 

外賀:まずはお二人の現在の仕事内容について教えてください。

高田:私はデロイト トーマツ グループ横断で進める政策提言や、デジタル人材育成と地域の産業創出を両輪で進めていく地域活性化プロジェクトのPMO(Project Management Office)を担当しています。デロイト トーマツ グループの5ビジネス(監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務・法務)を横断して、地域への価値提供をリードする役割です。

デロイト トーマツ グループは、日本全国の約30の都市に拠点を持ち、それぞれが地域と深く関係性を築いています。これほど広く地域に根を下ろして幅広いビジネスを手がけていることは、私たちの大きな強みだと思います。この強みを生かすために、拠点間で知見を共有したり専門人材の交流を促したりすることで地域活性化につなげていくのが、私の仕事だと思っています。

またグループ内には、日本の経済社会の持続的な発展に向けて「ミクロ」と「マクロ」をつないだ政策提言を軸に独自のシンクタンク機能を担うDTI(Deloitte Tohmatsu Institute)という組織があります。そこで地元との連携に基づく地域未来創造室のメンバーからの声なども踏まえた政策提言を行う働きかけも行っています。

有限責任監査法人トーマツ A&A事業企画のマネージングディレクター/DTI(Deloitte Tohmatsu Institute)フェロー 高田真紀

 

谷本:私は地元企業などの会計監査を行いながら、地域未来創造室に所属し地方創生のアドバイザリー業務にあたっています。具体的には、スタートアップの企業価値を高める成長支援、新規ビジネスの創出支援も手がけており、製品開発、事業計画立案、資金調達に関する助言や、世の中にない新規サービスをデジタルを使って創出するといった支援、助成金に関するモニタリングの支援などを行っております。

高田:有限責任監査法人トーマツに設置した地域未来創造室では、首都圏や地域のスタートアップをはじめ、産学官金といった多様なプレーヤーをつなぎ、地域活性化に貢献することがミッションです。地域の中小企業も、大企業と同じようにカーボンニュートラルやウェルビーイング社会の実現、人口減、物価高上昇など、さまざまな社会課題に直面しています。このような課題の解決策のひとつとしては、デジタルトランスフォーメーションが欠かせません。ところが、日本企業の9割以上を占める中小企業ではデジタルトランスフォーメーションが遅れており、これを推進するデジタル人材の育成が急務となっています。そこでデロイト トーマツ グループでは、組織横断で「デジタル人材の育成」と「地域の産業創出」を軸に地域活性化に向けたさまざまな支援を行っています。 

有限責任監査法人トーマツ 監査・保証事業本部 地域未来創造室/静岡事務所 公認会計士 谷本創

長年の信頼関係とグループの総合力が強み

外賀:監査法人であるトーマツが地域支援を手がける意義について教えてください。

高田:監査法人の一員として独立性を遵守し、日頃から公正不偏を心がけ、また長年にわたる地元とのリレーションがあるからこそ培われた信頼を基礎に、クライアントの目線に立った地域支援ができているのではないかなと思います。そういった信頼関係をベースに地域の企業に専門家として支援ができるのは大きな価値だと思います。

谷本:監査の知見を活かした助成金に関するモニタリングの支援などは、まさに監査の経験値が活かせていると感じており、監査法人であるトーマツだからこそできる地域支援だと思います。その他、地域未来創造室で実施している事業計画の策定支援やビジネスモデルのブラッシュアップなどもまさに監査の経験が活かせる分野だと思います。

高田:地域での信頼を基軸に長年地域とともに歩んできた監査法人があるのはもちろん、グループ全体としては中央省庁への提案力も有しています。さらに、デロイトはグローバルなグループとして海外の情報収集も得意ですし、グループ内には海外進出する日系企業を支援する「日系企業サービスグループ(JSG)」もあるため、海外市場への進出といった面でもサポートできます。このように「地域」と「中央」さらには「グローバル」という軸で、それぞれの声を双方向で届けるカタリストとなることができるのが、私たちの最大の強みです。

谷本:グループ全体の力で、きめ細かなサポートを提供できるという強みを実感する機会は多いですね。グループ内に専門性の高い多様な人材がそろっており、その知見にすぐにアクセスできるのは大きいです。

例えば、地域未来創造室ではベンチャー支援を手がけるデロイト トーマツ ベンチャーサポートとも連携しており、支援をする中で支援先から資金調達やIPOなどの相談があった際には専門家の意見を聞くこともあります。

監査とアドバイザリー業務を両立するメリットとは

 

外賀:会計士がアドバイザリー業務に関与することは、本人のキャリアにどのような影響があると思いますか。

谷本:私は約3割の時間、地域活性化に関するアドバイザリー業務に従事しており、多くの場合カウンターパートにいらっしゃるのはスタートアップの経営者の方々です。上場企業や大企業の監査業務とは異なった視点での課題解決が必要で、大きな刺激を得ています。また、経営者の視座の高さやビジネスを俯瞰して考える姿勢に触れることは、監査業務にも役立つと思っています。

高田:スタートアップの伴走支援や中小企業の経営支援など、会社の内側で経営者の立場で業務に携わる経験は、間違いなく大企業の監査においても良い影響があると思います。それこそ、サプライチェーンの取引先の見え方も変わってくるのではないでしょうか。また地域で現場の生の声を聞くことで、社会課題の変化に気付いたり、リスクへの感度も高まったりするでしょう。監査と非監査の両方を経験することは、会計士としての今後の活躍の場を大きく広げてくれるはずです。ところで、谷本さんは静岡事務所を拠点としていますが、全国の地方創生プロジェクトにも関わっていますよね。

谷本:はい。静岡に軸足を置いていますが、福島や神奈川、横浜などのプロジェクトも担当しています。特にコロナ禍以降はリモート環境が整ったことで、場所の制約は大幅に減りました。

リモート勤務の普及によって、グループ内での人材やスキルの横展開も自由度が高まっています。例えば福島の案件に、デジタル人材に強い専門家が他の地区から参加することも珍しくなくなっており、より充実した支援ができるようになっています。

高田:働く場所を選ばずに働ける時代になったことは、地域にとって追い風です。例えば地域にいながら、デジタルを活用して首都圏あるいはグローバルの仕事をするということも可能ですし、逆に地域活性化の支援を全国どこにいても実現できる、まさに全国に活躍の場があるということです。私たちが目指す「デジタル × 地域活性化」を実現するにはデジタル人材の雇用創出が欠かせませんが、場所の制約がなくなれば可能性は大きく広がります。こういった取り組みを先頭に立ってリードしていくのも、地域未来創造室の役割ですね。

監査法人ならではの強みを生かして、地域を元気に


外賀:谷本さんの今後の目標を教えてください。

谷本:私は地域活性化にずっと関わり、地域を元気にしていきたいと考えています。というのも、私はずっと野球をやっており高校時代を秋田で過ごしたのですが、高校の友人たちが地元の大学を卒業しても地域に就職先がなく、県外に出ざるを得ない状況をたくさん見てきました。思い入れの深い秋田から若く優秀な人材が流出し、地域がどんどん衰退していく。そんな現状を目の当たりにして、もっと地域を元気にしたい、盛り上げたいという気持ちをずっと抱えていたのです。

幸い、地域支援に力を入れる静岡事務所を志望して勤務できましたので、このチャンスを生かしてどんどん地域に貢献していきたいです。これまで浜松市の事業を4年継続して担当させていただいてきましたが、業務を通じて得られた知見やつながりが、「地域ビジネスに貢献している」という実感とやりがいにつながっています。今後は、地域との信頼関係を築きながら、多くの案件で成果を出し、全国の自治体が「ぜひトーマツに支援をしてもらいたい」というくらいにしていきたいと思っています。

外賀:高田さんは、これからの地域未来創造室について、どのような展望をお持ちですか。

高田:監査法人として地域に寄り添うトーマツだからこそできる、信頼に裏打ちされた専門家集団として、地域と一緒により良い価値を創出できるよう地域支援をさらに加速させていきたいですね。

そのためにも、次世代を担っていく若い世代への教育が重要だと考えています。現在の日本の学校教育では、例えば経営とは何か、ファイナンスとは何か、事業計画のつくり方などを教わる機会がありません。これが、若い世代にとって起業のハードルになっているのではないかと思います。こういった課題を解決するために、産官学金といった地域の関係各所をつなぎ、育成の支援や挑戦できる環境を作り出していきたいと考えています。

また、早い段階から地域企業や経営者、あるいは次世代に対し教育を含め、支援していくことで事業計画の策定や資金調達といったハードルを乗り越えやすくし、地域活性化、さらには日本の国力アップに寄与できるよう、体制の構築と価値提供できる領域を広げていくことができるのではないかと思います。財務に関する高いリテラシーを持つ会計士が多く所属している監査法人の地域未来創造室だからこそ実現できる強み、これを活かして地域社会に貢献していきたいと思います。

 

外賀:社会的な課題の解決に向けて、従来のやり方に捉われずに相手の目線に立ち、付加価値提供に向けて挑戦する姿勢は、未来を見据え監査の変革と高付加価値の提供に向けて取り組んでいるAudit Innovationと通じるものがありますね。相対する地域や企業などの問題意識を課題に落とし込み、蓄積してきた知見と個々人の発想力や課題解決能力、そしてグループにおける連携力を掛け合わせることで価値提供する場を広げていくという、非常に興味深いお話を伺うことができました。

本日は、ありがとうございました。

 

※所属や業務内容は掲載時(2023年6月)のものです。

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