ナレッジ

企業不動産(CRE)に関する課題とその解決について

Financial Advisory Topics 第40回

企業不動産(CRE)とはCorporate Real Estateを略したものです。企業不動産(以下CREと記載)は、企業全体の事業戦略や事業再編および企業の統合合併等に伴い必ず紐づいてくるテーマであり、企業にとって重要な経営資源です。しかし、その取り扱いには専門知識が必要であり、有効な施策を実施できていないケースが散見されます。

Ⅰ. CREの概要

CREとはCorporate Real Estateを略したものであり、企業が事業を行うために保有・賃借をしている土地や建物を指す。事業に使う事務所や店舗、工場のほか、福利厚生施設もCREにあたり、企業にとって重要な経営資源である。しかし、その取り扱いには専門知識が必要であり、有効な施策を実施できていないケースが散見される。

日本の不動産規模は、国土交通省の推計によれば約2,519兆円、そのうちCREは約430兆円を占めている。

CREを有効に活用することは企業のみならず地域・国内の経済にとって大きな意味をもっている。

 

Ⅱ. CREの課題

企業は時代の変化に合わせて絶えず進化・成長を求められるが、CREは固定資産であり柔軟な運用・施策実施が難しく、かつその取り扱いには専門知識が必要であることから、結果的に施策が疎かになっているケースが散見される。

CREにおける典型的課題は以下の通りである。

 

Ⅲ. 課題が発生する原因

CREにおける課題が発生する理由として以下が挙げられる。

A)場当たり的な対応

例えば、景気低迷時に利益確保のための売却を急ぐあまり「底値売り」となるケースや、景気拡大時に事業所拡大のために慌てて不動産を購入・賃借してしまい「高値買い」になってしまい減損リスクを抱え込んでしまうケースなど、場当たり的な対応が原因となっているケースが散見される。

B)投資抑制によるリスク増大

不動産会社の場合はポートフォリオの組み替え等によりCRE全体の若返りが進むことが多いが、一般の事業会社の場合は景気拡大時に取得した不動産がポートフォリオの多くを占めているケースが見られる。
そのような企業の場合、所有する不動産が一気に老朽化してしまい、結果的に膨大なコスト負担や資産効率の悪化が発生しているケースが見られる。

C)専門的知識を有した人材の不足

一般の事業会社の場合、CREに関する専門的知識を有した人材が不足しており、CREに対する有効な施策が推進できていないケースが見られる。これは経営の効率化に伴いCREに関する専門知識を有した人材を抱える余裕がなくなったこと等に起因している。

以上の理由により発生するCREの課題は近年顕在化、深刻化するケースが増加している。

Ⅳ. CREの課題解決に向けた検討フロー

現在デロイト トーマツでは、CREに関する課題の把握から対策の立案、実行支援に関するアドバイザリーサービスを提供しているが、CREの課題解決には分野横断的な視点が必要であり、経営戦略とCRE戦略を同時に検討可能な当社の強みが活かせる分野と考えている。

CRE戦略に関する検討・実行フローとしては、現状分析を行ったうえで戦略を作成し、保有不動産に対する具体的な各施策を実行するという流れとなる。CRE戦略に関する検討・実行と並行して、企業全体の経営改革および組織体制の見直しも行う必要がある。

 

Ⅴ. まとめ

前述のCREの課題解決に向けた取り組みとして、CREの現状分析から戦略策定、実行の事例について、複数の店舗を保有する事業者の店舗戦略策定の一環として、商圏や収益、リスクの観点で出店を検討する地域の検討および絞り込みに関する分析や、本社機能の効率化(移転・再編)を目指す事業者に対して、課題と施策を整理し、施策の推進をアドバイスした事例もある。

 

CREは企業全体の事業戦略や事業再編および企業の統合合併等、企業において重要な経営資源であり、その取り扱いには専門知識が必要である。一方で、CRE戦略を立案・実行するための専門性が企業内だけでは不足しているケースも散見されるため、外部のプロフェッショナルを活用することも選択肢の一つとなる。

執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
不動産アドバイザリー
シニアマネジャー 眞中 正司

(2025.1.23)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

シリーズ記事一覧

 

関連サービス

記事、サービスに関するお問合せ

>> 問い合わせはこちら(オンラインフォーム)から

※ 担当者よりメールにて順次回答致しますので、お待ち頂けますようお願い申し上げます。

お役に立ちましたか?