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2022年診療報酬改定速報

2022年診療報酬改定における答申直後の主要なトピックス

2022年2月9日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会において、 2022年診療報酬改定が答申されました。全体改定率は▲0.94%のマイナス改定、 本体改定率は+0.43%のプラス改定でした。本体改定率はプラスを確保したものの、 重症度・医療・看護必要度や地域包括ケア病棟入院料の在宅医療等の実績要件の見直し等、 多くの病院に対応が求められる改定内容になりました。

2022年診療報酬改定の概要

<基本的視点>
• 2022年診療報酬改定は以下4項目の基本的視点で構成されています。

① 新型コロナウィルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築

② 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進

③ 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

④ 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

• 従来の改定では基本的視点は4項目、その中の1項目を重点課題としています。2020年の改定では「働き方改革」が重点課題に指定されていました。
2022年の改定では、「働き方改革」に加えて、「新型コロナウィルス感染対策と地域包括ケアシステムの推進」の2項目を重点課題に指定しています。

 

2020年と2022年における診療報酬改定の基本的視点の比較

出所:第504回中央社会保険医療協議会総会「令和4年度診療報酬基本方針について」(2021年12月24日)より作成

<改定率>

• 全体の改定率はマイナス0.94%、診療報酬本体の改定率はプラス0.43%でした。2016年以降の改定率は4回連続で、全体がマイナス改定、診療報酬本体がプラス改定であり、薬価を大幅に下げることで、本体のプラスを確保する構図が続いています。

• 今回の改定においても、診療報酬本体はプラス改定を確保したものの、医科本体、歯科本体、調剤本体、いずれにおいても、2020年におけるプラス改定率の半分程度であり、コロナ禍が続く医療機関の経営には厳しい改定であると言えます。

 

2022年の診療報酬改定率

 

出所:第508回中央社会保険医療協議会総会「令和4年度診療報酬改定の改定率等について」(2021年12月24日)より作成

急性期医療

<重症度、医療・看護必要度>

• 一般病棟における評価項目(「点滴ライン同時3本以上の管理」、「心電図モニターの管理」、「輸血や血液製剤の管理」)が見直されます。中医協で提示されたシミュレーションによると、急性期一般入院料1~6を届出している医療機関の1~2割は基準を満たせなくなる可能性があります。

• 許可病床数200床以上の医療機関で急性期一般入院料1を算定している病棟は、重症度、医療・看護必要度Ⅱの使用が要件化されます。

 

重症度、医療・看護必要度の評価項目及び施設基準の見直し

出所:第515回中央社会保険医療協議会総会「個別改定項目(その3)について」(2022年2月2日)より作成

<急性期一般入院料>

• 重症度、医療・看護必要度の評価項目見直しに伴って、急性期一般入院料6は廃止されます(現行の急性期一般入院料7が入院料6に変更)。

 

回復期医療

<地域包括ケア病棟入院料>

•   在宅復帰率:地域包括ケア病棟入院料1・2は70%以上から72.5%以上に変更されます。一方、地域包括ケア病棟入院料3・4においても、70%以上が求められます(満たせない場合は、所定点数の90%に減額)。

•   自院の一般病棟からの転棟割合:地域包括ケア病棟入院料2・4における施設基準の対象が、許可病床400床以上から200床以上に拡大されます(満たせない場合は、所定点数の90%から85%に減額)。

•   地域包括ケアに関する実績部分:地域包括ケア病棟入院料1・3の要件見直し(自宅等から入棟した患者割合が15%以上から20%以上、自宅等からの緊急患者の受入れが3月で6人以上から9人以上)に加えて、地域包括ケア病棟入院料2・4においても、実績部分が要件化(①自宅等から入棟した患者割合、②自宅等からの緊急患者の受入れ、③在宅医療等の実績から1つ以上)されます。

•   許可病床数100床以上で地域包括ケア病棟入院料1・2を届出している医療機関において、入退院支援加算1に係る届出を行っていない場合は、所定点数の90%に減額されます。

•   一般病床において地域包括ケア病棟入院料を算定する場合は、第二次救急医療機関又は救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院であることが要件化されます。200床未満の保険医療機関については、当該保険医療機関に救急外来を有していること又は24時間の救急医療提供を行っていることで認められます。

 

<回復期リハビリテーション病棟入院料>

•   回復期リハビリテーション病棟入院料5は廃止されます。

•   重症者の割合:回復期リハビリテーション病棟入院料1・2は3割以上から4割以上、回復期リハビリテーション病棟入院料3・4は2割以上から3割以上に変更されます。

•   回復期リハビリテーション病棟入院料1・3は「公益財団法人日本医療機能評価機構等による第三者の評価を受けていることが望ましい」が追加されます。

•  「回復期リハビリテーションを要する状態」に「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が追加されます。

 

慢性期医療

<療養病棟入院料>

•   療養病棟入院料2の経過措置は2年間延長されることになりましたが、減算割合が85%から75%に変更されます。また、リハビリテーションの提供において、FIMを測定しなければ、2単位までしか出来高算定できなくなります。

•   療養病棟における中心静脈栄養を実施している入院患者に対して、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制を構築しなければ、医療区分3から医療区分2の点数を算定することになります。

 

外来/オンライン診療

<外来>

• 「紹介受診重点医療機関」は、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担うことが求められ、一般病床200床以上の医療機関は、従来の「地域医療支援病院」に準ずる要件が課せられます。

•  新設されたリフィル処方箋は、薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用(上限3回)が可能になります。

 

<オンライン診療>

•   オンライン診療料が初診から正式に認められるようになりました。「オンライン診療の適切な実施に関する指針」、「オンライン診療の初診に適さない症状(日本医学会連合作成)」に基づく運用が求められます。

 

医療従事者の働き方改革

<医師の働き方改革>

•  手術前日の当直回数、2日以上連続当直の回数に制限が設けられます。当直回数は診療科全体ではなく、医師1人あたりでの規制に変更されます。

•  医師事務作業補助体制加算は一律に増点、医師事務作業補助者の経験年数による評価に変更されます。

•  地域医療体制確保加算において、「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン」に沿った計画の作成が求められます。

 

<夜間の看護配置に係る評価の見直し/看護補助者の更なる活用>

•  夜間の看護配置に係る診療報酬は一律に増点、夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等の要件が見直されます。

•  これまでは、看護補助者を配置するだけの加算でしたが、看護補助者の活用に係る十分な体制を整備する「看護補助体制充実加算」が新設されました。

 

<ICT利活用の推進>

• 入退院支援加算等の医療連携を伴う指導料、及び、在宅患者訪問看護・指導料の算定要件から「対面で行うことが原則」の記載が削除されて、ビデオ通話機器の使用が一般的に認められるようになりました。

 

2022年診療報酬改定を踏まえた病院経営の方向性

•  2025年の地域医療構想実現に向けて、まずは各医療機関における「将来のあり方」(入院、外来/オンラン診療、在宅、介護など)を明確にすることが求められています。

•  2022年診療報酬改定を踏まえて、各医療機関における「将来のあり方(=経営ビジョン)」に基づいて、相応しい入院料、期待される役割に必要な加算・指導料等の積極的な算定を目指すべきです。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/2

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