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建築費高騰の中、病院建替えの実現に向けて

計画初期(基本構想~計画)における建築費抑制のポイント

近年の建築費高騰の中、病院建替えを実現するため、計画の初期段階における建築費抑制のポイントを説明します。

1. 建築費高騰の状況

病院の建築費は過去十年でほぼ倍。2022年度は減少したが、サンプルに偏りがあった

独立行政法人福祉医療機構(以下、WAM)が公表する病院の建築費は上昇を続け、過去十年間で倍程度に上昇しています。直近では、2022年度が409千円/平米で、2021年と比較して減少していますが、WAMによると「2021年度のサンプル中にICUやHCU等の高度急性期機能を有する病院が含まれていたことが影響していると推察される」としています。

データソース:独立行政法人福祉医療機構「2022年度 福祉・医療施設の建設費について」(令和5年6月28日)
 

建築に係る一般的な指標は過去数年間で急激に上昇している

建築業界全般の建築費を示す指標である、建設工事費デフレーター(国土交通省)は、2020年度から2022年度にかけて約11%上昇しています。更に、建設資材物価指数(一般財団法人建設物価調査会)は、2020年から2023年にかけて約27%上昇しています。

データソース:国土交通省「建設工事費デフレーター(2015年基準)」(令和5年10月31日)

データソース:一般財団法人建設物価調査会「建設資材物価指数(2015年基準)」(令和5年12月1日)

 

これらの背景にはウクライナ情勢を受けた世界的な物価高騰が考えられます。更に我が国においては2024年から建築業界や運送業界の時間外労働規制も控えており、今後も楽観視はできない状況です。

2. 建築費高騰の病院建替えにおけるリスクと基本的な対策

建築費の高騰がこれまでにないスピードで進んでいるため、基本構想~施工までの全ての段階で、事業計画(資金、償還に係る計画)と、実際の建築費との乖離が発生する可能性があり、特に注意すべき病院建替えにおけるリスクを整理します。

発注工事の不調不落

建築費の高騰から不調や不落になるケースが今後も増える可能性があります。事業者選定のやり直しだけでなく、予算の組み直し等から工期の遅延が発生します。

追加費用請求

既に契約済み工事において物価上昇等により追加費用を求められる可能性があります。交渉次第の面もありますが、予算確保ができない場合は計画がストップする可能性もあります。

これらのリスクに対して、予備費の確保が基本的な対策となります。事業計画の策定において工事費を高めに設定するとともに、建築費の変動を注視し、頻繁に事業計画を更新することが重要です。しかし、予備費を捻出するのは容易ではなく、建築費の抑制が、建築費高騰の最中では重要性を増しています。

3. 抜本的な建築費の抑制

統合再編も視野に入れた検討

建築費高騰の中では、抜本的に多額の建築費を抑制する必要が出てくるケースもあります。このような場合は、単独での建替えだけではなく、統合再編や、病院複合化(2023年12月号メールマガジン)も視野に入れて検討します。今後、全国的に増加が見込まれますが、依然として複数の病院が統合再編を行うのは難易度が高い計画となります。

病院単独で実施する場合の検討

先ずは、ダウンサイジングによる施設規模の縮小や医業費用のスリム化も検討の遡上にあがるでしょう。また、全面新築だけではなく改修等も併用した、柔軟な計画策定が求められます。下図は全面新築以外の一般的な選択肢のメリット・デメリットです。

 

4. まとめ

建築費高騰が急速に進んでいる状況では、施工発注の不調不落や追加費用請求、そもそも事業計画が成り立たない等、クリティカルなリスクが増大します。予備費を含む予算確保が難しい場合は、計画初期段階において十分に建築費抑制に取り組むことが求められます。デロイト トーマツ グループでは、病院単独での建替えだけでなく、病院統合再編に関する実績も有しています。また、コンストラクションマネジメントを主業務とするグループ会社(DTPRS:デロイト トーマツ PRS)も有しており、様々な視点から、各病院個別の状況に合わせた病院整備の実現に貢献します。

執筆

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア

柚木 大介|ディレクター
岩野 遼太|シニアコンサルタント

E-mail:dthc_surveyinfo@tohmatsu.co.jp

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/1

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